せっかく手作りの離乳食を作っても、子どもが食べてくれない……。でもなぜか、市販のベビーフードだけはパクパク食べる! というケースは多いかもしれない。やっぱり調味料をたくさん使ってるの? 赤ちゃんにとっての"おいしい味"はどうやって作るの?? といった疑問に答えてもらうべく、ベビーフードの開発に関わっている、アサヒグループ ベビー&ヘルスケア事業本部の矢野彩子 担当課長にお話を伺った。

アサヒグループ ベビー&ヘルスケア事業本部の矢野彩子 担当課長

ベビーフードのトレンドってあるの?

――まずはベビーフードができる過程について教えていただきたいのですが、メニューはどのようにして決めているのですか?

ベビーフードは、ご家庭で作る離乳食の代替品として作っているので、メニューもご家庭の料理をベースに考えています。大人の食事だとトレンドがありますが、赤ちゃんに与えるものとなると、煮物や炊き込みご飯といった定番のものが好まれます。お母さんが自分でも「こんな味かな?」と想像できるものの方が人気がありますね。新しいメニューにチャレンジしてみることもあるんですけど、やっぱりあんまり良い結果にならないことが多いです……。

――ちなみにこれまでチャレンジしてみたメニューにはどんなものがありますか?

パエリアとか、ラタトゥイユとかは、チャレンジしてみたメニューに入りますね。

ラタトゥイユはわりと人気がありますが、パエリアは、うーん、うーん……(笑)。

定番の味が人気ではあるのですが、さまざまな味を知ってほしいので、メニューにはバリエーションを持たせることを心がけています。あまり和食ばかりだと、赤ちゃんもお母さんも飽きちゃいますよね。洋風や中華風もご用意しているのはそのためです。

具材については、赤ちゃんにとらせたいと思うものをお母様方にインタビューしたり、栄養学的なところで、例えば鉄分が足りなくなる時期にはレバーを使ってみたりしています。

――インタビューもされるんですね

例えば、魚を食べさせたいけれど、自分で調理するのは大変だったりしますよね。そういった部分をベビーフードに頼りたいと思っていらっしゃる方は多いなぁと感じています。

和風の煮物など、定番商品が支持されている

開発中の商品、試食はどうしてる……??

――開発中の商品、赤ちゃんも試食することはあるんですか?

よく聞かれるんですけど、赤ちゃんには食べさせないですね。衛生的な部分を考えるとやはり試作品ではあるので、難しいなと思いますし、食べたか食べないかの理由を探るのも難しいですよね。食べなかった時に、何が悪かったか分からないので。

――誰が試食しているのでしょうか?

社内の研究・開発のメンバーが試食して、味を決めています。人数としては、6~7人くらいです。ベビーフードチームとして、長年ベビーフードの開発を手掛けている人たちが多いです。

――その人たちは、赤ちゃんの味覚を分かっているということなんですね?

そういうことになるかもしれないんですが、赤ちゃんの食事とはいえ、大人もおいしいと思わないと人気が出ないですし、売り上げとして結果にも出てきます。素材の味がいきているとか、だしがきいているといったことが大事です。

それから、赤ちゃんが好きなのは味覚で言うと、「甘み」と「うまみ」です。酸味や苦味は、腐っている、毒の味、と思う本能があるらしく、できるだけ取り除くようにしています。赤ちゃんの方が味覚が敏感で、グルメかもしれないですね。

「甘み」と「うまみ」を意識しているという矢野 担当課長

――日頃濃い味に慣れていると、味を判断するのが難しそうです

メンバーの中には濃い味が好きな人もいるんですけど、「仕事」と「プライベート」の嗜好はちょっと違います。仕事では薄味のものばかり食べているので、その中で味のバランスを判断するのには慣れているかもしれません。ただ、試食中の会話はすごくマニアックなので、端から見るとすごく不思議だと思います(笑)。

――味以外に、おいしく食べてもらうために工夫していることはありますか?

具材は月齢にあった固さや大きさを意識して作っています。最初は舌でつぶせる固さ、次に歯茎でかめる固さなど、きめ細かく対応しています。

ご家庭でも食べやすさは気にしてみるといいかもしれません。例えば、口の中でまとまらないひき肉やブロッコリーの芽などは、とろみを付けたり、おかゆに混ぜたりして、口の中でまとまりを作りやすくしてあげると、食べやすくなります。


次ページからは、気になるベビーフードの"味の濃さ"、どうやっておいしい味を作っているのかに迫ります。