インターネットイニシアティブ(IIJ)は7日、MVNOに関する事業説明会を開催した。同社が目指す「フルMVNO」とは、どんなサービスなのだろうか。IIJ MVNO事業部長の矢吹重雄氏が詳細を説明した。
フルMVNOとは?
フルMVNOを知ることは、これまでのMVNOサービス(本稿ではライトMVNOと呼ぶ)の限界を知ることでもある。例えばライトMVNOでは、SIMカードは大手キャリアからの貸与品であり、MVNO側が一切加工できなかった。料金についても、大手キャリアの料金体系の中で提供せざるを得なかった。SIMを開通させるタイミングにも制約があった。サービスを提供できる地域は大手キャリアのネットワーク内に限られるため、海外での利用時は、海外専用SIMカードに入れ替える必要があった。
これがフルMVNOならば、様々な形状のSIMカードを開発して提供できるため、IoT時代に主流となる機器組み込み型のeSIMも製造可能となる。また、自由な料金プランを設定できるため、例えば大手キャリアのように1年目と2年目で料金に差をつけるようなことも。好きなタイミングでSIMの開通が行えるため、無駄なコストが発生しない。ネットワークの選択肢が拡大することにより、海外渡航時にもシームレスに現地の通信事業者のサービスに接続できる。
IIJは昨夏(2016年)、フルMVNO事業に本格的に取り組むことを表明した。その進捗状況だが、矢吹氏によれば順調とのこと。「直近では11月に入る直前にNTTドコモさんとの間で大きな試験が終了した。概ね当初の計画通り。2017年度末(2018年3月)には、第1弾としてまずは法人と訪日外国人に向けたサービスを展開する」(矢吹氏)。
フルMVNOの実現には壁も
質疑応答には、矢吹氏と同社MVNO事業部 MVNOセールス・プロモーション部の佐々木太志氏が対応した。現時点で企業から組み込み型eSIMの引き合いはあるのか、という質問に矢吹氏は「問い合わせが増えている。機器にeSIMを組み込む際、課金などのシステムを管理しなければならない。そこで、この製品をIIJで取り扱ってくれないか、といった要望が来ている。ただ我々は、ECや物販に強い会社ではないので、今後も身の丈に合ったサービスを展開していきたい」とした。
フルMVNOに対して積極的なMVNO事業者が少ない理由について聞かれると、矢吹氏は「まずコストがかかる。技術の難しさもある。我々も毎日のように『あれができない、これができない』と一喜一憂してきた。それが、やっとここまで来た。かなり高い技術力が要求される。コストと技術力、この2つを持つMVNO事業者が少ないというのが理由ではないか」と回答した。