シャープが発表した2017年度上期(2017年4~9月)の連結業績は、同社の順調な回復ぶりを示すものとなった。

売上高は前年同期比21.3%増の1兆1151億円、営業利益は前年同期の7900万円から405億円へと大幅な増益。経常利益は前年同期の320億円の赤字から411億円の黒字に大きく改善。当期純利益も前年同期の454億円の赤字から347億円の黒字となった。大幅な増収と黒字転換。そして、すべてのセグメントで増収となり、すべてのセグメントで黒字化する結果となった。

中国で8Kテレビ販売スタート、国内も12月に

シャープ 代表取締役兼副社長執行役員の野村 勝明氏は、「売上高、各利益ともに、5月26日に公表した上期予想を上回った。とくに、四半期最終利益は、上期予想を大幅に上回り、リーマンショック以前の水準にまで回復した」と、業績の回復に自信をみせる。

上期の営業利益の増減要因を見ると、売価ダウンでマイナス723億円の大きな影響があったが、コストダウン効果やモデルミックスの改善効果で515億円、販売増加で466億円のプラス要因があり、こうした実力での利益押上げも大きな自信になっているといえよう。

その中でも最大の回復をみせたのが、液晶テレビおよびディスプレイ事業で構成されるアドバンスディスプレイシステムだ。全売上高の約半分を占める同セグメントの回復は、全社業績の回復に直結するのは明白だ。アドバンスディスプレイシステムの売上高は前年同期比45.9%増の5216億円、営業利益が前年同期の146億円の赤字から163億円の黒字に転換した。

シャープ 代表取締役兼副社長執行役員 野村 勝明氏

アドバンスディスプレイシステムが好調だった上期

同セグメントのうち約3分の1を占める液晶テレビ事業は、価格下落こそ影響したものの、中国における大幅な販売拡大、欧州における自社ブランドによる販売体制の再確立の成果が出ている。またアジアでも売上げが拡大しており、「液晶テレビ事業だけ見ても、黒字を維持できている」とし、テレビ事業の回復ぶりを強調してみせた。

液晶テレビ事業については、今後、2つの注目点がある。ひとつは、シャープが先行している8Kテレビの動向だ。8Kテレビは、すでに10月から中国市場での販売を開始し、日本でも10月2日より予約受付、12月1日から国内販売を開始する予定だ。

野村氏は、「引き合いはいい状況である。日本における12月の販売開始時には月200台規模の販売を目指す。すでに販売を開始している中国でもいいスタートを切っている」と語った。8Kテレビは、下期からの利益貢献を想定しているという。

米国の係争案件は「ブランド取り戻す」

好調な液晶テレビ事業において、米国におけるシャープブランドの取り扱いが当面の懸案事項だろう。

現在、米国におけるシャープブランドのテレビ販売は、前経営陣がハイセンスにライセンスを譲渡したことで、シャープ自らが販売できない状態になっている。しかし、ハイセンスによる電磁波の規制違反や表示に関する規制違反、法令・安全規格違反などを問題視。また、ハイセンス製のスマートテレビが、シャープの特許を侵害しているとして、シャープブランドの使用権の差し止めなどを求める訴訟を行っているところだ。

今回の会見では、この件について「現在係争中の案件であり、コメントは差し控える」としたが、「シャープのブランドを取り戻すという姿勢は変えない」とも発言をしている。米国市場における液晶テレビの販売は、同社のグローバル戦略において欠かせないものであり、この「ピース」を加えることができるかどうかが、今後の液晶テレビ事業の拡大を左右することになる。

さらに、アドバンスディスプレイシステムのセグメントにおいて、売上高の3分の2を占める事業はディスプレイの外販。これについて野村氏は「大手顧客向けのスマホ、タブレット用中小型ディスプレイが好調であり、さらに、車載向け、ゲーム向けパネルが伸張した」と語り、「特にタブレット向けの中型ディスプレイが、売上げ、収益ともに大きく貢献している」と説明した。