医療保険の中には、入院や手術に対する保障だけでなく、病気やケガで通院した時にも給付金が受け取れるよう、特約を付けられるものもあります。通院には治療費のほか、交通費などもかかりますので、給付が受けられるならありがたい、と考える人は多いのではないでしょうか。
ただし、通院保障を受けるには条件がありますし、必ずしも通院保障が必要なケースばかりではありません。医療保険の通院保障はどのような内容で、どのような時に必要なのか解説していきます。
医療保険の通院保障とは
医療保険とは、病気やケガによる入院や手術に対し、給付金が支給される保険です。この保障が基本となり、必要に応じて他の保障を特約で付加していきます。たとえば、先進医療やがんに対する保障、それに、女性特有の疾病や三大疾病に対する保障などはよく目にしますよね。
通院保障も、一部の医療保険では特約として用意されていますが、ただ通院をしただけでは給付は受けられないものが一般的です。通院保障によって通院給付金を受け取るためには、入院給付金の保障対象となる病気やケガで入院し、退院後に通院した場合に対象となることが多いため、注意が必要です(一部の保険では、入院前の通院も通院保障の対象となっている)。
保障される入院後の通院は、退院の翌日から120日以内または180日以内の通院が対象、かつ、通院の保障限度日数は30日以内となっている保険が一般的のようです。なお、通院保障には往診は含まれますが、薬を取りに行くだけといった通院の場合は対象外となります。
気になる通院給付金の額ですが、こちらは「入院給付金の〇割」、または、一定の金額に定められています。なお、一度の通院で、通院にかかった治療費等にかかわらず、定められた金額の上限まで受け取ることができる仕組みです。
医療保険以外で通院保障が受けられる保険
このように、医療保険の通院保障は、入院を前提として受けられる保障となっています。しかし、医療保険以外では、入院をしていなくても、通院給付金を受け取ることができる保険もあります。
たとえば、がん保険の場合、がんの治療には長期の通院が必要で、医療費が高くなる傾向にあることから、通院保障の内容が充実しているものが多くあります。がんの通院治療に備えるには、通院給付金が基本となりますが、そのほかにも、入院の有無にかかわらず、所定の放射線治療や抗がん剤治療などを行った場合に支払われる治療給付金、がん治療で入院して退院する際に一時金として受け取れる退院療養給付金などがあります。
入院していなくても給付金が受け取れる保険はほかにもあり、たとえば、傷害保険が当てはまります。傷害保険の通院保障は、補償対象となるケガを負った日から180日目までが通院日数の対象となり、30日を限度として給付金を受け取ることができるものが一般的です。
通院保障は必要? 不要?
それでは、医療保険に通院保障の特約は必要なのでしょうか。見極めるポイントは、主に2つあります。ひとつ目は、入院後に通院して治療を受ける可能性がどの程度あるのか。2つ目は、その他の保険や公的制度からの給付、または貯金で備えることと比較しても、通院保障による給付金が必要かどうかです。
まず、病気やケガで入院して、さらにはその後、通院する可能性はどのくらいあるのか確認してみましょう。厚生労働省の「患者調査(平成26年)」によると、入院患者の約79%の人が、退院後に通院しているというデータがあります。病気やケガの種類にもよりますが、高い確率で通院する可能性があるということは頭に入れておいたほうがよさそうです。
次に、医療保険の通院保障以外で通院に備える方法を見ていきましょう。まず、公的な制度として、会社員や公務員の人が加入している健康保険には「傷病手当金」があります。傷病手当金は、病気やケガで会社を休んだ時、条件を満たしていれば支給されるお金です。
その他にも、民間の生命保険会社で販売されている「就業不能保険(所得補償保険)」といった商品で備える選択肢もあります。これは、病気やケガで入院や自宅療養の必要があり、働けなくなってしまった時、所定の給付金が支払われる保険のことです。また、そもそも万が一の時のための貯金を充てられるなら、保険に頼らなくても済む場合もあります。
このように、病気やケガで通院することの備えに対しては、医療保険の通院保障の他にも様々な方法があります。これらを踏まえ、ご自身にとって通院保障が必要である場合には、特約を付加することを検討してみましょう。
入院後、しばらく通院するとなると、予想以上に費用がかさみ、心配になることもあります。思うように働けず、収入面で不安があれば、なおのことでしょう。そのような時に備え、通院保障も選択肢のひとつとして、いざという時に困らない準備をしておくことをお勧めします。
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筆者プロフィール:武藤貴子
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント
会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中。FP Cafe登録FP。