日本の「国民皆保険制度」は国民全員を公的医療保険で保障しており、保険証を提示すれば医療費の負担金額は1~3割ですむ。景気問題による加入者の減少や超高齢社会に伴う収支バランスなどが問題視されているが、有事の際にその恩恵にあずかった人は数知れない。
米国でもバラク・オバマ前大統領が旗振り役を務めた、いわゆる「オバマケア」によって、日本のように公的医療保険への加入が義務付けられようとしていた。現政権はオバマケアに強硬に反対しており先行きは不透明となりつつあるが、長く民間保険が中心であった米国が医療保険制度を見直す岐路に立たされているのは間違いないようだ。
では、日本以外の国で生まれ育った人たちは、日本の医療保険制度をどのように考えているのだろうか。今回は日本在住の外国人20人に聞いてみたので紹介しよう。
Q. 国民全員を公的医療保険で保障する日本の「国民皆保険制度」をどのように感じますか
すばらしい制度だと思う
・「自分が病気になったとき、日本の国民皆保険制度を使ってとても役に立つことだと感じました。日本に来て保険制度に加入して保険料を払い続けていましたが、その分お金を貯めて病気になったときに使う方がいいと思っていました。しかし、保険制度をよく読んで、国民全員に役に立つ制度であり、自分だけのためじゃないということが分かりました」(カンボジア/20代前半/男性)
・「日本の保険制度は世界一と言っても過言ではないと思います。シリアの保険制度は正直、存在感が薄すぎるように感じます」(シリア/30代後半/男性)
・「いいと思います。日本の方がしっかりした制度だと思います。タイは政府が安定していないので、制度も不安定です」(タイ/40代前半/男性)
・「いい制度だと思います。インドでも最近、会社で保険をかける所が増えています」(インド/30代前半/男性)
・「母国のとそんなに異ならないし、よい制度だと思います。そういう制度がちゃんとしていないアメリカみたいな国では困る人がいるのです」(スペイン/30代前半/男性)
・「参加しなければなりませんが、いい制度だと思います。香港ではそのような制度がありません。自分で保険を選んで参加することになります。参加は自由ですが、全員入っているとは言えません」(香港/20代後半/男性)
・「個人的にはよいと思います。母国の制度は保険がきく病院ときかない病院があり、あまり病院にはかからないです」(パラグアイ/50代/女性)
・「最高だと思います。ペルー人は保険に入っていない人が多くいます」(ペルー/40代前半/女性)
・「日本にはとてもいい制度と思いますが、フィリピンでは合わないと思います。フィリピンには生活に苦しむ人も多く、病院に行くときはどうしても必要なときだけ。めったに病院に行かないのに保険を強制的に払わされるとなれば、文句を言う人がいっぱいいると思います」(フィリピン/30代後半/女性)
・「よいことだと思います。安くなるし、病気になっても安心してクリニックなどに行けます」(オーストラリア/30代後半/女性)
・「日本の医療保険制度はとてもよいと思います。母国の医療制度は頼りになりません。保険料を払っても、診察や薬代は全額負担です」(スペイン/40代前半/女性)
・「日本の国民皆保険は、すごくいいと思います。誰でもある程度払える金額で、治療を受けることができますから。エジプトでは国民健康保険制度がなく、病気になって入院した際には多額の治療費を支払わなければなりません。日本のような健康保険の制度がうらやましいです」(エジプト/30代前半/女性)
医療費に不満・不慣れ
・「ロシアの医療保険はもっと安くて、医療費も無料になる。日本の保険制度は値段が高いと思う」(ロシア/20代前半/男性)
「30%の負担でも高い。ポーランドは無料。だが、ポーランドでは専門医のアポが取れない。待つ時間は数カ月」(ポーランド/30代前半/男性)
・「よい制度だと思います。母国にも似た制度があります。しかし、母国では医療費はほとんどすべてカバーされますから、日本の制度に加入していても病院でお金を払うことにいまだに慣れません」(ドイツ/30代前半/男性)
・「イタリアには保険制度はありません。正確に言えば、政府への税金で払っていますので検査・治療はタダで受けられます。がん治療なども患者はお金を負担していないです。国が負担してくれます。そのため、誰でも治療を受けられます。完璧な制度ではないかもしれませんが、個人的に保険制度より安心感を覚えます。何があっても、『保険適用外』という恐怖がないです。母ががんになったときも、お金のことは一切頭にありませんでした」(イタリア/20代前半/女性)
母国にも導入してほしい
・「保険制度があって安心。マレーシアにも導入してほしい」(マレーシア/40代前半/男性)
・「アメリカにはこのような保険制度がないのでたくさんの人が苦しんでいます。絶対正しい方法だと思います」(アメリカ/30代前半/女性)
■総評
結果は、全体の6割が「日本の保険制度は優れている」と回答した。皆から少しずつ保険料を徴収することで、患者の医療費の大部分をカバーするという日本の医療保険制度は、まさに相互扶助の精神と言えるだろう。また、手術・入院時に費用が高額になった場合、患者の医療費負担が増えすぎないようにする高額療養費制度のようなシステムもあり、日本の保険はかなり恵まれた制度のように思える。だがその一方で、母国では保険や税金などで医療費が全額負担されており、日本の1~3割の自己負担金ですら「高い」と感じている人もいるようだ。
※写真と本文は関係ありません
調査時期: 2017年7月21日~2017年8月21日
調査対象: 日本在住の外国人
調査数: 20名
調査方法: インターネット応募式アンケート