仮想化専用ストレージ「Tintri VMstore」を展開するティントリは9月20日、スケールアウト型のオールフラッシュストレージの新シリーズ「Tintri EC6000 オールフラッシュシリーズ」を発表した。そこで、これに合わせて来日した米TintriのCTO & Co-Founderのキーラン ハーティ氏に、同社の今後の戦略について話を聞いた。
フラッシュファーストや自動QoS、VM-Awareなどさまざまな独自のコンセプトと技術で、仮想化専用ストレージ市場をリードしてきたティントリ。そうしたティントリの技術開発を統括するのが同社の共同創業者であり、CTOであるハーティ氏だ。
ハーティ氏は、ティントリを設立する以前は、VMwareの研究開発部門副社長としてESX Server、vCenter、VMwareのデスクトップ製品などの製品開発の責任者を担当した。VMware以前は、TIBCOでチーフサイエンティスト、Visigenic/Borlandで研究開発部門の副社長を務めている。トリニティ・カレッジ・ダブリンでコンピュータサイエンスの修士号、スタンフォード大学で電気工学の博士号を取得した根っからの技術屋だ。ティントリ独自のコンセプトの数々は、彼の頭の中から生み出されてきたものだ。
9月20日に発表された新製品「EC6000シリーズ」は、オールフラッシュのT5000シリーズ、ハイブリッドモデルのT800シリーズに後継にあたる。ECシリーズのECは、Enterprise Cloud(エンタープライズクラウド)を意味しており、パブリッククラウドと同じ俊敏性や拡張性を企業のデータセンターで提供することを目指している。
新製品発表の会場でハーティ氏は、Enterprise Cloudを構成する4つの柱として「Autonomous Operation(自律運用)」、「Analytics(分析)」、「Automation(自動化)」「Self-Service(セルフサービス)」を挙げ、今後のデータセンターの将来像を示した。
記者発表の翌日には、ユーザーイベント「Tintricity 2017 Tokyo」を開催し、ハーティ氏自らがその先のビジョンと、新機能をロードマップも解説した。その将来像に向けてティントリはどんな新機能や機能強化を図っていくのか。ユーザーイベントで明かされた情報を含め、ハーティ氏に行ったインタビューの内容をお届けしよう。
Enterprise CloudのポイントはAPI
--あらためて、Tintri製品の強みは何なのかを教えてください。
ストレージがVMを認識するという点が最大の強みです。市場には、EMCやNetAppのようなトラディショナルベンダーと、Pure StorageやNimble Storage(HPE)のような新興ベンダーがいます。ただ、いずれにしてもLUNやボリュームといった昔ながらの管理体系にこだわっています。
コンピューター、ネットワーク、ストレージはかつて物理環境で管理していました。今はネットワークもVMware NSXで仮想化できますし、ストレージもそうです。すべてが仮想化されているのに、他社はかつてのように物理的な管理体系を持ったストレージを仮想化されたサーバやネットワークにつないでいる。そこが大きな違いです。
技術的な強みという点では、アナリティクス、オートメーション、QoS、セルフサービスといった機能が他社との差別化のポイントになっています。
--ユーザーがEnterprise Cloudを実装していく上でのポイントは何でしょうか?
*Enterprise Cloudとは、パブリック クラウドと同じ俊敏性や拡張性を提供するように設計された、企業のデータセンターに設置されるクラウド インフラストラクチャのことで、同社はこの分野に注力すること明らかにしている。
大きなポイントはAPIです。Amazonのジェフ・ベゾス氏はかつて、プラットフォームで成功する最大の要素の1つにAPIの公開を挙げました。エンタープライズストレージもそうです。APIによってさまざまなWebサービスをシステム上にインプリメントできなければ、現状のエンタープライズ環境をサポートしていくことは不可能です。EMCやNetApp、Pure、Nimbleは、APIによるインプリメントに完全に対応できていません。
APIがなければ人が手で対応しなければなりません。例えば、VMのスナップショットからレプケーションして適切なQoSをVMに設定したいとします。もし、20個のVMについてスナップショットを取ってレプリケーションしてQoSを設定する作業をAPIを使わずに行っていたら、管理者は悲鳴を上げてしまうでしょう。
--TintriはいちはやくNVDIMMに対応してインライン重複排除・圧縮の効果を高めるなど、ハードウェア面での優位性があったように思います。しかし今は、アナリティクスやAIチャットボット対応など、ソフトウェア機能の進化が著しいと感じます。今後もソフトウェアの強化に注力するのでしょうか?
そうですね。今はソフトウェアエンジニアとハードウェアエンジニアの比率は9:1です。良いハードウェアを開発することは性能や信頼性確保で重要です。ただ、サービスの価値を高めるのはソフトウェアです。スマートフォンがそうです。ハードウェアは重要ですが、よりバリューを出すためにはソフトウェアの力は欠かせません。もちろんハードウェアはお客さまの要望を聞きながら、より良いものを作っていきます。ただ、これから我々が注力するのはソフトウェアです。