現在、AIを活用した新問い合わせシステムには、グループ内からも期待が集まっているというが、ここに至るには、河本氏の念入りな計画があった。
「AIというのは非常にキャッチーなものですが、それだけに流行り物に飛びついたというような見方をされないように気をつけました。本当に役立つものだと伝わるように、3カ月ほどかけて使い方などをしっかり考え、社内提案制度に応募する論文を作成したのです。そこで認められれば経営層にプレゼンできるのですが、実際に2016年12月初旬にそのプレゼンができました」と河本氏。
TRAINAの正式な選定はその後で行われたにもかかわらず、実証実験が12月中に開始されているのだから、下準備には時間をかけながらも迅速に進行したことがうかがわれる。
「とにかく、大切なのは運用です。今の課題はFAQをどう貯めていくかですね。電話が多い分可視化が難しいのですが、そこに取り組んで行きたいと思っています」と語る河本氏は、すでに7月にはサッポログループマネジメント内での研修を行い、FAQの蓄積やAIの学習を強化。秋の本番利用や、その後に控える本社への展開に向けて動き出している。
最終的に狙っているのは人事・総務・経理・ITといった従来の問い合わせ対応だけでなく、グループ内の多彩な商品名を入力すれば関連する情報が出てくるような総合的な問い合わせ対応システムだ。アルコール営業担当者がこれを利用することで、他の食品商材についても十分な紹介ができるようになれば、営業機会が広がり、売上向上にもつながる。社内問い合わせ改革から、企業成長へとつながるAI活用の第一歩に期待したい。