就職活動中の大学生たちが繰り広げる関係を、SNSなどの要素を絡めて描き、第148回直木三十五賞を受賞した朝井リョウの傑作『何者』。2016年10月には、佐藤健主演で映画化もされた同作が、11月25日より舞台で上演される。
ジャニーズJr.内のユニット・Love-tuneの阿部顕嵐(あらん)が主演を務める同作は、キャストを実際に大学生に近い同年代でそろえ、新たな表現を見せるという。就職活動がひとつのフックともなっている同作は、マイナビニュースとしても気になる存在。今回は、演出を務める丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)に話を聞いた。
現代的な切り口に新たな挑戦
――今回は朝井リョウさんの小説の舞台化ですが、原作についての印象はいかがでしたか?
ビシバシと、物語と感情と人格が伝わってくる、すごく現代的な作品で面白かったですね。就活やSNSという部分を切り取ることで、生きるスタンスを表現できるんだ、と思って。映画版も観に行ったら満席で、若者から共感を呼んでいる作品だなと実感しましたね。
――そういう「現代的な切り口」を舞台上でどう表していくのでしょうか。
ふだんの舞台で映像を使ったことなかったんですが、今回は新しいことにもチャレンジしなきゃいけないと強く思いました。Twitterという現代的な感覚を、いかに舞台装置に落とし込むかという点が大きくて、これは映像を使わない手はないな、と。その上で映像だけに頼らず、様々な演出でお客さんと感情を共有できるように、原作を舞台に落とし込んでいきたいと考えています。
――今回は出ている方も、もしかしたら観に来る方も作中の人物と同年代くらいなのかなと思いましたが、どうアプローチされるんですか?
キャストに最初に伝えたのは「僕は演出家だけど、一方的な先生みたいなことはできないし、わからないことはキャストに聞くよ」ということでした。「君だったらどういう感情になるの?」とキャストに聞いて、一緒に作っていく感覚ですね。今の22歳の感覚なら、僕より顕嵐くんの方が絶対に知っているだろうし。
――キャストから出てきたことで、はっとさせられたことなどはありましたか?
例えば拓人の立ち位置についての議論や、キャラクターがどういうスタンスでいるのか、周りで起こっている出来事をどう見ているかといったことは、キャストの言葉で、はっとさせられることが多いです。特に大きかったことで言うと、舞台上では今回出てこない、烏丸銀次という役をどうするかは、話し合いを進める上で、最初に考えていたプランとは変わりました。
各キャストの印象は
――今回出演される6名についてお話を伺えればと思います。二宮拓人役として主演を務める、阿部顕嵐さんについての印象はいかがですか?
顕嵐くん、実は最初は心配はしていたんです。拓人の物語が一本の筋となっているので、顕嵐くんがどういう人かによって舞台が大きく変わるなと思っていて。でも、僕がイメージしていた表現ができるし、今回最後にやろうとしている、拓人の苦悩を身体で表現するということのアプローチも、できそうだと思う。だからすごく舞台『何者』の可能性が広がりました。顕嵐くんは、可能性の男だなと思っています。
――阿部さんの存在が作品の可能性を広げているんですね。
舞台の王道である、笑って泣いて共感して、何か新しいものを持って帰ってもらうということ、お客さんが劇場を出たときに、入る前と変わった気持ちを渡すということ。それが、顕嵐くんを通してできる気がしています。顕嵐くんは僕が行こうとしているところも理解してくれているし、顕嵐くんの行きたいところも僕は理解していて、お互いに 明確に行先が見えている感じです。
――続いて小早川理香役の美山加恋さん、今回は意識高い系女子ということで。
お芝居の基礎ができているし、求心力がある女優さんだなと思います。あとは加恋ちゃんの新しいものを見せたいですよね。せっかく演出をさせてもらって、この舞台に出ているのであれば、なにかしら今までの加恋ちゃんにないものが、お客さんの中で作られるような部分を見せてあげたい。壊れる加恋ちゃんを見せたいなと思っています。