異国の地に憧れを抱く人は多いだろうが、住むとなると、期待すること以上に不安なことも多いもの。まして、働くとなれば、言葉以外にも多くの壁が待ち受けていることだろう。そこで今回は、在日外国人20名に、日本の企業で働くことになった場合、一番心配に思うことを聞いてみた。

Q.日本の企業で働くことになった場合、一番心配に思う(心配だった)ことはなんですか?


■残業

  • 「一番心配だったことは残業時間でした。上司が働き続けると部下は家に帰れないような雰囲気があり、残業を止むを得ずしました」(ドイツ・30代前半・男性)
  • 「一番の心配は残業をさせられるかどうかです。過労死したくない…」(アメリカ・30代前半・女性)
  • 「残業と有給でした。残業は、自分の時間が完全になくなる、会社のためだけに生きていくのが正直怖かったです。よく日本のニュースに出ている過労死と自殺は海外でもニュースになっていて、日本で働くことになってプライベートと仕事のバランスがうまく行かなかったら…と心配していました。有給も、他の国と比べて極めて少ないし、まとめて取れない会社だったらあまり里帰りできなくて、母国にいる家族に会えないと考えたら大きな不安を感じていました」(イタリア・20代前半・女性)

■コミュニケーションがとれるかどうか

  • 「コミュニケーション能力が足らなくて、意思疎通ができないか心配」(マレーシア・40代前半・男性)
  • 「コミュニケーションが取れるかが心配」(インド・30代前半・男性)
  • 「お客様にちゃんと対応しているかどうかというところが特に心配したものです。その文化は海外とは大きく異なるのです」(スペイン・30代前半・男性)

■人間関係

  • 「人間関係です。時間通りにノルマをこなせるか心配でした」(パラグアイ・50代・女性)
  • 「人間関係でした」(ペルー・40代前半・女性)
  • 「職場の人間関係」(中国・20代前半・女性)
  • 「一度とてもつらい仕事環境で働いたことがあります。やはり差別問題に悩まされて、外国人スタッフはすぐ辞めます。同じ仕事をしているはずの日本人スタッフに怒鳴られたりパシリにされたり、いつも嫌な仕事を押し付けられました。差別といじめ、ビサの心配がとてもストレスでした」(フィリピン・30代後半・女性)
  • 「今働いています。難しいのは人間関係です。上司とのコミュニケーションを上手くとれない時は本当に辛い。向こうと違って、そんなに励まされることがないので、難しい面もあります。今の仕事の良いポイントはフレックスで、自分で働きたい時間帯を決めた事と、一切残業がない事」(オーストラリア・30代後半・女性)

■上下関係

  • 「上下関係の激しさ。それを利用とする人がいた場合」(シリア・30代後半・男性)
  • 「上下関係です。上司に無理をさせるのが心配です。しかも暗黙なルールが多すぎます」(香港・20代後半・男性)
  • 「上下関係の厳しさ。先輩後輩関係みたいなのは苦手」(ハンガリー・30代後半・女性)

■その他

  • 「一番心配なのが、仕事を教えてくれる人がちゃんと教えてくれるかどうか」(スペイン・40代前半・女性)
  • 「マナーについて、自分の態度が日本ではマナー違反ではないか気になる」(タイ・40代前半・男性)
  • 「パワーハラスメントが心配です。知り合いがたくさんパワハラに会い、皆困っていました」(エジプト・30代前半・女性)
  • 「自分のスキルで会社の実績を上げることが難しいことが心配でした。日本で働いていた時の1年目は、初めてのことが多くてちゃんと仕事をやって行けるかが分からないし、2年目になって実績をあげるために、必死に新しい仕事にチャレンジしました」(カンボジア・20代前半・男性)

総評

在日外国人に、日本企業で働く際に心配に思うことを聞いたところ、まず、「残業」が挙がった。自身の健康やプライベートなどを犠牲にしてまで、会社のために身を粉にして働き、それを当然のように強いる日本独特の労働環境に、「過労死したくない」「会社のためだけに生きていくのが正直怖い」といった声が寄せられた。

「コミュニケーション」や「人間関係」を心配する声も多かった。日本語がある程度話せたとしても、やはり言葉によるすれ違いは多少なりともあるのだろう。自分の言いたいことがうまく伝わらないとなれば、コミュニケーションを取ることに消極的に。結果、人間関係がうまくいかない…という負のスパイラルに陥ることも。

言葉も風習も違う異国の地で働くということは、想像以上に大変であることは明らか。失敗しても伝わらなくても、消極的になる必要はない。むしろ積極的にコミュニケーションを取ることこそが、日本企業に溶け込む一番の近道になるだろう。そして日本人には、そんな外国人の気持ちを理解し、受け止めようとする姿勢を示してもらいたいと思う。