マウスコンピューターのゲーミングPCブランド「G-Tune」に、新たな製品シリーズ「NEXTGEAR-C」が追加された。それはゲーミングPCというには小さく、そして軽量だった。マウスが超小型フォームファクタの製品を投入した理由は何か。G-Tuneプロダクト担当を務める安田氏に話を聞いた。

マウスコンピューターでG-Tuneのプロダクト担当を務める安田氏。某編集Gの宿敵

さて、G-Tune製品として新たに投入されたNEXTGEAR-Cだが、非常にコンパクトな本体に目が行く。一見すると手のひらサイズの小さな黒い箱に見えるが、ここに4コアのIntel Core i7-7700HQに加えて、NVIDIA GeForce GTX 1060 3GBを搭載する立派なゲーミングPCに仕上がっている。

NEXTGEAR-C

ミドルタワーPCの「NEXTGEAR」シリーズと比較すると、より本体の小ささが際立つ

G-Tuneでは、小型フォームファクタのゲーミングPCとして、すでに「LITTLEGEAR」と「NEXTGEAR-SLIM」を展開している。ほかのメーカーと比べても小型PCのラインナップは厚めだ。ここにNEXTGEAR-Cを追加した狙いはどこにあるのか。

開発のきっかけは「LANパーティ」

安田氏は「LANパーティへの機材協力がきっかけでした」と語る。G-Tuneではさまざまなイベントに対して、積極的に機材協力を行っているが、東京で過去2回開催された大規模LANパーティ「C4 LAN」でも、レンタル用PCとして多数のゲーミングPCを提供している。

2017年5月に開催された大規模LANパーティ「C4 LAN 2017 Spring」

G-Tuneも機材協力している

そこで参加者から寄せられたのが「ディスプレイやバッテリーは必要ないので、もっとコンパクトでハイパフォーマンスPCがほしい」という声だ。また「キーボードやマウスといったゲーミングデバイスも自前のものを使いたい」とのことから「ノートPCではなく小さなキューブ型PCを企画したらどうだろうか」と考えたのだという。

LANパーティに限らないが、通常のデスクトップPCを持ち運ぶのは一苦労だ。それに加えてディスプレイやゲーミングデバイスも合わせて運ぶとなると本当に大荷物となる。2017年12月15日から17日に予定されている「C4 LAN 2017 WINTER」のチケットが販売されているが、PCやディスプレイのレンタルチケットがすぐに売り切れてしまうというのもそれを物語っている。

C4 LAN 2017 WINTERのWebサイト。早くも機材レンタルのチケットが一時完売となっている。それだけ機材の運搬が大変ということだろう

安田氏は「NEXTGEAR-Cは本体も軽くて小さいうえに、化粧箱もコンパクトになっているので、ディスプレイは別にしても、キーボードやマウスと一緒にバックパック1つで収まります」と持ち運びのしやすさをアピールする。

化粧箱も小さい。上に持ち手がついているのでこのまま運べる

もちろん、小型であることは設置スペースの面からもメリットがある。デスクの上にPC本体とディスプレイ、各種デバイスだけでもそれなりのスペースが必要で、ここに配信用の機材などを置こうとするとかなり窮屈だ、NEXTGEAR-Cであれば、かなり余裕が生まれるだろう。配線のしやすさもイベント向けといえる。

開発者向けのデモ用マシンとしても使える

また、ゲーマーだけではなく、カンファレンスなどのイベントに出展する開発者からみても小さなPCは魅力的だ。限られたスペースにデモ用PCやディスプレイ、各種資料などをレイアウトしなければならない。

VRヘッドセットも含めると結構なスペースを取ってしまう。またVRのシステムはほかのデモよりもケーブルの取り回しが大変なので、そういった面でもNEXTGEAR-Cのような小さなPCの方が使いやすいだろう

そもそもLITTLEGEARはそうした開発者の声を取り入れた製品だが、さらにVRヘッドセットやコントローラなどのデバイスも考慮すると、スペースが足りないという声を聞く。イベント展示といった用途に対してもNEXTGEAR-Cのほか、LITTLEGEARも含めて幅広い選択肢を提供できるようになった。

ちなみにVRゲームを開発する桜花一門氏が実機を検証中とのことで、「取り回ししやすく、VRのテスト環境を構築するマシンとして適している」とのフィードバックをもらっているという。

桜花一門氏が開発するVRステルスホラーアドベンチャー「ChainMan」。現在はバージョンアップし、ローカルでのマルチプレイに対応する

安田氏は「NEXTGEAR-Cについても、積極的に機材協力を行うことで、まずは使ってもらうところからはじめたい」としている。

冷却の工夫を積み重ねることでパフォーマンスの低下を防ぐ

さて、小型ゲーミングPCはメリットが多いが、一方でパフォーマンス面や発熱が気になる。特に小型PCでは筐体がかなり熱くなるようなものもこれまで見てきた。ハイパフォーマンスはCPUやグラフィックスを搭載していても、パフォーマンスが発揮しきれないというケースもある。

NEXTGEAR-Cでは、CPUとGPUでそれぞれ実装面が異なり、熱源が分離されている。また、それぞれに対してエアフローを最適化するほか、ヒートパイプを配置、GPU側にはファンも搭載する。こうした工夫により「負荷がかかった状態でもパフォーマンスの低下を防ぐ」(安田氏)としている。

筐体の天面を開けたところ。M.2ストレージやメモリを搭載

筐体の底面を開けるとグラフィックス用のファンが見える

上がCPU、下がGPU。それぞれ異なる基板に実装する

筐体内部に仕切りが設けられ、熱源を分離したほか、それぞれでエアフローを最適化する

NEXTGEAR-Cのベース構成は、CPUがIntel Core i7-7700HQ、チップセットがMobile Intel HM175、メモリが8GB、ストレージが480GB SATA3 SSD、グラフィックスがNVIDIA GeForce GTX 1060 3GB、OSがWindows 10 Home 64bit。ミドルレンジのゲーミングノートPCに近いスペックとなっている。

製品名 NEXTGEAR-C
ic100BA1
NEXTGEAR-C
ic100BA1-SP
NEXTGEAR-C
ic100SA1
NEXTGEAR-C
ic100GA1
OS Windows 10 Home 64bit
CPU Intel Core i7-7700HQ
グラフィックス NVIDIA GeForce GTX 1060 3GB
メモリ 8GB(8GB×1) 16GB(8GB×2) 32GB(16GB×2)
SSD 480GB SATA(2.5インチ) 256GB SATA(M.2) 512GB PCIe 3.0x4(M.2/NVMe)
HDD - 1TB
無線 IEEE802.11ac(433Mbps) + Bluetooth 4.2
本体サイズ/重量 W158×D143×H87mm/1.6k
価格 税別159,800円 税別159,800円 税別179,800円 税別199,800円

上位モデルでは、M.2 SSD + HDDのデュアルストレージ構成やより大容量のメモリを搭載する。ユーザー自身による増設もできなくはないが「保証の対象外となってしまうことに加えて、ケースを開けるときに傷がつきやすいので、できれば購入時にオプションで追加していただくことをお勧めします」(安田氏)とのこと。

2.5インチストレージは天面に取り付ける形

NVIDIA GeForce GTX 1060を採用した理由として、安田氏は「NEXTGEAR-Cに収まるサイズありながら、VRにも対応する高性能なグラフィックスであることが決め手になりました」と説明する。

インタフェースも豊富で、通信機能はギガビット対応有線LANとIEEE802.11ac対応無線LAN、Bluetoothを搭載。このほか、HDMI×2、Mini DisplayPort×1、USB 3.0 Type-C×1、USB 3.0 Type-A×4、USB 2.0×4、カードリーダー、オーディオポートを備え、最大3画面出力に対応する。

背面インタフェースも豊富。上側についているHDMIポートはCPU内蔵のグラフィックス用で無効化されている。下側の3系統を使う形になる

ゲーミングPCを気軽に持ち出せる

G-Tuneの中でもとりわけ小さなNEXTGEAR-C。G-Tuneは、これまでもLITTLEGEARやNEXTGEAR-SLIMを通じて、ゲーミングPCが使われる場所を広げてきたが、NEXTGEAR-Cはさらにそれを推し進める製品だといえるだろう。

ケーブルの取り付け・取り外しもしやすく、友人の家やLANパーティなどに手軽に持ち運んで手軽にPCゲームをプレイしたい、そんなユーザーに適している。「こんな小さなPCでもしっかりゲームが遊べることを体験してほしい」と安田氏もアピールする。

ハイエンドグラフィックスカードの搭載が可能なLITTLEGEAR、スリムなNEXTGEAR-SLIMというラインナップに、より小型なNEXTGEAR-Cが加わることで、より選択肢が広がったことになる。イベントなどでハイスペックなPCを持ち運ぶ機会が多いユーザーにこそ体験してほしい1台だ。