米Appleは9月12日(現地時間)、スペシャルイベントを開催し、新型iPhoneなど新製品を多数発表した。ここでは新製品について筆者が感じたことを交えつつ、スペシャルイベントの発表内容を振り返っていきたい。
スティーブ・ジョブズ最後の作品たる新社屋
今回のスペシャルイベントは、今回初めて報道陣に公開されるAppleの新社屋「Apple Park」に設けられたホール「スティーブ・ジョブズ・シアター」で開催された。
この新社屋は、2011年に亡くなったスティーブ・ジョブズ前CEOが遺した「最後の作品」とでも言うべきもので、広大な敷地はたくさんの緑に囲まれており、その中央に位置する、12,000人が勤務する巨大なリング状のメインビル (それでも入りきれなかった人たちは、敷地内にある周辺のビルに部屋が割り当てられる)は、広大なガラスの窓によって周囲の自然を常に身近に感じることができる。そしてあらゆる建物は、使用する素材の細部から、人の目に見えない壁の裏側に至るまで、ジョブズの美的な拘りが詰め込まれているという。
新社屋の建設費は、一説には50億ドル(約5,400億円)以上とも言われている。日本で話題になった新国立競技場以上だ。これだけのコストをかけ、あらゆるこだわりを実現した最大の理由は「AppleがAppleらしい製品を作る環境を作るため」、それに尽きるのではないだろうか。
製品開発において、常に細部にこだわり続けたジョブズの遺産に囲まれて仕事をすれば、その思想は嫌でも社員に伝わることになる。おそらくジョブズは、自分が死んでからも、Appleという会社が創業者の理念である「世界で最高の製品を作ること」を受け継ぐよう願ったのだ。つまりApple Parkは、AppleのDNAそのものを具現化したものだといえるだろう。
そんな偉大な創業者の名を冠したスティーブ・ジョブズ・シアターは、イベントなどの開催用に建設されたホールで、1,000人を収容。ホール自体は地下にあり、1Fはロビー階となっているが、建物は柱を使わず、ガラス製の壁だけで支えられている。
スペシャルイベントはスティーブ・ジョブズの生前の肉声をナレーションに、このシアターに集まる報道陣の映像から始まった。そしてティム・クックCEOが壇上に上がり、ジョブズの生前の功績を讃えつつ開会を宣言した。
テキサスやフロリダを襲ったハリケーンのお見舞いや、新社屋の紹介ののち、Apple直営店の新しいデザインについて、リテール部門のアンジェラ・アーレンツ上級副社長から説明があった。新しい直営店では周辺に「プラザ」というスペースを設け、週末にはコンサートなどのイベントを行えるようになる。また、アプリ開発者向けに技術者と相談できる個室が設けられるなど、直営店をAppleと顧客だけでなく、周辺の住人や開発者との接点にもしようとしているようだ。Appleという存在が、単に製品を売る会社としてだけでなく、もはや一種の文化として社会に根付きつつある、あるいはそうなることを意図しているようだ。