何らかの理由で離職したとき、次の仕事が決まるまでの生活の助けになるのが雇用保険の基本手当、いわゆる失業給付です。給付を受けられる人の中でも、病気・ケガや妊娠・出産などによってすぐに働けない人は受給開始日を延長して、働ける状態になってから受け取ることができます。

今までは期間延長を、離職日の翌日の30日後から1カ月の間に申請しなければなりませんでした。しかし入院などをしていてその時期を逃してしまうと、失業給付がもらえないことがありました。

平成29年4月1日から申請可能な期間が変更され、申請できる期間が長くなったのでより申請しやすくなったのをご存知でしょうか? 今回は受給期間延長の申請期限がどのように変わったのか、また期間延長を申請する際に注意すべき点についてご紹介します。

失業給付の受給期間延長とは?

失業給付は離職日以前の2年間に雇用保険の被保険者期間が通算して12カ月以上であり、就職する意思があるにもかかわらず失業している場合に受け取ることができます。失業給付の受給期間(有効期限)は原則として離職日の翌日から1年以内で、その間に一定の日数分の手当が支給されます。

しかし、妊娠・出産や疾病・負傷等の理由により引き続き30日以上働くことができない場合は、身体的な理由で再就職することが難しいとみなされ、「失業」の状態とは認められないので失業給付を受け取ることができません。その場合は、ハローワークに受給期間延長の申請をすることにより、働ける状態になるまで受給を保留しておくことができます。

あくまで受給開始日を先に延ばすというもので、受給日数が増えるわけではありません。これにより原則の受給期間である1年に働けない期間を最長3年まで加算することができ、延長できる期間は最長で離職日の翌日から4年以内までとなっています。この期間中に働ける状態になり受給期間の延長を解除すると、失業給付の受給を開始することができます。

失業給付の受給期間の延長ができる人

これまでの申請期限は?

平成29年3月31日までは、離職日の翌日から30日を過ぎてから1カ月以内に申請しなければ延長することができませんでした。受給期間を延長するには住所地を管轄するハローワークに、退職時に勤務先で発行してもらえる離職票などの必要書類を提出することによって申請することができます。

病気による離職の場合は医師の診断書、海外転勤になった配偶者に同行するために離職した場合はパスポートなどを併せて提出することもあります。しかし申請したくても、例えば妊娠期間中で急に具合が悪くなって入院などでハローワークに行くことができず、申請時期を逃してしまって失業給付がもらえないということもありました。

代理人による申請や郵送で申請することも可能ですが、委任状が必要だったり郵送のお金がかかったりと少し手間がかかります。この期間を逃すと期間延長が認められなかったので、失業給付全く受給できずにもらい損ねてしまったというケースもありました。

これからは延長期間(妊婦なら4年)内であればOKに

平成29年4月1日から受給期間延長の申請期限が変更され、離職日翌日の30日後から延長された受給期間最後の日までは申請可能になりました。これにより入院や海外に行くことになり、すぐに申請しに行くことができない人でも申請しやすくなります。

妊娠中に離職した人なら最長で4年まで延長できるので、子供が保育園に入る頃に就職しようと思ったときに失業手当を受け取りながら職探しができるのです。また平成29年4月1日より前に申請を行い、申請期限が過ぎていたために延長が認められなかった人も、再度申請することにより延長できる可能性があります。ご自身の住所地を管轄するハローワークに是非相談してみてください。

しかし、失業給付には所定給付日数という受給可能な日数が勤務年数などによりあらかじめ決まっています。申請期間内であっても申請が遅い場合は、受給期間延長を行っても失業給付の所定給付日数のすべてを受給できずに打ち切りとなってしまうケースがあるので注意が必要です。

例えば図のように失業手当を受け取ることができなかった期間が6カ月分あったとしても、受給期間満了日の3カ月前に期間延長の申請を行うと、残っている3カ月の間に所定給付日数のすべてを受給できない可能性があります。

申請可能な期間の例

期間に余裕があるからといって後回しにせず、早めに申請手続きを行い、確実に給付金を受け取れるようにしましょう。

株式会社回遊舎


"金融"を専門とする編集・制作プロダクション。お金に関する記事を企画・取材から執筆、制作まで一手に引き受ける。マネー誌以外にも、育児雑誌や女性誌健康関連記事などのライフスタイル分野も幅広く手掛ける。近著に「貯められない人のための手取り『10分の1』貯金術」「J-REIT金メダル投資術」、「NISA120%活用術」、「めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った世界で一番わかりやすいニッポンの論点10」、「子育てで破産しないためのお金の本」など。