既報のとおりMicrosoftこのほど、「Windows Store」における楽曲購入とダウンロード、「Groove Music Pass」の提供を2017年内で終了すると発表した。Groove Music Passはストリーミングもしくはダウンロード再生で音楽を楽しむサブスクリプション型サービス。Zune Music PassからXbox Music Passと改称を重ね、欧米やオーストラリアでサービスを展開して来たものの、日本上陸を果たすことなく終了となる。
Microsoftは2017年10月2日(現地時間)にSpotifyとの提携を発表。「Grooveミュージック」アプリを使用してGroove Music Passの楽曲コレクションや、再生リストをSpotifyへ移行することを推奨している。Groove Music Pass利用者は、広告の非表示やオンライン再生が可能な有料サービス「Spotify Premium」の60日間無料使用が可能になるという。
「Windows Store」で購入した楽曲については早めにダウンロードとバックアップの必要があるが、日本国内のユーザーにとって、Groove Music Pass終了に伴う影響は軽微だ。UWP(ユニバーサルWindowsプラットフォーム)アプリケーションのGrooveミュージックがなくなる訳でもない。強いて言えば、SpotifyがOneDrive経由のストリーミング再生に対応していないことぐらいだろうか。その場合もダウンロードした楽曲をOneDriveにアップロードしておけばよい。
今回の件で思い返すのが、2013年12月に日本国内でサービスを開始した「Xbox Music」だ。Windows 8.1に標準で搭載されたWindowsストアアプリ「ミュージック」を利用して約3,000万曲の楽曲を有料購入できるというものだったが、その際も海外では展開中だったXbox Music Passについて当時の日本マイクロソフト担当者は「まずはダウンロード型から展開し、(Xbox Music Passについては後々)検討したい」と説明していた。
Windows 10リリースを境にMicrosoftはXbox Musicを"Groove"としてリブランドし、楽曲購入はWindowsストアに統合させた。Spotifyは、PCよりもスマートフォンプラットフォームを重視しているが、前述したUWP版SpotifyはPC専用であり、モバイル版はWindows Phone 8.1対応のまま。
Spotifyの担当者は「Spotify for Windows Phoneはメンテナンスモードに入っている」と利用者に対して明言しているので、Windows 10 Mobileユーザーはデバイスをまたいで同一のユーザー体験を得るのは難しい状況だ。
楽曲コンテンツビジネスがMicrosoftの売り上げにどれだけ寄与しているか、同社の決算報告書から読み取れないものの、iTunesなど他社サービスの後塵を拝しているのは誰の目にも明らかである。そのためMicrosoftは、楽曲コンテンツビジネスを収縮させる苦渋の決断を下した。
スマートフォン、楽曲ストリーミングサービスとB2Cビジネスで敗戦を重ねる同社は、「AIファースト」を標榜しつつ、クラウド系B2Bビジネスに傾注していくことだろう。長年コンシューマーPCの覇者であった同社を知る筆者には少々寂しい気分だ。
阿久津良和(Cactus)