今年の東京モーターショーは過去(名車復活)と未来(EV、HV)が交差する!?

「第45回 東京モーターショー2017」が間もなく開幕する。環境・安全といった課題に直面する自動車メーカーは、最新技術でそれに応える一方、需要喚起の起爆剤とするべく過去の名車復活にも意欲的に取り組む。今回の東京モーターショーは従来にも増して、注目すべき出展車両がそろいそうだ。

東京モーターショーに出展されるトヨタ「GR HV SPORTS concept」

トヨタ「GR HV SPORTS concept」

ハイブリッドの先駆者であるトヨタが、東京モーターショーでついにハイブリッドスポーツカーを発表する。どういうわけか、広報資料では「世界耐久選手権(WEC)に参戦するハイブリッドレーシングマシン『TS050 HYBRID』を想起させるデザイン」と説明されているが、誰が見てもこれは「86」のハイブリッドバージョンというべきだろう。それゆえに、市販化の現実味も高そうだといえる。

「GR HV SPORTS concept」はFRレイアウトを基本に、重量物であるバッテリーを車体中央に配置したという。トヨタにとって、こうしたメカニズムの開発は造作もないことだろう。となると、注目すべきはパワーと燃費のバランスをどのようにセッティングしているのか。このあたりはチューニング次第であるだけに、トヨタのHVスポーツカーに対する考え方が反映されるはずだ。

ところで、トヨタのスポーツカーといえば、次期「スープラ」や往年の名車を復活させた「2000GT」が今回発表されるのではないかとの憶測が絶えない。いまのところ正式な発表はないが、サプライズで登場する可能性はあるだろうか。

マツダ次世代デザインビジョンモデル・次世代商品コンセプトモデル

前回、「RX-VISION」を衝撃的に発表したマツダ。今回はコンセプトカーを2台、次世代デザインビジョンモデルと次世代商品コンセプトモデルを出展するという。

マツダ次世代デザインビジョンモデル

公開された画像を見る限り、1台は「RX-VISION」の進化形とも取れるクーペだが、よく見ると4ドアのようだ。もちろん、ドアの数より気になるのは、これが噂される「RX-9」なのか? ということ。それを知る術はないが、それ以前に気になるのは、画像のモデルがデザインスタディモデルの域を出ていないように見えること。もしこれが「RX-9」だとしても、市販までにまだ時間がかかりそうといえるかもしれない。

もう1台はハッチバックモデルの後部の画像などが公開されている。一瞥したところデザインそのものに目新しさはないが、このモデルには「SKYACTIV-X」と「SKYACTIV-Vehicle Architecture」が採用されるという。技術面に限れば、今回の東京モーターショー全体を通じて最も注目すべきモデルの1台といえるだろう。

マツダ次世代商品コンセプトモデル

「SKYACTIV-X」はガソリンエンジンで圧縮着火を世界で初めて実現したエンジンで、従来より3割も燃費を向上させたという。市販されれば、ガソリンエンジン100年の歴史にひときわ大きく刻まれるであろう、夢のエンジンといえる。「SKYACTIV-Vehicle Architecture」は人間中心の思想を突き詰めて各機能を最適化した次世代車両構造技術。従来のプラットフォームの概念を超えているというから興味は尽きない。

ホンダ「Sports EV Concept」

2019年にEVを市販すると発表しているホンダ。今年9月のフランクフルトモーターショーにて、コンセプトカー「Urban EV Concept」を発表したが、東京モーターショーではそのスポーツバージョンというべき「Sports EV Concept」を世界初公開する。ホンダはEV専用のプラットフォームを開発しており、両車ともそれをもとに開発されるようだ。

ホンダ「Sports EV Concept」

「エンジン屋」と呼ばれたホンダがEVを開発するのは時代の要請ともいえるが、EV専用プラットフォームを開発し、発売前から2台のラインアップをそろえてしまうとは、相当な意気込みを感じさせる。

「Sports EV Concept」は画像を見る限り、2ドアクーペのように見える。ホンダの2ドアスポーツカーというと、「CR-Z」のように短いボンネットにハッチバックといったイメージがあるが、「Sports EV Concept」は長いボンネットと張り出したリアフェンダーを持つ、典型的なスポーツクーペのようなフォルムだ。

典型的と書いたが、ホンダにとっては、こうしたデザインは過去にほとんど例のない冒険といえるだろう。豊かな曲面を多用したフォルムは「S660」や「NSX」といった最近のホンダのスポーツカーのデザインとは方向性が大きく異なる。EVということでメカニズムも気になるところだが、デザインにも注目したい。

ダイハツ「DNコンパーノ」

今回の東京モーターショーでは、往年の名車が復活するという噂がいくつもある。先述のトヨタ「スープラ」「2000GT」の他にも、日産「シルビア」、ホンダ「S2000」、マツダ「RX-9」などが噂に上った。しかし、いずれも現時点でメーカーからの正式発表はない(もちろんサプライズで登場する可能性はあるが)。

ダイハツ「DNコンパーノ」

そんな中、ダイハツ「DNコンパーノ」だけはメーカーから正式発表されている。「コンパーノ」はダイハツが1963年に発売したモデルで、ワゴン、ライトバン、2ドアクーペ、スパイダーなど多彩なボディバリエーションがあった。それまでオート三輪メーカーであったダイハツが、乗用車に進出を果たした記念すべき最初のモデルである。

今回出展される「DNコンパーノ」は、半世紀も前となる初代モデルの雰囲気をうまく再現しつつ、現代的な4ドアクーペとした。注目すべきはその完成度で、ドアミラーなど細部を変更すればそのまま市販できそうに見える。搭載するパワートレインも「1,000ccターボ(1,200ccハイブリッドも搭載可能)」と具体的に発表されているし、プラットフォームは現行「ブーン」と共用と推測できるから、市販化には何の問題もない。

現在、1,000ccクラスの国産車は経済性と実用性に偏りすぎ、パーソナルユースで魅力的なモデルが非常に少ない。欧州車にはフィアット「500」や「スマート」、あるいはルノー「トゥインゴ」などがあるが、日本車にはこれらと競合するモデルはないといえる。とくに女性から見て魅力的に映るモデルがまったくない。「DNコンパーノ」が発売されれば、日本車全体にとって大きな意味を持つモデルとなるだろう。

ホンダ「モンキー125」

1台だけ、二輪車も取り上げたい。ホンダが参考出品する「モンキー125」だ。昨年のタイ・バンコクのモーターショーで「モンキー コンセプト」が発表されているが、東京モーターショーではネーミングを「モンキー125」と変えたモデルが改めて発表される。市販化は目前と考えてよさそうだ。

「モンキー」の50ccモデルは、今年6月に生産終了を発表し、50年に及ぶ歴史に幕を下ろすこととなった。これだけでも大きなニュースだが、「モンキー」の終焉は単に1モデルの問題にとどまらない。「モンキー」の生産終了については、東京モーターサイクルショーの場でホンダモーターサイクルジャパンの社長自ら大々的に発表した。同社代表取締役社長の加藤千明氏は、厳しい排気ガス規制のため、他メーカーを含めて50ccクラスが存続できなくなっている現状を訴えている。

日本では125ccクラスは数十年にわたって「無風地帯」といわれるほど不人気だったが、今後は事実上消滅する50ccクラスに代わって、日本のモータリゼーションのボトムエンドを支えることになるはずだ。「モンキー125」は、50ccクラスの需要を125ccクラスに引き継ぐ象徴的な例として注目される。

「第45回 東京モーターショー2017」は東京ビッグサイトにて10月25日から開催。10月28日から11月5日まで一般公開される。