ナポリタンスパゲティ再ブレイクに伴い、定番のナポリタンから変わり種まで様々なナポリタンが全国各地に登場しているが、北海道函館市には「黒いナポリタン」を提供している店があるという。函館駅から車で20分ほど。観光地からは離れた、店舗と住宅が混在する地区にあるイタリアンとパスタの店「Caldo Calcio(カルド・カルチョ)」だ。
見た目と味のギャップに驚く
店の前には、「HAKODATE イカナポリタン」と書かれたのぼりが2本。もしや、黒いナポリタンとはイカ墨を使ったナポリタンなのだろうか。早速お店に入り、注文してみよう。メニューに目を通すと、それらしい料理はすぐに見つかった。その名も「函館イカナポリタンブラック」(税込1,080円)である。
注文して待つこと約3分。他にお客さんがいない時間帯だったため、あっという間に「函館イカナポリタンブラック」が運ばれてきた。想像していた以上に真っ黒だ。「これは本当にナポリタンなのか。ナポリタンと称した単なるイカ墨スパゲティではないのか」と少々疑いながら、一口食べてみた。
むむっ、これはまぎれもないナポリタン。もちもちした生パスタにケチャップ味のソースがよく絡み、とてもおいしい。試しに目をつぶって食べてみると、かなりスタンダードなナポリタンの味がする。でも、目を開けると実際は真っ黒。この見た目と味のギャップはなかなか楽しい。さらに、よく味わってみるとイカ墨ならではのコクが隠し味のようにほのかに感じられる。
「アイディア賞のナポリタンください」
実はこの「函館イカナポリタンブラック」、5月に開催された「カゴメナポリタンスタジアム2017」でアイディア賞に輝いたお墨付きの一品なのだ(イカ墨だけに)。同大会には全国9ブロックで予選を勝ち抜いた9種類のナポリタンが出場。「函館イカナポリタンブラック」は北海道代表としてエントリーし、審査員からも「黒いのにナポリタン?」と驚きの声が上がった。地元客からもたくさんの応援と祝福の声が寄せられ、観光客も「アイディア賞のナポリタンください」と訪ねてきてくれるという。
「Caldo Calcio」のオーナーシェフ・佐藤悠祐さんが「函館イカナポリタンブラック」を考案したのは、東京から地元・函館に戻って現在の店を開き、しばらく経った今から数年前のこと。ふと「地元で何か面白いことをやりたい」と思い立ち、せっかくならご当地グルメを作ろうと考えるようになったという。函館市民にとって函館の特産品と言えば「イカ」であり、早朝に獲れたイカがその日の朝食のおかずになるほどイカが大好き。
そこで、誰もが好きで同店でも人気がある「ナポリタン」と函館特産の「イカ」を組み合わせてみようとの発想が生まれた。このアイディアを知り合いのシェフに相談してみたところ大いに賛同してくれ、同じく趣旨に賛同する飲食店の仲間集めにも協力してくれた。こうして、2014年にご当地グルメとしての「函館イカナポリタン」が5店舗による競作メニューとして誕生したのだ。
9店舗が独自のイカナポリタンを提供
「函館イカナポリタン」の条件は、函館特産のイカと地元産の野菜を使用するナポリタンであることだけ。実は「黒い」ことは条件に入っていないため、イカ墨を使っているのは「Caldo Calcio」のみ。
「店舗による違いがある方が食べ比べをする楽しみがあるのでは」との思いから、条件は最小限に留め、意図的に店舗ごとのオリジナリティーを出すようにしている。2017年9月現在の参加店舗は9店舗あり、それぞれの店で創意工夫を凝らしたイカナポリタンが食べられる。
地元にUターンしたひとりの料理人の思い付きから、函館のご当地グルメとして一定の地位を築くまでに成長し、料理コンテストで北海道代表に選ばれるまでになった「函館イカナポリタン」。佐藤シェフは今後の展望について、「もっと函館イカナポリタンの知名度を上げていきたいし、参加各店に足を運んでもらえるようにPRしたい」と話す。
発案者としてあくまでも他店を気遣う姿勢に、ますます好感度アップ。心優しきシェフが腕を振るう「黒いナポリタン」、ぜひ味わってみてほしい。
●information
Caldo Calcio
住所: 函館市花園町22-26 メゾンパティオ1F
営業時間: 11時30分~23時30分(L.O.23時)
定休日: 月曜日(祝日の場合は15時までランチ営業)