日本では近年、働き方改革の1つとして「フレックスタイム制」を導入する企業が増えている。朝の混雑緩和や柔軟な働き方に結びつく取り組みとして期待されているが、では、世界の出勤事情はどうなっているのだろうか。在日外国人20名に、自国の企業は「定時出社」と「フレックス出社」のどちらが多いか聞いてみた。
外国人に定時出社とフレックス出社、どっちがいいか聞いてみた
Q.あなたの国では毎日同じ時間に会社に行く「定時出社」と、好きな時間に出社する「フレックス出社」どちらを採用している企業が多いですか? また、あなたはどちらで働きたいですか?
各国とも「定時出社」の企業が多い結果に
■「定時出社」で働きたい
「定時出社する会社が多いです。他の会社の時間を合わせれば、仕事がスムーズにできるので、定時出勤がいいです」(カンボジア・20代前半・男性)
「シリアでは定時出社がほとんどだと思います。定時出社の方が時間管理もできるという面で、フレックス出社より良いと思います」(シリア・30代後半・男性)
「定時出社がほとんどです。時間が決まっているので定時出社のほうがいいです」(インド・30代前半・男性)
「定時出社の方が多いです。僕は定時出社の方が好きです。定時だから自分の生活をちゃんと計画することができます」(香港・20代後半・男性)
「定時出社が基本です。自分から見ると、社員に対して少しでもきつくするのは良いと思う為、定時出社の会社が良いでしょう」(スペイン・30代前半・男性)
「定時出社の方が多いです。私は定時出社で働きたいです」(エジプト・30代前半・女性)
「定時出社が多いと思います。フレックスタイムは、エリートのため…というイメージです。私はフレックスタイムがいいと思いますが、正直自分がいつまでも会社に行かなさそうだから、やっぱり定時出社でいいかな」(アメリカ・30代前半・女性)
■「フレックス出社」で働きたい
「定時出社が多いです。私はフレックス出社で働きたいです」(タイ・40代前半・男性)
「定時出社のほうが多いです。私はフレックス制の方が好きです」(ドイツ・30代前半・男性)
「定時出社の企業が多いと思う。私はフレックス出社の企業で働きたい」(ロシア・20代前半・男性)
「定時出社、残業なし、自分はフレックス出社で働きたい」(ポーランド・30代前半・男性)
「定時出社がほとんど。フレックスはあまりないと思います。フレックスで働けたら最高ですね。心の余裕ができそう」(ハンガリー・30代後半・女性)
「定時出社です。フレックス出社がいいです」(ペルー・40代前半・女性)
「定時出社が多いと思います。正確に言ったら、定時出社が基本ですが、申請したらフレックス出社をさせてくれる企業が増えてきて、今時フレックスタイムができる企業が多数になっていると思います(特に子供の世話や介護のために出社時間が遅れてしまう女性のために)。私もできればフレックス出社で働きたいです。自分のリズムで仕事ができて、プライベートがバランスよく続いたらもっと仕事にエネルギーを注げると思いますから」(イタリア・20代前半・女性)
「ルール的に定時出社だけど、みんなは出社時間についてとてもゆるいです。交通混雑や台風など、まともな理由で遅れる人たちもいますが、遅刻は頻繁でなければ多少は見逃される。どっちが良いか選ぶなら断然フレックスがいいです。時間というものにこだわらず仕事に集中したいです」(フィリピン・30代後半・女性)
「定時出社の方が多いと思いますが、通勤を考えるとフレックスで働きたいです」(オーストラリア・30代後半・女性)
「母国では定時出社の会社が多いです。私はフレックス出社で働けたら嬉しいです」(スペイン・40代前半・女性)
総評
在日外国人に「定時出社」と「フレックス出社」のどちらを採用している企業が多いか聞いたところ、なんと全回答者の国で「定時出社」の企業の方が多い結果となった。どちらがいいかを聞くと、定時派が7名、フレックス派が10名という結果に。女性の多くがフレックス出社を選択したのも特徴的だった。
定時派は、「他の会社の時間と合う方が、仕事がスムーズにできる」「時間の管理ができる」「自分の生活を計画することができる」など、時間がきちんと決まっていることで、仕事もプライベートもスムーズに計画的にこなせると考える人が多かった。一方、フレックス派は、「自分のリズムで仕事ができる」「時間にこだわらず仕事に集中できる」と、時間に縛られないことで、かえって仕事がスムーズにできるという意見。両者の考え方は一見真逆のように見えるが、時間の使い方が人それぞれであって、仕事に対する姿勢は同じなのではないだろうか。
日本でもまだまだ定時出社が多いものの、徐々にフレックス出社を採用する企業も増えてきている。その背景にはさまざまな社会問題がある。育児と仕事、介護の両立に苦労している人。外国人も驚く「満員電車」が象徴するような朝の混雑。その満員電車に子どもを乗せて通勤する人もいる。闘病や通院をしながらの仕事に悩む人も…。イタリアでも「子供の世話や介護のために出社時間が遅れてしまう女性」がいたり、フィリピンでは「交通混雑や台風などによる遅刻」など、他国でも同じような問題を抱えているようだ。
もちろん、企業にとってはデメリットもあるだろう。しかしながら、少子高齢化が加速する日本では、柔軟な働き方の促進は急務と言えるのではないだろうか。フレックス出社の導入が、こういった問題を緩和する一助となることを期待したい。