既報のとおりMicrosoftは、Windows 10 Fall Creators Updateを10月17日にリリースすることをIFA2017の基調講演で発表した。「Redstone 4」の開発コード名を持つ次のWindows 10についても「Skip ahed to the next Windows release」を選択したインサイダーにビルド16353をリリースし、開発は着々と進んでいる。
IFA 2017の基調講演でWindows 10 Fall Creators Updateのリリース日を発表するMicrosoft EVP, Windows and Devices GroupのTerry Myerson氏 |
だが、その裏でWindows Insider Program (以下、WIP) に変化が現れた。WIPには最新機能を実際に試せるというメリットと、安定性を欠くというデメリットが混在する。WIPに参加するユーザーは一種のデバッガーとも言えるが、そこに意義を感じられないなら、WIPに参加しなければよい。シンプルな話だ。
Microsoftは8月下旬にリリースしたWindows 10 Insider Preview ビルド16278から、WIP上で新たなクエストを開始した。それが「ランゲージコミュニティ」である。端的に述べると、Windows 10に表示される翻訳文 (ローカライズされた文) に対して、WIP参加者が誤りを指摘したり、適切な翻訳文を投稿して、非英語圏のローカライズ品質の改善を目指すものだ。
Windowsストアからランゲージコミュニティ アプリを入手して起動すると、簡単な使い方が示される。下図にように、デスクトップ上のウィンドウなどをキャプチャすると、文字列がピックアップされるので、改善したい部分の文章を入力し、Microsoftに送信するという仕組みだ。
「翻訳までユーザーの手に委ねるのか」との声もあるだろう。だが、筆者はMicrosoftの判断を評価したいと考えている。なぜなら、歴代のWindowsには、違和感を覚える誤訳のような文章が混じっていたからだ。
Windows 10でも冗長な文章が散見されるが、遠因には項目名や機能名が統一されなくなったことが大きいと筆者は推察する。Microsoftは用語などを統一するため、ランゲージポータルを設けていたが、WaaS(Windows as a Service)の概念導入以降、表記統一に注力しない姿勢が見え隠れしていた。
確かにアジャイル開発というスタンスと表記統一は相反するため、致し方ないという見方もある。「通知領域」と「システムトレイ」という呼び方が混在した過去を踏まえても、ソフトウェアにおける呼称・表記統一は重視すべきだろう。だが、今やそれも難しい。
最終的に、日本語に翻訳した文章は日本マイクロソフトが選択する。だが、今回の取り組みは、ユーザーがWindows 10の開発へさらにコミットできる可能性を示した。OSS (オープンソースソフトウェア) とは異なり、Windows 10はクローズドソースだが、コミュニティベースで開発が進むOSSの長所を取り込もうとしている。WaaSは自身の変化だけではなく、利用者を含む周辺を巻き込みながら、すべてを変えていく存在なのだろう。
阿久津良和(Cactus)