賃貸契約の際、初期費用として多くの人が支払っている「礼金」。これはそもそも、何のためのお金なのでしょうか? 今回はこの礼金の由来や全国的な傾向、法的な位置づけ、減額交渉の可否などについて上野中央法律事務所の弁護士、中尾信之先生に伺いました。
礼金とは何か、その由来
「『礼金』とは『賃貸借契約』に伴い、契約者が貸し主に払うお金のことです。由来とされる説はいくつかあり、一つは『戦後の住宅難の時代に契約のお礼として借り手が貸し手に渡したお金』というものです。もう一つ、『子どもが進学・就職する際に親が心づけとして物件の貸し手に渡したお金』という説もあるようです」
礼金は全国的な習慣なのか?
「まず、礼金は関東中心の慣習らしいとされています。全国的には、ある地域とない地域があるようですね。関西では礼金がない代わりに、『敷引き』という慣習があります。これは借り手が物件を退去する際に、支払った敷金から決まった割合を貸し手が差し引いて返すというもので、結果的に礼金に似たものだと言えるでしょう。つまり敷金の中に礼金に似た要素が含まれているので、例えば関東で敷金2か月・礼金2か月の物件だと、関西では敷金が3か月から4か月になっています」
礼金の法律的な根拠
「礼金の法律的な根拠の前に、『敷金』について述べておきましょう。これは『家賃の滞納』や『退去時の修繕費(現状回復費)の不払い』に備えて、あらかじめ貸し手が預かっておくお金です。『保証金』という場合もありますが内容は同じです。一方、礼金は『借り手側と貸し手側の合意』に基づいて支払われるものです。法律的に義務付けられているものではなく、ある意味『ペットの飼育不可』や『火災保険への加入義務付け』のような『貸し手が提示する条件の一つ』なのです。つまり合意しないと払う必要はないお金ですから、まず一般論として減額交渉は可能になります。また過大な礼金が『消費者契約法』に違反しているとされ、無効にされた裁判例もあります」
中尾先生によれば不人気なエリア、または駅から遠い、近隣に商店がないなどの不人気な物件にも関わらず礼金を高額に設定している物件では減額交渉は十分可能とのこと。一方、人気のエリア・物件の場合、礼金の減額交渉をしているうちに他の人に借りられてしまう可能性もあるので周辺の物件相場との兼ね合いで判断しましょう、というアドバイスをいただきました。これまで高い礼金を払ってきた方も、次回の引っ越しでは減額交渉にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
《取材協力》
中尾信之 先生
上野中央法律事務所 弁護士
http://www.ueno-bengoshi.com/