WOWOWで10月21日からスタートする東野圭吾原作の連続ドラマ『片想い』は、"ジェンダー"を題材に、30代半ばとなった元アメフト部の同窓生たちがそれぞれの心情や立場でもがき苦しみ、希望を追い求める姿を描いたミステリードラマ。WOWOWドラマ初主演となる本作で、性同一性障害を抱えた主人公・日浦美月を演じた中谷美紀に話を聞いた。

中谷美紀
撮影:舞山秀一 ヘアメイク:下田英里 スタイリング:岡部美穂

――まず今回、美月を演じるにあたって取り組まれたことがあれば教えてください。

美月は性同一性障害でホルモン治療をしているという設定ですが、役作りとはいえさすがにホルモン投与までは出来なかったので、筋トレをして撮影に臨みました。芝居的には単純ですが、座った時に少し足を開いてみたりとか、何か器を持つ時に指を開いて持ったりとか、そういった仕草で男性らしさを表現できるよう心がけました。

――役作りの上での苦労はありましたか?

男として声を発することにコンプレックスがあったので、これはなかなか簡単にはいかないと思い、ボイストレーニングに行きましたね。できればセリフが一言もなかったらいいのに、と思ったこともありましたけれど(笑)。でも、それだけではやはり役に気持ちが追いつかなかったのも事実でした。美月のセリフに「どうあがいても本当の男性にはなれない」という言葉があるのですが、改めてその時、美月と自分の思いが重なったような気がしました。そういった私自身のもどかしさも含めて美月を演じたつもりです。

――社会の目、自分自身との葛藤など、いろいろな思いが込められた役でもあると思いますが、その中でも中谷さんが特に意識したことは何でしょうか。

一番意識したことは、社会が自分を認めてくれないという気持ちもさることながら、自分自身が自分を認めきれていないという「自己肯定感の低さ」でした。美月が両親に自分の存在を認められずに育ったというのは、彼女が生きて行く上でやはり大きな足枷になっているのではないでしょうか。

――ドラマ全体の感想についてはいかがですか。

何よりも展開の先が見えないのが、さすが東野圭吾さんの作品だなと思います。性同一性障害の問題、大学時代のアメフトチームの友情、男女の性別を越えた愛情、そしてミステリー、トリックが複雑に絡み合い、ドラマをご覧になっても次が知りたくてたまらないと思います。

――一方で、本作は「多様性」についても考えさせられる内容になっていると思います。

現代においても、どうしても大多数がマイノリティーを排除してしまうことはあるでしょう。でも、その一方で人の好みはどんどん多様化し、選択肢もどんどん広がってきている。そういった意味では、マイノリティーの方々も堂々と社会で活躍できる時代になったらいいと思います。