このAIプレートに対して、なぜ海外からの反響が大きいのか。福田氏に話を伺ったところ、「欧米や中東ではデジタルサイネージに関するビジネスが大きく進んでいる」と日本との違いを指摘する。屋外や映画館や店舗などの商業施設、博物館など学習施設の中で展開されるデジタルサイネージに対しては、海外では接触者の記憶に強く残るインパクトのある体験を追求する傾向があり、投資額も日本とは全く異なるという。加えて、表示するコンテンツの企画力や空間演出のセンスなども進んでいるのだという。

「既存のデジタルサイネージをAIプレートによる空中ディスプレイに置き換えたいというニーズは高い。中には、海外のデジタルサイネージ事業者がクライアントを引き連れて商談に来たこともある。デジタルサイネージ業界全体で“表示して見せるだけ”というユーザー体験からの脱却を目指しているのではないか」(福田氏)

日本においてデジタルサイネージは、企業のマーケティング・プロモーションのなかでブランド認知度の向上やブランド体験の創出などに活用されることが多いが、デジタル化、リッチコンテンツ化が進んでも、実際のところは企業が発信したい情報を一方的に伝える看板広告と同じ役割にとどまることが多い。その結果、情報が溢れている屋外や商業施設の中ではデジタルサイネージそのものが埋没してしまうということになりがちだ。

しかし、ブランド・コミュニケーションは生活者の感性を刺激して心に何かを残すというエモーショナルな側面を持つ。本来であれば、“どうすれば映像に足を止めてくれるか”、“どうすれば心に何かを残せるか”という観点でデジタルサイネージの活用を考える必要があるのではないだろうか。「海外の事業者は“遊び”や“感動”といった体験を重要視してデジタルサイネージを考えている。マーケティング効果ばかりを気にしている日本のマーケターとは対称的だ」(福田氏)

福田氏によると、このAIプレートに関しては海外事業者との交渉が多く、グローバル展開している企業が導入して日本の店舗などに展開するという形で日本国内でも体験できる機会が増えるのではないかとしているが、低価格化・量産化技術が確立したことで今後は日本国内でも事業を拡大していくという。

「AIプレートを導入するにあたっては、コンテンツ制作や店舗設計、IoTなど様々な分野のノウハウが必要になる。今後事業を拡大するためにパートナーエコシステムの構築を推進していきたい」(福田氏)