J. フロント リテイリング、大丸松坂屋百貨店、パルコの3社は、2014年に閉館した松坂屋上野店南館の跡地に「上野フロンティアタワー」なる大型複合ビルを11月4日にオープンすると発表した。このほど行われた記者発表会で明らかとなったその全貌をお届けしよう。
コンセプトは"新しい下町文化をここから"
地上23階、地下2階、塔屋1階から成る「上野フロンティアタワー」は、地下1階が「大丸松坂屋百貨店」、地下1~6階が「パルコ」、7~10階が「TOHOシネマズ」、12~22階がオフィスで構成される。
注目は、やはり「百貨店(大丸松坂屋百貨店)」「ファッション施設(パルコ)」「映画館(TOHOシネマズ)」という、3つの異なるコンテンツが一堂に会すること。もともと松坂屋上野店南館だったのだから"百貨店としてリニューアル開業する"という手もあったはずだが、そうしなかった理由についてJ. フロント リテイリングの取締役兼代表執行役社長・山本良一氏はこう話す。
「松坂屋、パルコ、TOHOシネマズという異分子結合によって互いの強みを生かし、上野に新たな風を吹かせたい。この『上野フロンティアタワー』と『松坂屋上野店』を含むエリア全体を"シタマチ・フロント"と名付け、地元の方々と協力しながら街の価値を最大化したいと考えています」
近年、J. フロント リテイリングは店舗を核にエリアの魅力を最大化し、地域とともに成長する「アーバンドミナント戦略」を進めている。今年開業した銀座の「GINZA SIX」に続き、今回の「上野フロンティアタワー」もまさにその一環。下町情緒あふれる上野御徒町エリアの魅力を生かしながら、新たな文化やライフスタイルを創造していく。そのシンボルに同タワーを据えたいと考えているという。
同タワーのコンセプトは"新しい下町文化をここから"。同地で250年の時を歩んできた松坂屋の伝統、そこにパルコが新たな文化、TOHOシネマズが新たなエンターテインメント、オフィススペースが新たな企業や人々を、これら多彩なコンテンツが集うことで新しい魅力を上野から発信していきたい。「上野フロンティアタワー」にはそんな狙いが込められている。
上野の魅力が詰まった「松坂屋」
では、ここからは気になる商業エリアの内容を紹介していこう。まずは地下1階の「松坂屋上野店」。"上野好きが集まって、上野をもっと楽しもう"をコンセプトにしており、フロア中心には「上野が、すき。ステーション」という上野に特化したコーナーを設置。
上野案内所、周辺の有名店・老舗の商品とコラボ商品を販売する売り場、ワークショップなどを実施するコミュニティースペースを併設し、体験型やコト消費要素が共存したコーナーになるという。
また、その周囲には「ナインウエスト」や「モーダ・クレア」などのウォーキングシューズ、「カンペール」や「ジェオックス」といったファッションシューズ、さらに「アシックスウォーキング」「フットプライド」などデイリーシューズの販売店が配置される予定だ。
同タワーのオープンに合わせ、ビルと連絡通路で直結の「松坂屋上野店 本館」もリニューアルし、多彩な新ショップが登場するとのこと。オープン後に来館した際は、タワーだけでなく、本館の方にもぜひ足を運びたい。
これまでとは違う、ちょっとオトナな「パルコ」
地下1~6階に入る「パルコ」は、1973年の「渋谷パルコ」オープン以来、なんと44年ぶりの東京23区内での新店舗出店となる。しかも、いつものパルコでなく「PARCO_ya」という新しい屋号での出店。同社の代表執行役社長・牧山浩三氏は、その意気込みについて次のように話していた。
「今回は複合ビルでの出店とあって、他の施設と客層が連携できるような専門店を編集しました。"ちょっと上の、おとなの、パルコ"をコンセプトに、毎日が楽しくなるようなコトやモノに出会える、"共感"をもって楽しんでいただける新しいパルコになっています」
この"ちょっと上の、~"というコンセプトからもわかる通り、メインターゲットとなるのは団塊ジュニア世代。同タワーには、これまでのパルコとはひと味違ったハイセンスな68のショップがオープンする。
アパレル・化粧品・レストランなどショップは多岐にわたり、地元ゆかりのものづくり企業も11店舗含まれる。フロアごとの構成は以下の通りだ。
アニメ作品も充実した「TOHOシネマズ」
そして、7~10階には「TOHOシネマズ」が入居。同エリアに映画館がオープンするのは、実に約60年ぶりだという。8スクリーン、約1400席と大規模な映画館となる。
上映される作品は、国内外の話題作はもちろん、オタクカルチャーの聖地である秋葉原が徒歩圏内ということもあり、多彩なアニメーション作品も上映される予定。アクセス至便な上野御徒町とあって、周辺で働くオフィスワーカーたちに重宝されそうだ。
ますます注目が高まる、上野の未来
江戸時代から日本を代表する文教施設の集積地として栄え、文明開化以降は交通文化の発展によって東京における"北の玄関口"の役割を担ってきた「上野」。来る2020年にはオリンピックの恩恵も受け、上野エリアに約3,000万人の来訪者が見込まれており、今や東京屈指の注目エリアといっても過言ではない。
今回、日本ならではの下町文化をモダンに継承する「上野フロンティアタワー」の誕生によって、国内外への魅力発信により拍車がかかり、上野の街のさらなる活性化が期待できる。これからの上野エリアの展開にますます目が離せない。