2016年に脱・家電見本市を宣言し、IoTをメインとした展示会へと衣替えをした「CEATEC」。今年度もそのコンセプトは変わらず「日本の成長戦略や未来を世界に向けて発信する"Society 5.0"の展示会」をテーマに据えている。
パナソニックの取締役会長で、CEATECを運営する電子情報技術産業協会(JEITA)の会長でもある長榮 周作氏の基調講演も「スマート社会『Society 5.0』に向けて」と題し、CEATECやパナソニックの取り組みを元に、日本の目指す新しい社会コンセプトを提案していた。
長榮氏は、気候変動と資源不足・人口構造の変化・主要国の低成長など、さまざまな社会問題が世界潮流として覆っていると説明。社会問題が複雑化するなかで、その解決の糸口となるのが「さまざまなもののデジタル化」だという。現在世界ではIoTや5G、AIとった技術を背景とした第4次産業革命が進行している。特に消費市場ではシェアリングエコノミーが到来しており、今までと違った社会コンセプトの市場「Society 5.0」が形成されつつある。
長榮氏は「情報化社会の次に来る超スマート社会は、必要なものやサービスを必要な人に、必要なとき、必要なだけ届けることが重要となる」という。日本政府もこの流れを加速させるべく、6月に「未来投資戦略 2017 」を閣議決定しており、その表題にも「Society 5.0の実現に向けた改革」と記している。
IoTの普及によってさまざまな機器が繋がっていくが、この繋がるという意識が異業種企業とのコラボレーションを促進しているのも特徴の一つだろう。長榮氏はこうした時流に合わせて「JEITAの会員、会費制度を見なおし、異業種参画を促進している」と語る。実際、かつては参加資格外だったトヨタ自動車やソフトバンクといった企業が会員として加わっている。
またCEATEC JAPAN 2017では、インドパビリオンを初めて設置。海外のスタートアップ企業に日本への市場参入やパートナー発掘の場を提供している。そのため会場を回っていても、数年前までの「大手家電メーカーの新製品お披露目会」といった様相から、大きく変わっていると感じ取れた。
「Society 5.0」をいち早く実現したFujisawa SST
変化しているのはJEITAやCEATECだけではない。長榮氏はパナソニックも大きく変わっていることをアピールした。パナソニックと聞くと家電メーカーのイメージが強い。来年で創業100周年となる世界でも有数の老舗家電メーカーだが、現在では家電と住宅、車載、B2Bと大きく4つの事業領域に分かれており、家電の売り上げは20数%しかないという。
なかでも注目なのが住宅事業だ。単に住宅を建てたり売るだけでなく、家電や住宅サービスの融合で新たな暮らし方を提案。家電を住宅のつながりで生まれる新たな価値を創造しようとしている。
その一例が神奈川県藤沢市の「Fujisawa SST(サスティナブル・スマートタウン)」。パナソニックの藤沢工場跡地6万坪(東京ドーム4個ぶん)を利用してつくられた街づくりのプロジェクトで、戸建て400戸、集合住宅600戸、合わせて1000戸、3000人が暮らしている。