日本の医療費は諸外国と比較すると高いのだろうか

10月に入って朝夕の冷え込みが厳しくなってきており、秋の空気どころか、一気に冬めいた日もみられるようになってきた。気温が低い季節になると風邪インフルエンザに罹り、病院やクリニックのお世話になる人が増える。そしてもちろん、その現象は外国人にも当てはまる。

海外から移住してきて日本に住むようになった外国人たちは、日本人同様に日本の医療機関で診察・治療をしてもらい、医療費を払う。留学などで日本に3カ月以上滞在する外国人は国民健康保険への加入が義務づけられており、加入すれば日本人と同じように1~3割の自己負担額で医療サービスが受けられる。私たち日本人もその恩恵にあずかる機会が少なくないわけだが、そもそもの治療費や診察費が高ければ、たとえ3割負担だとしても「高額だ」と感じることもあるだろう。

それでは実際のところ、海外から移住してきた人たちは日本の医療機関の医療費についてどう考えているのだろうか。日本在住の外国人20人に聞いてみたので、気になった回答を紹介しよう。

Q. 日本の医療機関の医療費は母国と比べて高額ですか、低額ですか。風邪などの診療にかかった費用などの具体例とあわせて説明してください

日本の方が高い

・「とても高いと思います。そもそも、イタリアでは風邪で病院へ行きません。薬局へ行って、そこの先生に無料で相談に乗ってもらって市場の薬で治せます。ただ、保険がきく歯医者さんは比較的、日本の方が安いです(虫歯治療)。一方で歯の矯正はイタリアの方が安いです。結構ケースバイケースですが、イタリアでは基本的に医療費は無料です」(イタリア/20代前半/女性)
・「高いと思いますが、母国で保険のきかない病院にかった場合は日本よりも高額になります。例えば、レントゲン撮影は1万5,000円ぐらいかかります」(パラグアイ/50代/女性)
・「高いです。母国ですと全額自費でも風邪の診療は1,000円ぐらいです」(中国/20代前半/女性)
・「金額的には日本の方が高いですが、母国では全額負担なのでその分だけ高く感じます。受診費はあまりかかりませんが、治療費と薬代が高く感じます」(カンボジア/20代前半/男性)
・「高いと思います。母国で風邪になった場合はクリニックによりますが、高くても1,000円程度」(シリア/30代後半/男性)
・「高いです。日本では風邪でも1,000円以上はかかりますが、タイでは半分以下ですむでしょう」(タイ/40代前半/男性)
・「マレーシアの方が受診費が低額で、低収入の人には支払いが除外される場合もある」(マレーシア/40代前半/男性)
・「日本の方が高いが、保険制度があるのはすばらしい」(インド/30代前半/男性)
・「母国では無料ですので日本の方が高いです」(スペイン/30代前半/男性)
・「日本の方が絶対高い。風邪をひいてもロシアの医療機関は受診費が無料。薬ももっと効果的でドラッグストアでも処方箋なしで強い薬が買える」(ロシア/20代前半/男性)
・「高い。ポーランドでは保険が100%カバーする」(ポーランド/30代前半/男性)

日本の方が安い

・「とても安いです! アメリカは風邪なんかのためにクリニックに行く人が少ないと思います。1回で1万円くらいかかっちゃうと思います」(アメリカ/30代前半/女性)
・「日本は保険があるので、エジプトより安いです。エジプトでも薬局で普通に薬を売っており、風邪をひいても薬局の薬剤師に症状を伝えれば、合う薬を勧めてくれます。ただし、重い病気の場合は、医者に行くように勧められます。エジプトは会社でフルタイムとして仕事してないと保険がないので、本当に困ります。自費だとすごくお金がかかります。例えば、給料が3,000ポンドとします。3,000ポンドは一人暮らしでぎりぎりで生活できる金額ですが、風邪になった際に自費でよい病院に行く場合は、受診費+検査代+薬代で300+350+70ポンドほどかかります。ほかの病気だともっとかかりますが、いい保険に入ってる場合は、80%オフです」(エジプト/30代前半/女性)
・「日本の方が安いです。風邪の診察で比較すると、日本は1,000円くらいで、ペルーは3,000円くらいでしょうか」(ペルー/40代/女性)

その他

・「日本の方が高いですが、国民保険があるから最終的には大体同じくらいです。香港の費用は大体5,000円です」(香港/20代後半/男性)
・「母国では健康保険がだいたい全額をカバーするので病院や医者でお金を払うことはほとんどありません。保険料はそれなりに高いですが、気軽にお医者に行けて受診費を気にしません」(ドイツ/30代前半/男性)
・「ハンガリーは税金が高いから医療費は安いけど、一般的にはあまり質がよくない。日本がその逆ですね。風邪の場合だとハンガリーで1,000円程度かな(診察と薬合わせて)」(ハンガリー/30代後半/女性)

■総評

今回回答してくれた外国人たちの中では「日本の方が医療費が高い」とする意見が多かった。中には税金や保険によって、医療費が原則としてタダになるとするコメントもいくつかみられた。また、トータルでみれば母国の方が安い(日本の方が高い)が、特定のケースにおいては日本の方が安くすむ場合があるとの意見も少なくなかった。

保険に加入していれば、日本人であれ外国人であれ医療費の支払いに関してそこまで心配をする必要は基本的にないだろう。落とし穴があるとすれば、海外旅行などの短期滞在時における国外での医療・治療行為。アメリカのニューヨークでは初診料で数万円の請求を受ける場合もあるため、海外旅行時には治療費をカバーする旅行保険に加入しておいた方が賢明だろう。

※写真と本文は関係ありません

調査時期: 2017年7月23日~2017年8月23日
調査対象: 日本在住の外国人
調査数: 20名
調査方法: インターネット応募式アンケート