※2010/10/20掲載記事の再掲です
大好きだった人に振られてしまったとき、言葉では表わせないくらいの衝撃ですよね。片思いでの失恋であれ、交際していた恋人に告げられたケースであれ、「別れ」はもっとも受け入れ難くない現実を突きつけてきます。そして後に残された日々は、絶望と孤独になります。
もしかしたら、好きだったあの人は、自分を振ってから間もなくして、新しい恋人やほかに好きな人ができてしまったかもしれません。振られた自分はそのとき、その瞬間から、たった一人取り残されているのかもしれない。
相手のことを忘れたくても忘れられない、でももうあの人の心は戻ってこない。あの日々はなんだったのだろうか。自分はなんて価値のない人間なんだろうか。独りになって、自己卑下、自己肯定感の瓦解を繰り返し、激しい心の葛藤から、地獄のような日々を這いつくばるように過ごしている。 自分に別れを告げてきたあの人は、それまでは悩み、苦しんだのかもしれませんが、想いを吐露したことで、一方的に心にけじめをつけて、気持ちを切り替えて、新しい出会いや環境に身を投じていることでしょう。
振られた側と、振った側、流れる時間は違うのか
アインシュタインの「相対性理論」ではありませんが、振られた側と、振った側によってこれほど時間の流れの速度が異なるとは、振られた側からすれば、あまりにも理不尽すぎます。相手にたいして愛憎の気持ちすら、芽生えてくるかもしれません。自分だけこんなに苦しんでいるのに、あれだけ好きになったのに、そんな自分を拒絶した相手が許せない!
不完全燃焼のまま強制終了させられてしまった想いが行き場を失って、憎悪の感情に支配されるようになる方もいるでしょう。相手にたいする想いが強ければ強いほど、裏切られたと感じたショックから、憎しみの念で心がいっぱいになるかもしれません。自分だけ取り残されて、未来に進めずに塗炭の苦しみを味わっているのに、幸せそうに別の人生を過ごしている相手が許せない。相手も自分と同じ目に遭えばいいんだ、と。 目を背けていた猜疑心や愛憎の気持ちが、マグマのように爆発し、相手の不幸を願うような感情に苛まれるかもしれません。
それでもやっぱり、忘れられないのです。相手を恨むことで解放されたような気持ちになるどころか、ますます孤独感や虚無感が募る一方になる方が多いのです。「好き」の反対は「嫌い」ではなく、「無関心」だとよく言われていますが、そうやって相手にたいして意識をめぐらせているかぎり、相手への想いが完全に拭いきれていないのです。
失恋を吹っ切るメカニズムとは
かくいう私も、度重なる失恋のなかで、自分を振った相手にたいして憎しみの感情を抱いてしまったケースが何度かありました。認めたくなかった自分の恐ろしい感情でしたが、ストーカーの気持ちが共感できたような錯覚にも陥りました。
理性だけが自分を抑制できましたが、一歩間違えれば、彼らのように社会の道理からはずれてしまう行動を取っていたかもしれない。とにかく凶暴化した自分を律するのに必死でした。そんな汚れた自分を、周囲の人間に見せるわけにはいきません。 周りを見ても、振られたからといって、相手に憎しみの感情を抱いたことがある人間は皆無でした。ゆえに自分はなんて最低な人間なんだろうと、自己卑下を繰り返していました。
後になって、世の中の失恋から立ち直った人たちの体験談を聴くと、「愛憎」は失恋から立ち直るためのサイクルのなかで、欠かせないものであることを知りました。相手を恨むような感情を乗り越えたときに、想いが昇華できて、吹っ切れるというメカニズムがあったのです。
振られた側だけがなんでこんなに悲しい思いをしなければならないんだ。振った側の人間だけが、充実した世界に勝手に進んでいき、自分がみじめで仕方がない。こんなことなら、あの人に出会えなければ良かったのに。告白なんてしなければよかったのに……。
こんな切ない思いに支配されて、人間不信になったり、自信喪失している皆さんにたいして、贈りたい言葉があります。それは、自分を振った人間も、今まさに苦しんでいる最中かもしれないからです。 「え!? 自分と一緒にいるのが嫌だったから、好きではないから、離れたくて振ったはずなのに。自分の思い通りになった人間がなんで自分の決断に苦悶する必要があるんだ。そんなわけないだろう」と考えることでしょう。
振られてしまった側には、信じられない言葉に聴こえるかもしれません。でも、振ってしまった側、別れを告げた側も、自分の出した答えに責任を持つために、一人で必死に闘っているかもしれないのです。 たしかに、一般的に振った側は、答えを出す前までに、悩みに悩んで、相手の人間性を冷静に分析したりして、「この人とは合わない」というような結論に達するわけですが、後から「やっぱり自分が選んだ答えは間違っていた」と気づくパターンもあるのです。
振った側の心情を理解してみる
自分にとって最適だと思われる答えを導き出したのちに、離れてみたことで相手の大切さに気づいたり、じつは自分の感情が一時的なもので、絶対的ではなかったこと気づくこともあるのです。また、その後いろいろな人間と出会う中で、「やっぱりあの人が一番自分に合っていたんだな」と気づくこともあるのです。
今挙げたケースは、別れを告げたことにたいする後悔の例ですが、たとえ別れを後悔していなくても、自分を好きになってくれた相手を傷つけてしまった罪悪感から、自責の念で胸が支配されているかもしれません。 振られた人間からは、想像がつきにくいものですが、告白を断った後、振ったあと、相手の態度が一変して冷たくなったり、よそよそしくなるのには、そういった相手なりの事後処理の感情が背景にあるからです。
その状況を理解せず、以前のようなテンションで迫られると、振ってしまった罪悪感がますます募り、もう本当に関わりたくないと、完全な縁切りを決断させてしまうのです。そうなると、復縁や再告白などのセカンドチャンスはすべて潰えてしまいます。 よって別れた直後には行動を起こさず、冷却期間を置いた方が、今後友達関係を築くにしろ、再度アプローチするのにしろ、可能性が高くなると思います。
次回はそれでも相手を恨まずにいられない方へのメッセージです。
文●TAKA氏 写真●ペイレスイメージCopyright(C)2010 paylessimages,Inc.All Right Reserved.
筆者プロフィール:TAKA氏
地方公務員として勤務する傍ら、ストレス発散や心の悩みを和らげるための憩い場を提供するリラクゼーションサイト「ラブステ」を運営中。恋愛に不器用な方や、孤独や不安に苛まれて明日を見失っている方を対象に、サイト内の相談所やメールを通じて、相談も受け付けている。自身の経験と傾聴のスタンスをもとに、6年間で約500名の相談者と対話した実績を持つ。