※2011/03/06掲載記事の再掲です
コンビニの店長の収入はいったいどのくらいもらっているのでしょうか。下記のような条件設定をして、コンビニ店長の世帯収入を算出してみました。
(設定)
年商:1億5,000万円
平均粗利率:29%
対売上高人件費率:6.5%
本部へのロイヤルティー:粗利配分40%
店舗の土地建物:3,000万円
世帯収入であり、店長夫婦が共働きをしているという条件です。算出結果としては、ザックリと計算すると、年収700万円となりました。この年収が多いか、少ないか。皆さまはどのような感想を抱かれるでしょうか?
とは言え、一般的なサラリーマンの平均年収が400万円台であることを考えると、それほど悪くない収入だとも考えられます。ただし、大手コンビニチェーンに加盟した脱サラ店長に感想を聞いてみると、大半の店長から「事業リスクと比較すると厳しい収入」という反応がありました。
当然ですがコンビニは24時間、365日営業です。また、この対売上高人件費比率を達成するためには、店長夫婦の勤務シフトは厳しいものとなり、夫、妻それぞれ7時間程度は毎日シフトに入る必要が出てくる。家族旅行、子どもの学校行事などへの参加も厳しいことを覚悟しなくてはいけません。
サラリーマンのように職業や収入が安定しているわけでもないのにかかわらず、事業リスクを追うほどのリターンが期待しがたいのも事実。起業するわけなので、事業が成功した場合は、収入もサラリーマン時代の3倍以上は欲しいところですが、一般的なコンビニ一店舗の店長ではそれほど見込めません。ただ、店舗売上が大きくなれば(年商3億円)年収も2,000万円を超えることも可能になります。
では、売上を上げるには、どうする必要があるのでしょうか? コンビニ経営は、1に立地条件、2に店舗・駐車場面積、3に加盟チェーンブランド、4に店舗経営努力です。
一生懸命経営努力を積み重ねて5%の売上効果が上がれば十分。そうなると、売上を上げるためには、「より良い立地」に「より大きな店舗」を出店することが必要となってきます。これには、大きな資本が必要です。脱サラ店長ではなかなか厳しい道でしょう。そこで、複数店舗経営に乗り出すことになります。1店舗では1億5,000万円でも、2店舗で3億円。夢の年収2,000万円に手が届く可能性が高まってきます。
ただ、複数店舗運営となると、「マネジメント力」が必要になってきます。2店舗経営となると店舗運営を他人に委ねる必要性が出てきます。自分が店舗にいなくても、順調に営業できる人間を育てる・評価するという能力が必要となります。そもそも、人を採用できるかどうかという問題もあるでしょう。
加えて、よくある失敗パターンとして他人に任せた店舗は店舗営業力がダウンしていき、売上が下がっていくパターンに陥る可能性もあります。ほかの業態でも発生しやすいケースですが、多店舗経営に乗り出したときが危険のスタートになります。リスクヘッジするには、
・信用できる右腕を採用、育成する。
・経費管理を徹底する。
・店舗オペレーションを維持する。
・従業員の適正な評価をする。
が必要で、これらのことが可能となると、年収2,000万円の世界が広がってきます。一コンビニ店長職ではなく、社長業を志した上でコンビニ業に取り組む姿勢が必要ですね。
※この記事は、2008年07月30日~2009年12月18日まで日経ビジネスAssocieにて、連載していたものを加筆・修正し掲載しています。
筆者プロフィール:笠井 清志(かさい・きよし)
船井総合研究所 戦略プロジェクト本部 次長 シニアコンサルタント。
1974年大阪府生まれ。複数の企業にてキャリアを磨き、船井総合研究所の経営コンサルタントとして従事する。コンビニ本部等の多店舗展開チェーン企業へのコンサルティングを中心に活動。クライアント先である「NEWDAYS」の平均日販を日本一に押し上げたことが話題になる。月刊コンビニ(商業界)にて連載を持つほか、著書に『コンビニのしくみ』(同文館出版)や『よくわかるこれからのスーパーバイザー』(どちらも同文館出版)がある。