パナソニックが発表した2017年度上期(2017年4月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比9.0%増の3兆8578億円、営業利益は10.4%増の1965億円、税引前利益は7.6%増の1947億円、当期純利益は10.9%減の1189億円となった。「2017年度は増収増益に転じる年」と位置づける同社にとって、上期の折り返し地点での評価は、ひとまず合格点に達したといえるだろう。

パナソニック 取締役執行役員 CFOの梅田 博和氏は、「第1四半期に続き、増収増益を達成している。また、すべてのセグメントで、事業から創出される利益は増益となっており、収益力は着実に向上している」と自信をみせる。同社 代表取締役社長 社長執行役員 CEOの津賀 一宏氏も、「今年度の公表値をクリアすることには、かなりの手応えを感じている。公表値をボトムに上積みしたいと考えている」と語る。

2017年度(2017年4月~2018年3月)の連結業績見通しは、5月公表値をそのまま据え置き、売上高は前年比6.27%増の7兆8000億円、営業利益は21.0%増の3350億円、税引前利益は18.2%増の3250億円、当期純利益は7.1%増の1600億円としている。「下期は、上期同様の成長が継続すると見込んでいる。営業利益についても、将来に向けた投資や原材料の高騰影響があるものの、増販益が貢献し、引き続き増益になる見通しである」と、梅田氏は補足する。

パナソニック 代表取締役社長 社長執行役員 CEO 津賀 一宏氏

パナソニック 取締役執行役員 CFO 梅田 博和氏

しかし津賀氏が、「公表値をボトムに上積みしたいと考えている」とするものの、上方修正には踏み出せない理由がある。それが、米Tesla Motors(テスラモーターズ)との協業の行方だ。

第3四半期、260台しか生産されなかったモデル3

米ネバダ州北部のギガファクトリー

津賀氏も、「上方修正をしないのは、テスラをはじめとした不透明要素があるためだ」と明かす。パナソニックはテスラとの協業により、米ネバダ州北部にあるギガファクトリーにおいて、2017年1月から二次電池の生産を開始している。

ここで生産しているのは「2170」と呼ぶ円筒形リチウムイオン電池セル。テスラは、パナソニックが生産したこの電池セルを使用した電池モジュールを生産し、主にプレミアムセダン「モデル3」向けに搭載する。モデル3は、テスラのラインアップ初の普及モデルであり、全世界で45万台以上のプレオーダーが入っているという人気ぶりだ。

だが、モデル3の生産が遅れており、そこに不透明要素が存在するのだ。

津賀氏は、「2017年1月以降、電池は順調に生産を続けてきたものの、テスラ側でモデル3の生産の立ち上げに苦戦しており、電池の生産量がクルマの生産量を上回るという状況が生まれている。電池がないために、テスラの生産の足を引っ張るという状況ではない」とし、「そのため、電池の使途を蓄電用に切り替えて、蓄電用電池の生産を行っている」と説明した。

モデル3は、生産の自動化が遅れており、第3四半期(2017年7~9月)の生産台数はわずか260台に留まったという。これは、1500台の計画を大きく下回るものだ。津賀氏は、「生産の問題が解決すれば、一気に立ち上がるだろう。我々の増産体制も加速することになる」と語るが、好調な業績もテスラの影響で上方修正を足踏みせざるを得ない状況であるのは明らかだ。