スマートスピーカーの本命とも言える「Amazon Echo」がついに日本に上陸した。Amazon Echoという主役が登場したことで、日本でもスマートスピーカー市場が盛り上がりそうな気配があるが、一方で、普及する上で見逃されている「落とし穴」も存在する。
アマゾンはEcho発売に合わせるかたちで、4000万曲以上の音楽を聴ける「Music unlimited」をEchoユーザー向けに月額380円で提供すると発表。こうしたアマゾンが従来から得意としている「コンテンツの安さ」という武器で勝負を挑むが、Echoにはもう一つ「スキル」という売りがある。スマホでいえばアプリのような存在で、Echoに新しい機能・サービスを追加できる。
日本上陸に合わせて、アマゾンでは250以上のスキルを用意。ニュースサイトやradiko、占い、銀行など、幅広いラインナップとなっている。
音声コントロールの課題は「呼び出し」
一方、日本市場におけるスマートスピーカーの販売で1カ月ほど先行したグーグルは、アマゾン・Echoの上陸を相当、意識していたようで、アマゾンが発表会を開いた翌日、スキルと同様にコンテンツ提供会社などがGoogle アシススタントに機能を追加できる「Action on Google」の説明会を開催した。
直接的な比較を嫌がったのか、Action on Googleで提供されているコンテンツの数は公表されなかった。グーグルではAction on Googleに加えて、自然な日本語で発話できる点などをアピールしていた。
この「自然な日本語を話す」というのは、スマートスピーカーにとって生命線ともいえる重要なポイントだ。
実際、アマゾンも日本語の会話には、相当な時間をかけて開発してきたという。日本語には、同じ言葉でも違った意味を持ったり、イントネーションが微妙に違ったりするものが多々ある。ユーザーの指令を正しく聞き取り、最適なイントネーションで発話するのには、かなりの技術力が必要となってくる。
スキルの多さが注目されているAmazon Echoだが、これまでアメリカ版を海外で試用してきた経験からすると、スマートスピーカーならではの課題が見えてくる。Amazon Echoの場合、スキルはスマホのアプリ上から追加していくのだが、しばらくすると、そもそもスキルを追加したこと自体を忘れてしまいがちなのだ。
Amazon Echoを最初に試したタイミングでは、スキルをインストールしてどんな答えが返ってくるのかを楽しむものの、数日も経てばスキルを入れたことすら忘れてしまう。仮に覚えていたとしても、「どんな言葉で話しかければ、スキルが呼び出せるか」ということすら思い出せなかったりする。
また、スキルが思った以上に使い勝手が悪く、頼りにならないことがわかると、1回呼び出しただけで使わなくなったりもする。つまり、日々の生活で必要不可欠なスキルでないと、継続して使われない傾向があるのだ。実際、アマゾンもその「忘れ去られてしまうスキル」については課題としてとらえているようで、ユーザーに対して週に1回、新しいスキルや、どんな言葉をかければ良いかをメールで送りつけ、なんとかスキルを継続的に使ってもらおうとしている。
スマートフォンも、最初のころはアプリをたくさん入れて楽しんだものだが、いつしかアイコンが画面上に並んでいても、使わなくなっていくアプリが増えていった。アップルやグーグルはアプリストアに並ぶアプリの多さを競ったものだが、ユーザーはもはや、新しいアプリを入れようとしない。生活に必要不可欠なアプリだけを厳選して使うようになったのではないか。
特にスキルは、目で確認する機会がAmazon Alexaの設定アプリ上しかない。そのため思い出すきっかけが少なく、すぐに使われなくなるものが増えていきそうだ。