母乳育児をしている人も、ミルク育児をしている人も、フォローアップミルクを飲ませるかどうか悩むケースは多いと思います。栄養面を考えると、フォローアップミルクは子どもにとって必要なのでしょうか。また、どのような効果が期待できるのでしょうか。管理栄養士の宇野薫さんに聞きました。
母乳とミルクの違い
Q.そもそも母乳とミルクでは、栄養面でどのような違いがありますか?
母乳はお母さんのとる食事によってその成分が変わるため、含まれる栄養分がそれぞれ違います。ミルクはそういった事情を把握して作られているため、確実に良質な栄養がとれるといえます。
一方で、「初乳」に含まれる免疫力の高い成分と同様の栄養をミルクでとることは難しいかもしれません。
Q.初乳にはどのような栄養が含まれているのでしょうか?
産後約10日間に分泌される「初乳」で特に多く含まれている成分は、「分泌型免疫グロブリンA」と「ラクトフェリン」です。これらは赤ちゃんの免疫力を高める働きがあり、「ラクトフェリン」は鉄の吸収も良くしてくれます。
ただ生後1カ月が経つとこれらの成分が減少し、脂質と糖質が増えていきます。栄養分が減るというよりも、母乳の成分が変化していくというイメージです。
フォローアップミルクを使う意味
Q. 母乳とミルクの違いは分かりました。その中で、フォローアップミルクはどのような役割を持っていますか?
フォローアップミルクは、離乳食などでとりきれない栄養を補うために作られたものです。
0歳の赤ちゃんは上手に食事をとることが難しいので、離乳食からだけでは栄養をとりづらいケースがあります。また、鉄分を多く含むレバーや肉類は、舌触りや味を好まない赤ちゃんも多いです。そのため、フォローアップミルクには赤ちゃんに不足しがちな鉄分やビタミンD、カルシウムなどが多く含まれています。
Q.具体的にはどのように活用したらいいですか?
離乳食の味付けにフォローアップミルクを使うのも一つの方法ですし、離乳食の進みが遅い子には飲み物として飲ませてあげるのもいいですね。とり方は違っても、摂取できる栄養は変わらないので、子どもが好む方法を試してみてください。
Q. 離乳食が十分に進まなかった場合、母乳だけでは不十分なのでしょうか?
先ほどお伝えしたように、母乳はお母さんのとる食事によってその成分が変わるため、含まれる栄養分がそれぞれに違います。ですから一概に回答することは難しいです。ただ、母乳に不足しがちな栄養素というのはいくつか挙げることができます。
まず一つ挙げられるのは、ビタミンKです。母乳に含まれるビタミンKの量には個人差があり、含まれる量が少ない人もいます。また、骨の成長に必要なビタミンDは、最近の女性の食事や生活習慣の変化に伴い、減少しているという報告があります。
さらに鉄分については、母乳に移行しづらいことが分かっています。赤ちゃんはお母さんのおなかの中で鉄分を蓄えてうまれてきますが、生後6カ月からはその鉄分がほとんどなくなってしまうと言われていますので、注意が必要なことがあるかもしれません。
そういった点で、フォローアップミルクを足すことが有効なケースもあります。
Q. 自信をもって母乳育児やミルク育児をするために、アドバイスをお願いします
産後はお母さんの体にとっても大事な時期です。母乳育児をする中で栄養をとることに無理を感じたり、ミルク育児で不安があったりするときなどに、フォローアップミルクを選択肢の一つにするのは良いと思います。また子どもが成長してくると、ミルクから牛乳に切り替える時期が来るかと思います。飲料としての牛乳は"1歳以降"に与えるようにしてください。
母乳もミルクもケースバイケース、お母さんと赤ちゃんのご都合で使い分けましょう。 何が一番必要か、それは赤ちゃんの成長に必要な栄養が届いているかどうかということです。成長を見守る上で、栄養のことも考えてみてもらえたらと思います。
管理栄養士 宇野薫
看護師の母、糖尿病の祖父の影響で食事の重要性を痛感。予防医療に貢献したいと管理栄養士を志す。女子栄養大学卒業後、病院、高齢者施設での経験をもとに、疾病予防、アンチエイジングなど、なりたい自分になるための栄養指導に従事している。現在、「子どもの食と栄養」についての講義や、妊婦・女性を対象にした栄養教育に関する研究をする傍ら、聖マリアンナ医科大学東横病院で栄養カウンセリングを担当しているほか、一般社団法人Luvtelliのメンバーとしても活躍。予防医療の中でも、特に"母子健康"に貢献することで、元気な赤ちゃんを1人でも増やせるよう取り組んでいる。2児の母。