台湾の証券取引所にあたるTWSE (証券交易所)は9月20日、HTC Corporationの株式の取り引きを9月21日から一時停止することを発表した。VentureBeatのレポーターであるEvan Blass氏によると、HTCは21日に社員を集めたタウンホールミーティングの開催を予定しており、噂されるGoogleへのハードウエアエンジニアリング事業の売却交渉に関して説明が行われる可能性を同氏は指摘している。

長く業績が低迷し、経営的に不安定な状態が続くHTCは、事業売却を含む経営の抜本的な立て直しに踏み出したと報じられていた。同社は一般販売された初のAndroidスマートフォン「HTC Dream」のメーカーであり、また現在もGoogleのPixelシリーズのハードウエアパートナーであるなど、Googleとの強い関係を維持してきた。HTCの迷走が深まるとPixel事業の先行きも不透明になるため、Googleが救済に乗り出したとしても不思議ではない。

ただし、Googleは2011年にMotorolaの携帯電話事業を買収したものの、ハードウエア事業として大きな成果を生み出さないまま、2014年にMotorola Mobilityを中国のLenovoに売却している。2014年にはスマートホーム機器を開発・販売するNest Labsを買収したが、その後Nestの新製品開発が進まず、2016年にNestを率いてきた共同創業者のTony Fadell氏がCEOを退任した。Googleもサービスとソフトウエア、そしてハードウエアの統合的な開発によるユーザー体験を重視し始めて、PixelシリーズやGoogle Homeなど同社が開発したハードウエア製品を提供し始めてはいるが、これまで傘下に抱えたハードウエア事業は良好な結果を生み出せていない。

Pixel事業への影響以外のGoogleがHTCを買収するメリットを挙げると、HTCは2011年にVIA Technologiesからグラフィックス部門のS3 Graphicsを買収している。グラフィックス関連の特許を多数保有しており、Motorolaの時と同様、特許ポートフォリオの拡充を図れる。また、スピンオフの噂もあるが、Viveが話題を呼ぶHTCの仮想現実 (VR)デバイス事業はGoogleが今後の可能性として力を注いでいる分野である。