外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2017年9月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。
【ドル/円相場9月の振り返り】
9月のドル/円相場は107.318~113.253円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約2.3%の上昇(ドル高・円安)となった。8月末の「ハービー」に続き、大型ハリケーン「イルマ」が米南部に襲来した事や、北朝鮮の水爆実験(3日)などが重しとなり、8日には年初来安値を更新するなど上旬は軟調に推移。
しかし、中旬以降は日米の金融政策の温度差なども意識されて急速に上昇基調へと転換した。米と北朝鮮の「罵り合い」がエスカレートしたものの、徐々に円買いに振れる動きは小さくなった。下旬は、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長が追加利上げに前向きな見方を示した事や、トランプ米政権と共和党指導部が税制改革の具体案を策定した事で米債利回りが上昇する中、ドル高・円安が進み、27日には約2カ月ぶりに113円台を回復した。
【ドル/円相場10月の見通し】
10月のドル/円相場は、昨年まで6年連続で上昇している(月足が陽線)。本邦機関投資家が下半期入りのタイミングで、いわゆる「外モノ投資」を増やす傾向があると考えられている事などが影響しているのだろう。そうした点も含めて、この10月は、日本発の材料がドル/円相場の値動きに影響する可能性がある。米国の経済指標にはハリケーンの影響という「ノイズ」が入る可能性が高く、手掛かりにしにくいという面もある。
日本サイドで注目すべきイベントは10日に告示、22日に投開票される衆議院選挙と、30-31日に行われる日銀金融政策決定会合だ。衆院選は与党(自民・公明)が過半数を確保できるかが焦点であり、仮に政権交代となれば、アベノミクストレード(日本円売り・日本株買い)の手仕舞いによる円高・株安を招く恐れがある。現段階ではその可能性は低いと見られるが、今後は小池東京都知事率いる希望の党の支持率に関する世論調査の結果などにも注意を払っておきたい。
一方、日銀金融政策決定会合では、9月会合で「金融緩和が不十分」として政策の現状維持に反対票を投じた片岡審議委員が追加緩和を提案する事も考えられる。追加緩和が採用される可能性は低いが、少なくとも「出口論」は封印される(との印象が強まる)公算が大きい。なお、米国サイドでは、米連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長人事と、トランプ大統領の税制改革案を巡る議会審議が注目される事になりそうだ。
【ドル/円相場10月の注目イベント】
執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)
株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。
その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya