2007年にテレビ朝日系で放送され、今年(2017年)で10周年を迎える特撮テレビドラマ『仮面ライダー電王』は、番組終了後も劇場版が作られるなど、ファンに長く愛される人気作品となった。そしてこのたび東映ビデオから、劇場公開時には惜しくもカットされた未公開シーンの追加や、アクションシーンの再編集などを行った「ディレクターズカット版」が存在する3作の「劇場版」をBlu-ray BOXにて12月6日より発売することが決まった。

左から松元環季、中村優一、桜田通、金田治監督

ディレクターズカット劇場版Blu-ray BOX発売を記念して14日、新宿バルト9において、「劇場版 さらば仮面ライダー電王 ファイナル・カウントダウン ディレクターズカット版」のトークショー付き特別上映会が開催され、同作に出演した中村優一、桜田通、そして金田治監督が"今だから話せる"裏話満載のスペシャルトークを行った。途中、当時子役としてレギュラー入りしていた「コハナ」役・松元環季もサプライズ参加を果たし、ファンから一段と大きな歓声を集めた。

本トークショーは、仮面ライダーシリーズの大ファンであるというお笑い芸人・篠宮暁(オジンオズボーン)がMCを担当。モモタロスの決めゼリフ「俺、参上!」が書かれたTシャツを着てハイテンションで現れた篠宮は、『仮面ライダー電王』第41話で「桜井侑斗とエスカレーターですれ違う男」の役で出演を果たしており、つめかけた大勢のファンに「あとでDVDやBlu-rayで僕の出番を確認してくださいね」とアピールする場面も見られた。

今回上映される『さらば電王』で初登場したNEW電王/野上幸太郎(佐藤健が演じる仮面ライダー電王/野上良太郎の孫)を演じた桜田通は、「仮面ライダーのイベントでファンのみなさんとお会いするのは久々なので、楽しみながら緊張しています」と笑顔であいさつ。幸太郎役が決まったときの気持ちを尋ねられると、「最初に聞いたのは電話だったんです。同じ事務所の先輩である佐藤健くんが出ている作品だよって聞かされて、最初はまだ事の重大さに気づいてなかったんです。その後、仮面ライダー役だと教えられると、だんだん緊張してきて冷や汗が出るほどに……」と、仮面ライダーを演じることへのプレッシャーを最初のときに感じたことを明かした。

テレビシリーズで主演を務めた佐藤健とはプライベートでも仲良く接していたと話す桜田は、続けて「現場で健くんと会ったときは、やはり仮面ライダーという役を背負ってきた人だなあという気持ちになり、いつもより緊張しました」と、初めて撮影現場に行って佐藤と会ったときのことを回想。1年間にわたってテレビシリーズの撮影をこなし、すでにチームとして出来上がっている『電王』キャスト陣の中に、新たに加わることの難しさについては「僕と一緒に新しく『電王』へ加わることになったテディ役の(スーツアクター)金田進一さんだけが味方だと思っていました」と、最初に感じた「アウェイ感」を告白。しかし、そういった部分が幸太郎の役柄とマッチして、よい結果になったと感想を述べた。

仮面ライダーゼロノス/桜井侑斗を演じた中村優一は、「電王のイベントといったらこのセリフから言わせてください。最初に言っておく。俺はかーなーり、強い!」と、劇中での侑斗の決めゼリフを放ち、ファンたちの心をつかんだ。中村にとって『さらば電王』は『電王』の劇場版として3作目にあたるが、テレビ放送終了後に出演した2作目の映画『クライマックス刑事(デカ)』で、「これでもう最後だと思って、やりきった」と思っていたという。その後、「さらば電王……もう、『さらば』ってタイトルにすれば1本できるだろうと(笑)、当時はすごく衝撃を受けましたね」と、根強い『電王』人気によって新たな映画の話が来たことを喜んだ一方で、驚きもあったことを話した。

テレビシリーズに続いて『クライマックス刑事』『さらば電王』と2作の劇場版を演出した金田治監督は「最初の『クライマックス刑事』は映画ではなくVシネマとして撮っていたのが、撮影終わりの打ち上げの席で『これ映画館で上映することに決まりました』と聞かされてね。『困るよ~これ、映画のサイズじゃないし、劇場でかけることを想定してないんだよ』なんて残念に思っていたんです。それから2か月くらいして、今度は最初から映画をやってくれって言われてね、それが『さらば電王』なんです」と、本作が作られた経緯を説明した。また「(撮影は)本当に楽しかったです。この2人に助けられました」と、改めて桜田と中村に感謝の言葉を述べていた。

『電王』放送から10年という歳月が流れた現在でも、根強いファンがたくさんいることについて、中村は「ありがたいことですね」と感慨深くコメント。金田監督は「電王のころから平成ライダーのファンに女性が増えましたね。僕は朝にロイヤルホストで演出コンテを切るのが日課なんですが、ある日ウエイトレスさんがこちらに来て、何かな?と思っていたら『監督の金田さんですか?』って訊いてくるんです。彼女も『電王』のファンだったそうで(笑)。いつも応援しています!なんて言われてね。その日の撮影はもう、絶好調でしたよ!」と、身近に『電王』の女性ファンがいたことに喜びの表情を見せた。

次に『さらば電王』で初めて共演した中村、桜田にお互いの第一印象は?という質問が寄せられた。中村は「あのころ(桜田は)17、18歳くらいだったんですね。撮影のとき緊張していたって言っていましたけれど、とても落ち着いている印象で。僕のほうが年上なんですが、落ち着きなくてバタバタやっていた(笑)」と話せば、桜田は「優一さんの一番初めの印象は"怖かった"なんですよ。撮影の最初のころ、ロケバスに乗ったんですけれど、タイトなスケジュールで、席に着いたら寝ちゃったんです。そうしたら、後ろから僕の席をしきりに蹴っている人がいて、それが優一さんだった」と、まさかの"新入りイビリ"が始まったのかと驚いたエピソードを披露。しかし「怖いな~と思って後ろを見たら、優一さんがぐっすり寝ていて……。たぶん夢の中でアクションをしていたのかな(笑)」と、自身の誤解であったことを明かしていた。その後、桜田は中村とじっくり話す機会があり、優しい先輩であることがわかったという。

『電王』では、人間に憑依して人格を乗っ取ってしまう"イマジン"の存在がユニークなドラマを生み出していたが、"自分に憑依したら面白そうだ"というイマジンを尋ねられると、桜田は「幸太郎の相棒であるテディは、幸太郎に憑依しないイマジンなんです。だから、いつかテディに憑依されるのが楽しみだったんですが……」と回答。桜田はモモタロス、ウラタロス、キンタロス、リュウタロスと歴代イマジンに憑依された経験があり、中村は「俺よりも多いな! 侑斗はデネブとウラタロスくらいしか憑依されてない」と、ちょっと羨ましそうな顔を見せた。

また中村は「『クライマックス刑事』のとき、ウラタロスに憑依されて、外国人の女性(セーラ・ブランチ)と戦うシーンがあったんです。そのときの金田監督の演出がすごくて……。セーラさんの胸のあたりを『行け!』って(笑)。彼女のスーツの中に手を入れて銃を奪う、ってところなんですけれど、当時20歳の純粋な時期で……いや、今も純粋ですけど」と、女たらしのウラタロスに憑依されるシーンで非常に恥ずかしかった思い出を語った。

金田監督はそのときのことを思い出して「そうそう! 彼が照れてしまってね、胸から下に手が行かないの。だから、『バカヤロウ! これは映画だぞ、芝居してんだぞ!』なんて強く言いましたね。その時の表情を見て、こいつ可愛いなって(笑)。でもどんなシーンでも頑張ってたよね」と、中村の体当たりの演技を高く評価した。

そして金田監督は憑依されてみたいイマジンとしてモモタロスを挙げ、「このヤロー、バカヤロー!って言いまくるモモタロスでいいと思います」と語ると、MCの篠宮から「ふだんの監督そのままじゃないですか」とするどいツッコミを入れられてしまった。

続いて、プレゼント抽選会のアシスタント女性……と見せかけて、サプライズゲストの松元環季がステージに登場。松元は第33話「タイムトラブラー・コハナ」より、白鳥百合子が演じたハナが時間の歪みの影響で子ども化してしまった姿……通称「コハナ」役でレギュラー出演し、『さらば電王』をはじめとする『電王』劇場版シリーズでも活躍した美少女子役だった。

『電王』テレビシリーズ出演当時8歳だった松元は、2011年に学業専念のため芸能界を引退。金田監督は「環季じゃねえかコノヤロー! でっかくなっちゃって!」と、10年もの月日を経て美しい女性へと成長した松元との久々の再会を喜んだ。さらに金田監督は「『クライマックス刑事』のとき、彼女がバズーカ砲を撃つシーンがあったんだけど、体にロープをつけて『引っ張れ、引っ張れ!』ってやったら、怖がって泣いちゃってね。あのときは悪かったな」と、真っ先に昔のハードな撮影について詫びていた。

現在は芸能界から離れ、大学生活を送っているという松元は「緊張して倒れそう……」と、現在の心境を述べたが、それを聞いた中村から「しゃべり声、誰?」と驚きの声があがると、ハニカミ気味にまぶしい笑顔を見せた。

撮影当時の思い出は?との問いに対して松元は、「(中村と一緒に)かき氷を作ったのを覚えています」と言ったものの、当の中村がそのときのことを覚えておらず、笑ってごまかす場面があった。中村は松元との思い出として初めて一緒に撮影したときのことを回想し、「コハナをお姫様だっこして、歩道橋に上るシーンがあったんですけれど、あのときは緊張しました。落としたらどうしようって」と話したあと、「実は、あのとき朝ごはんに二週間に一回くらい出てくる"ちまき"を食べ過ぎてしまって、初めのころにはいていたズボンがピチピチになっていたんです。それで、足が上がらなくて」と、松元を落としてしまわないよう、とても緊張したシーンの意外な裏話を明かした。

桜田もまた松元との思い出を訊かれると、「あのころ8歳か9歳くらいだったんだよね。何の気なしに、仲良くなってからは『おはよ~~!』なんて頭をさわってたんですけど、今やったら"事案"になりますね(笑)。でも久しぶりにお会いできてうれしかった!」と、10年近い歳月を経ての再会を改めて喜んでいた。

もともと白鳥百合子が演じていたハナという役柄をそのまま受け継いだ形になる松元は「最初は1、2話(分)だけ出てくださいと言われていたのですが、そのうちずっといることになって(笑)。アクションとかもたくさんやらせていただき、『電王』の一員に入らせてもらってありがたかったです」と、『電王』ファミリーに加わることができたのを感謝した。『さらば電王』についても、「テレビと『クライマックス刑事』が終わっても、この映画があることでまだみんなと一緒にいられるんだ、という安心感があった」と、うれしいコメントを残した。

金田監督は当時の松元について、「あんな小さい女の子なのに、モモタロスを簡単に蹴飛ばしたりする。あれを観て、作ってる俺が笑ってたな」と、少女なのに「お姉さん」的な強気のアクションを要求したことのギャップが笑いを誘ったと話した。さらに「いつも彼女に『遠慮なんてするなよ、いいから本気で蹴れよ!』と怒ってたよね。覚えてる?」と呼びかけると、松元は「はい。モモタロス役の高岩(成二)さんを力いっぱい叩きました。もうムリムリ、って感じでしたけど!」と、デンライナー車内でのコハナとモモタロスたちとの"ワチャワチャ"なシーンについての裏話を披露した。

最後のあいさつを求められた中村は「『電王』のイベントでは毎回泣いている僕ですが、今回は初めて泣きませんでした(笑)。ずっと笑いに包まれて楽しかった! 電王10周年をみなさんとお祝いできてすごくうれしいです!」と、感極まった涙声ではなく、ハツラツとした声でファンの声援に応えた。

続いてマイクを手にした桜田は、「今回久々にイベントに出させてもらって、改めて『電王』という作品の大きさを知りました。『さらば電王』に出させていただいたときは、まだお芝居の経験も浅い時期でした。今でも芝居を続けていて、『電王』で培ったものがあるからこそ、役者として今もここに立つことができているんだなあと思い、感謝の気持ちでいっぱいです。野上幸太郎という男はとってもアンラッキーなんですが、こんな未熟な自分がNEW電王として『電王』に参加できたことは、非常に運がいいと思っています。幸太郎には悪いですけれどね(笑)。機会があればまた駆け付けたいと思っていますので、今後とも『仮面ライダー電王』をよろしくお願いします!」と、すべてのキャスト、スタッフ、そして応援してくれるファンのおかげで『電王』が大きな作品になったと感慨深げに語った。

12月6日より発売される『仮面ライダー電王 THE MOVIE ディレクターズカット Blu-ray BOX』には『劇場版 仮面ライダー電王 俺、誕生!ファイナルカット版』『劇場版 さらば仮面ライダー電王 ファイナル・カウントダウン ディレクターズカット版』『劇場版 超・仮面ライダー電王&ディケイド NEOジェネレーションズ 鬼ヶ島の戦艦 ディレクターズカット版』の3作品を3枚のディスクに収録。今回のトークショーはボーナスディスクの特典映像として収録される。

秋田英夫
主に特撮ヒーロー作品や怪獣映画を扱う雑誌などで執筆。これまで『宇宙刑事大全』『宇宙刑事年代記』『メタルヒーロー最強戦士列伝』『ウルトラマン画報』『大人のウルトラマンシリーズ大図鑑』『ゴジラの常識』『仮面ライダー昭和最強伝説』『日本特撮技術大全』『東映スーパー戦隊大全』『ゴーグルV・ダイナマン・バイオマン大全』『鈴村健一・神谷浩史の仮面ラジレンジャー大百科』をはじめとする書籍・ムック・雑誌などに、関係者インタビューおよび作品研究記事を多数掲載。