ボクシングのWBA世界ミドル級タイトル戦が22日、東京・両国国技館で行われ、挑戦者でロンドン五輪金メダリストの村田諒太(帝拳)が、王者アッサン・エンダム(フランス)に7回終了TKO勝ち。王座から陥落したエンダムは、試合後に会見していた新王者の村田をサプライズで訪れ、勝利をたたえた。
5月の王座決定戦では、村田が4回にダウンを奪うなど試合を優位に進めるも1-2で判定負け。その判定が物議を醸し、誤審を認めたWBA会長の指令により、異例のリベンジマッチが決定。そんな因縁の再戦で、村田が見事リベンジを果たした。
試合後に村田はリング上で涙を流して喜び、ファンに感謝の気持ちを伝えるとともに、相手のエンダムについても「友人です。初めてできた友人だと彼も言ってくれて、僕もそう思っています」とコメント。「ボクシングで試合に勝つ人間は、相手を踏みにじり、その上に立つ。だから勝った人間には責任がある。彼の分の責任も伴ってこれから戦っていきたい」と誓った。
そして、試合後の会見にサプライズ登場したエンダムは、村田と熱い抱擁と握手を交わし、笑顔で勝利を祝福。「何も言えなくてごめん。どんな言葉をかけていいかわからず」と謝る村田に、エンダムは「謝ることはないよ」と優しく言葉をかけ、「君がチャンピオンだ」とたたえ、「またいつか戦おう」と約束した。2人の友情に報道陣からも拍手が起こった。
村田は「負けた時は『ありがとう』って伝えやすいんですけど、勝ったときは何か伝えること、自分からアクションを起こすことってできないので、こうやって来ていただけたことは本当にうれしい」と感激し、「真の友人だと思っています」と友情を再確認した。
また、成長を実感しているか聞かれた際に、「成長したと思います」と答えるも、「でも自分で成長したんじゃなくて、例えば、エンダムが会いに来てくれたりすることによって、僕も一緒に成長させてもらえる」と意見。「今回勝ったことで何が得られるかっていうと自信以外にあんまりなかったりするんですけど、エンダムが来てくれたことによって、人間性の大切さだったり…。そういった意味では、他者が成長されてくれるんだなと思いますし、この気持ちは忘れたくないです」とエンダムから人として大切なものを受け取ったようだ。