人は睡眠に人生の約1/4とも言える時間を費やす。そう考えると、布団にこだわるというのは、ある意味、必然的なことかもしれない。そんな中、熟練の技術を持つ老舗布団メーカー6社とクリエイターがタッグを組み、「布団をスターに!」というコンセプトの下、寝具ブランド「FUTONSTAR」が誕生した。

リミテッドでラグジュアリーな布団を

「FUTONSTAR」とは、食品・リビング素材を扱う商社であるメルクロスと日本の老舗布団メーカー6社を中心に、布団メーカー・布団職人たちがクリエイター・アーティストと共に、全く新しい視点で寝具を創造し販売するブランド。メイドインジャパンのリミテッドでラグジュアリーな布団を提案していくため、同業者による「競争」でなく「協業」を行い、布団の新たな価値を提案する。

ブランドロゴのマークは、スターが布団に寝ているイメージを表現している

アートのような布団って?

同ブランドは、布団をキャンバスに見立てた自由な絵柄が特徴。デザインを担当したのはポスターデザイナーの相原一博氏。同氏は、とにかくアイキャッチになることを大前提とし、各社や工場まで実際に足を運び、それぞれの風土・地理・歴史を踏まえつつ、パーソナリティやアイデンティティを引き立たせるようなデザインに仕上げたという。

千代柄を現代風の配色にアレンジした「ORIEMON REMIX」(税別150万円)

「ORIEMON REMIX」(税別150万円)は、石川啄木『一握の砂』の一説をモチーフに

コドモわた(東京都)が製造した「ORIEMON REMIX」(税別150万円)は、伝統的な和布団と呼ばれる日本式の綿布団に再びスポットライトを当てたもの。伝統的な千代柄をハンドペイントで絵起こしし、配色も現代風にアレンジした。また、同社が北海道にも工場を所有していることにちなみ、石川啄木が北海道での体験を歌にした『一握の砂』の一説をモチーフにグラフィック化した。

"神レベルの布団"を目指した「NI-SHI- KI 24 FORCES」(税別240万円)

丸三綿業(群馬県)が製造した「NI-SHI- KI 24 FORCES」(税別240万円)は、「神レベルの布団を作ろう」という想いで、縁起物を盛り込めるだけ盛り込み、達磨大師の格言を英訳し、グラフィカルに表現した。また、同社は世界遺産に登録されている富岡製糸場のおひざもと・富岡市で生産される極めて稀少な絹を使用しており、その貴重な技術が評価され、2011年には貞明皇后記念蚕糸科学省を受賞している。実際に掛布団を手で持ってみたが、驚くほどに軽かった。

「NI-SHI- KI 24 FORCES」(税別240万円)には縁起物をたくさん盛り込んでいる

そのほかにも、「美女」をテーマに、ピンクに染まった中綿が透けて見えるシースルー仕様に、ハート型キルト、ゴージャスなフリンジ付きと、とことんフェミニンに仕上げた木村綿業(新潟県)の「HONEY OF TERROR」(税別150万円)や、代表がもともとロックドラマーだったことから、ヘヴィーロックなデザインを取り入れた四国繊維販売(香川県)の「SANUKI LEGEND」(税別120万円)など、個性豊かな布団が並んだ。

「HONEY OF TERROR」(税別150万円)のテーマは「美女」で、とことんフェミニンに。

ヘヴィーロックなデザインの「SANUKI LEGEND」(税別120万円)

オシャレなだけじゃない! スペックが良いのは当たり前

同ブランドで発表した寝具は、見た目にも楽しめるものばかりだが、こだわったのはデザインだけではない。今回「協業」した6社の老舗布団メーカーは、それぞれに素晴らしい技術を持っており、今回のコレクションにおいても、その技術がしっかりと生きている。

円形の敷布団がユニークな「ASG GRAND」(税別188万円)

まず紹介したいのは、アサギ(山形県)が製造した「ASG GRAND」(税別188万円)。敷布団を円形にすることで、「まさに大の字で眠れる丸い布団」に仕上げた。実際に寝てみたところ、両手両足を思い切り伸ばして大の字になっても、全く布団からはみ出ない。

また、中材に備長炭ハニカムを使用することで、通気性が良く蒸れにくく、通常は掛布団に使用することが多いというアイダーダウン100%を敷布団にも使用することで、保温性も増している。さらに、「オシャレなだけではなく、健康であるための寝具を提供したい」という思いから、この敷布団は同社の主力商品「腰痛専用敷き布団」の構造をそのまま採用しているそうだ。

担当者は「健康であるための寝具を提供したい」と語っていた「ASG GRAND」(税別188万円)

丸い敷布団が目立ってしまいがちだが、掛布団にも随所に工夫が見られる。両端に少し重みをつけ、ちょうど身体の上にくる中心部分には綿を増量することで、隙間ができにくく、保温性も高めた。掛布団をかけてもらうと、じんわりと身体が温まるのを実感できた。また、手足を動かしても掛布団がずれることもなく、重みによる圧迫感もない。ちなみに同布団のデザインは、山形県の自然からインスピレーションを受け、森羅万象で巻き起こることをデジタルな抽象画で仕上げた。

次に、マルゼン(栃木県)が製造した「AIR COMFORT」(税別310万円)はマットレスに特長がある。マットレスについて担当者に話を聞くと、「これが長年の夢だった」というほどの自信作。素材のウレタンからこだわったという紫色のウレタンマットレスは、手で押してみても反発力が強く、担当者によると10年使っても2%程度しかヘタレないそうだ。

「AIR COMFORT」(税別310万円)はマットレスの切り込みの幅も試行錯誤したそうだ

マットレスの切り込みも試行錯誤し、最も寝返りがしやすく、通気性が良く、圧力が分散することで寝心地も良くなるよう仕上げている。マットレスは裏返して使用することも可能で、1枚のマットレスで2種類の寝心地を楽しめる。またデザインは、マットレスに付加価値をつけるべく、本革仕様の専用ベッドフレームを用意した。シーツは、苺の生産量日本一である栃木県にちなんだ苺柄となっている。

「AIR COMFORT」(税別310万円)の構想自体は10年前からあったという

「FUTONSTAR」は全て完全受注生産であり、注文時に身長に合わせて大きさを変更すること等も可能。基本はECサイトでの販売となるが、今後は、年に2回ポップアップストアを開催する等、直接商品を体験できる機会も設けていくという。