※2010/02/08掲載記事の再掲です
仕事上の手紙やメールに使う「御中」は広く使われているが、「正しい使い方を説明しろ」と言われたら、怪しい人も多いのではないだろうか。「御中」のほかにも、「様」、「宛」、「行」、「各位」など、ビジネス文書を作成する上で必要な敬称はたくさんある。そんな敬称の常識について専門家に詳しく聞いてみた。
手紙の宛名の下などに付ける「皆さま」という意味の言葉
今回お話を伺ったのは、大学講師・作家、就職コンサルタントとして多くの講座や著書を持つ唐沢明氏。「『御中』は、手紙の宛名の下に付ける単語で、グループ名や会社名の下に付け、個人名の下には付けません。『皆さま』という意味で、『人事部御中』なら『人事部の皆さま』という意味になります」(唐沢氏)。
「様」と「殿」は相手を敬う敬称で、唐沢氏によると昔は「殿」のほうが格式の高いものと考えられていたが、近年では反対に「様」のほうを目上の人に使うケースが増えていると言う。「行」、「宛」は、返信用封筒に記す自分の名前の下に付ける言葉で、返信する人はそれを消して「様」と書き直すのがマナー。
「行」は個人あて、「宛」は団体あてに使うものである。また、「各位」は宛名ではなく文書の冒頭に使う言葉で、複数の人に同時にあてる場合の敬称であり、「気付」は住所の下に付ける“その場所にいる人宛て”という意味の言葉。「御内」は、やや目上の人に対して“あなた”と呼ぶときの敬称とのこと。連名にする場合は、「地位の高い人を先に、二人の名前を書いてそれぞれに『様』を付けます」(唐沢氏)。
うっかりミスに注意! 手紙や文書は必ず読み直しを
敬称の間違いでよく見られるのが、「部長殿」、「各位様」、「○○社御中○○様」などの使い方。「部長」などの役職名はそれだけで敬語表現と考えられるため、「部長殿」では二重敬語になってしまう。「その場合は『○○部長』もしくは『部長の○○様』としましょう」と唐沢氏。
「各位殿」、「御中様」も同様で、「各位」、「御中」だけで複数の人への敬称であるため、さらに「様」や「殿」を付ける必要はないそうだ。自分では分かっているつもりでも、うっかりミスをしやすいのがビジネス文書。「文書を作成したら必ず読み直しを。たとえばマエカブとアトカブや相手の名前の表記など、間違いがないかチェックしましょう」(唐沢氏)。
言葉は時代とともに変化するもの。ただし基本マナーは忘れずに
近年、手紙からメールへとビジネス文書の主流が様変わりしているように、「日本語も時代とともに変化しつつあるものだと思います。ですから敬語も、数学の公式のように絶対的なものではないし、相手や状況に応じて臨機応変に使い分けることが必要なケースもあるはず」と唐沢氏は言う。ただ、「日本人として日本語の常識、敬語のマナーなどは習得しておいたほうがいいでしょうね」とのこと。そう、基本を習得してこそ、臨機応変な使い方もできるのである。
唐沢明:http://akira-dream.com
文●大野夏季(エフスタイル)