ファイルメーカーは、iPadとFileMakerをビジネスに導入した最新事例を公開した。福井県でHONDAの新車ディーラーとして2店舗を経営するカワムラモータースは、経営革新の重点課題として顧客満足度と社員満足度の向上に取り組み、この問題解決を行うためのITツールをFileMakerプラットフォームで構築、運用している。この取り組みと成果が高く評価され、同社は、2016年度の日本経営品質賞を受賞した。
カワムラモータースは、自動車の販売・メンテナンス、各種カーサービスを提供しているが、FileMaker導入前は、業務目的ごとに異なるシステムに情報が点在していたため、顧客ニーズを総合的に把握することが難しいだけでなく、顧客の詳細情報が各担当者のみにとどまり、社内で十分に共有されないという問題があった。ということから同社は、顧客情報を収集、蓄積、共有するための業務アプリケーションをFileMakerプラットフォームで独自に構築する運びとなった。
現在では、新車購入時の基本情報や、走行距離など時間経過に伴い変化するデータに加え、顧客との雑談や観察の中から得たパーソナライズ情報もFileMakerプラットフォーム上で管理。営業担当以外にも、サービス、経理など部門を横断して従業員全員が iPad やデスクトップから自由に情報を入力、閲覧できるようになってる。情報共有に基づく社内対話と相互理解が進んだことで、決定権を従業員に与えて判断を任せているという。
FileMaker導入によって、行き届いた顧客対応が可能になり顧客満足度が向上。さらに、収集した情報に基づき顧客一人一人に合ったサービス対応をタイムリーに実行することでメンテナンスサービスの入庫量が増加したとのことだ。
また、顧客の声をデータとして蓄積し分析することで、メンテナンスプランを柔軟にパッケージ化し分割払いもできる新サービスを考案した。この独自製品は、繰り返し継続して利用される人気商品となっている。
さらに、全従業員が顧客情報や業務情報を入力・閲覧できる仕組みを通じて社内の対話が促進されたという。最新情報が常に共有されることで権限移譲が進み、業務判断を管理者に頼らない企業風土が確立され、社員のエンゲージメントと組織力が向上し、結果として店長の役職が不要となった。
カワムラモータース代表取締役社長の河村将博氏は、こうした取り組みの着眼点について、経営者が「業務」の観点だけでなく「組織」の観点を持ち、その両方を成長させてこそ、経営やマネジメントの品質が向上すると強調し、FileMakerが業務改善に有効なのは多くの事例で実証済みであること踏まえた上で、FileMakerによる情報共有が組織能力を高めること確信していると述べている。
ファイルメーカーの公式サイトでは、本件に関する詳細なレポートが掲載されており、ビデオも視聴できる。10月に開催されるFileMakerの総合イベント「FileMaker カンファレンス 2017」では、河村氏が事例セッション「特別講演:FileMaker プラットフォームと経営革新の親和性」に登壇し、本事例の詳細を紹介する予定となっている。