※2011/06/02掲載記事の再掲です

“行動を起こすことで、未来が切り開けます。ぜひ新しい一歩を踏み出してみてください”と、「気持ちを伝えて傷つくのが怖い」、「相手に嫌われてしまうのではないか」と悩む相談者に、私はいつもこの言葉を贈ってきました。しかし、“アクションを起こさない方がうまくいく”ことももちろんあります。今回はそのようなケースについてご紹介します。

踏みとどまるのが吉のケース

それは、次のような場合が挙げられます。

・メールを送ったのに、なかなか返信が来ない。そこで「どうして返してくれないの?」と催促するメールを送る。

・告白の返事待ちで、まだ数日しか経っていないのに、「それで、答えは?」と相手を急かすような連絡をする。

・相手が自分から離れてしまうのではと心配になり、不安を抑えられずに気持ちをぶつける。

・恋人と口論やケンカをしたとき、「もういい。これ以上やっていけない」などの別れをにおわす一言を告げる。

・別れ話で「可愛さ余って憎さ百倍」となり、相手にたまっていた怒りを爆発させる。

どれも自分のたまった気持ちをぶつけてしまうケースです。いてもたってもいられない衝動から来ています。そして行動を起こしたことで、致命的な結果を生み出すこともあります。致命的な結末を迎えたときときに、“地雷を踏む”と言うことがありますが、それはまさに冷静さを失って発した言葉により、信頼関係にヒビが入り、取り返しがつかなくなることを指しているのではないでしょうか。

私も何度もそれで失敗した苦い経験があります。だからこそそのような場合は、あえて待ってほしいと思うのです。自分の気持ちを抑え、一歩引く努力をする。メールを送りそうになったとき、思いをぶつけそうになったとき、怒りが爆発しそうになったとき。自分に“待った”をかけるのです。

この“待った”がうまくいけば、状況が好転することだってあります。

実例でご紹介

私に寄せられた相談から一例をあげてみましょう。

『私と彼は付き合って1カ月。彼はいつも急がしい人で、私がメールを送ってもいつも返信はなかなかこない。とても不安でした。ついに我慢に限界がきて「私の気持ちを分かってる? 私のことどう思っているの?」と、投げかけたところ、「急がしくて相手をせず、ごめん。もう少し経ったら仕事も落ち着くからそれまで待って欲しい」と言われました。まだ不満でしたが、自分の気持ちを伝えたので、彼を追い詰めないためにも、待つことにしました。

一人の時間は辛いものでしたが、忍耐を重ねた甲斐がありました。1週間後、彼から連絡がくるようになり、デートの約束もして、私のことを真剣に考えてくれるようになりました。もしもあのときに、「何よ! 私の気持ちも知らないで! 私だって毎日急がしいのに時間を作って連絡してるのに、自分勝手すぎるよ! もうやっていけない」なんて、一方的な感情をぶつけていたら、関係は終わっていたのかもしれません。

彼は本当に余裕がない時期だったのですね。相手を信じて待つことって、うまくいかないときこそ大切なのだと強く実感しました』

お分かりいただけたでしょうか。

好きだからこそ期待して、「こうして欲しい」という欲求が強くなるものですが、他人の心は自分の思い通りにはならないものです。この相談例からは、相手の事情をくみとり、信じて待つことで築かれる信頼関係の大切さを学ぶことができると思います。

相手を信じて待つスタンスによって、“待てば海路の日和あり”を実感できる可能性が高まるのです。

文●TAKA氏●

筆者プロフィール:TAKA氏
地方公務員として勤務する傍ら、ストレス発散や心の悩みを和らげるための憩い場を提供するリラクゼーションサイト「ラブステ」を運営中。恋愛に不器用な方や、孤独や不安に苛まれて明日を見失っている方を対象に、サイト内の相談所やメールを通じて、相談も受け付けている。自身の経験と傾聴のスタンスをもとに、6年間で約500名の相談者と対話した実績を持つ。