※2011/02/15掲載記事の再掲です
本当は大好きな恋人なのに、思わず意地悪な言葉を投げかけてしまったり、冷たい態度を取ってしまい、後悔した経験はないだろうか。そんな、気持ちとは裏腹な反応をしてしまうとき、脳ではどのような作用が働いているのか。医学博士であり『女脳はまっすぐしか走れない』の著者でもある米山公啓先生に伺った。
期待を裏切られたときに起こる反応
米山先生は、相手に求めていた反応を得られないときに、心にもない意地悪な態度を取ってしまうことが多いと言う。たとえば、「一緒に行きたいね」という反応を期待しながら、新しくオープンしたレストランの話をしたのに、「そうなんだ。行ってみれば」という素っ気ない反応が返ってきたとする。
このようなとき、期待を裏切られたような感覚を持ってしまい、ついつい「会社の先輩に誘われてるから行ってみる」のように、ありもしない異性からの誘いを口にしてしまうなど、相手が嫌がる反応をしてしまうのだ。
優先順位が低いと感じたときに起こる反応
また、相手にとって自分のポジションが思っていたより低いと感じたときにも、意地悪な態度を取ってしまうと米山先生は言う。たとえば、自分は仕事の都合もつけて楽しみにしていたデート当日に、お客様との飲み会が入ったからとドタキャンされてしまったとする。
お客様との飲み会が自分とのデートより優先されることへの落胆と、楽しみにしていた予定が思い通りにならなかったことへの不満が相まって、仕方がないことと分かってはいても「私との約束は優先順位低いよね」のような嫌みを言ってしまうのだ。
自分と同じ感覚を持って欲しいと期待している
私たちは恋人には自分と同じ感覚を持ってほしいと期待しているものだと言う。「恋人が自分の意見に同意し共感してくれると、脳内で快感ホルモンのドーパミンが分泌され気分は高揚します。さらに、自分は間違ってなかったという自己評価も高まりますので、自己満足にもつながります」(米山先生)
反対に、期待していた反応が帰ってこないときは、ドーパミンが分泌されず、不愉快な気持ちになったり、それが怒りやストレスにつながったりしてしまう。「このストレスや怒りの蓄積が、思わぬ場面での心にもない言葉につながったりする場合もあります」(米山先生)
先の例では、「新しいレストランがオープンしたのなら、一緒に行きたい」、「相手はお客様と言っても仕事じゃなく飲み会なんだからデートを優先」という感覚を相手にも期待していたのだ。もし期待通りの反応が帰ってきていたとしたら、ドーパミンの効果から幸せ指数が高まっていただろう。
自分の意地悪に気付いたときには
もし、自分が恋人に対して意地悪な反応をしていると気付いたときにはどうすればよいのか。
相手に対して嫌な態度を取ってしまうのは感情を司る脳内の扁桃体の仕業。これに対し感情を制御するのが大脳皮質。この扁桃体が司る意地悪な態度に、大脳皮質が冷静な判断ができるように働きかけていると言う。
「たとえ相手に100%非があったとしても、嫌な態度を取ろうとする意識と、人に対しそんな態度を取ってはいけないという理性が脳内では戦っていますので、自分が意地悪な態度を取っていると感じたときは、この理性を応援する意識を持てば良いのです」(米山先生)。
意地悪な気持ちになっていることを自覚し、なぜこんな嫌な気持ちになっているのかを冷静に考えることができれば、理性が徐々に勢力を強める。そこで、これは自分の感覚に相手を当てはめようとしただけと気付けば、自分の態度を反省することもできる。そして冷静になれたときに、「さっきはごめんね。意地悪だったよね」の一言で反省は伝わるものだ。
心にもない意地悪をしてしまうのは、大好きな気持ちの裏返し。自分の気持ちを上手にコントロールできるようになりたいものだが、できなかったときは冷静になるように努め、相手へ素直な言葉で反省を伝えるとよい。それをきっかけに、もっと二人の感覚が近づくこともあるはずだ。
文●Sala Yamada(エフスタイル)