近年、多彩なホテルが誕生。料金面も変動が前提なので、その一面だけで一括りにできないのが実状だ。そこでホテル基礎知識として、最新のホテル動向も踏まえ、スタンダードルームの客室面積などから利用者がイメージしやすいカテゴライズを試みた。あわせて、運営形態についても紹介したい。

有名ビジネスホテルチェーンはもちろんリミテッドサービスタイプ

日本伝統は「シティホテル」「ビジネスホテル」

ホテルは形態やサービス内容、料金帯などから様々なカテゴライズができる。日本では、伝統的にシティホテル(料飲やバンケットなど宿泊以外にも多くの用途があるホテル)、ビジネスホテル(シングルルームを主体とした宿泊に特化したホテル)といった区分がされてきており、その名称も馴染み深い。

業界では料金帯から、ラグジュアリー(Luxury)/アップスケール(Upscale)/ミッドプライス(Mid price)/エコノミー(Economy)/バジェット(Budget)、というカテゴライズが用いられることがある。

ホテル本来を追求した「フルサービスタイプ」

まず紹介するのは、「フルサービスタイプ」というもの。このタイプでは、ホテル本来がもつ様々なサービスを提供するという特徴がある。

ラグジュアリーホテル
主に大都市部に展開する外資系を中心とした超高級ホテル。ツインルームやダブルルームが中心で、スタンダードルームの客室面積が40平方メートル以上、近年では50平方メートル~が標準になりつつある。スパ、バンケット、料飲施設などのクオリティも高い。最高峰のサービスを提供する。

フルサービスタイプのデラックスホテルには、ぜいたくな料飲施設も

デラックスホテル
主に大都市部から地方の拠点都市などに展開する高級ホテル。地方では地域のフラッグシップ的な施設というケースも多い。ツインルームやダブルルームが中心で、スタンダードルームの客室面積が20平方メートル後半~30平方メートル以上。ラグジュアリーに準ずるサービスを提供する。

フロント中心の限定サービス「リミテッドサービスタイプ」

続いては、「リミテッドサービスタイプ」というもの。主に、フロント中心の限定的なサービスを提供している。

進化系ビジネスホテル
これは筆者の造語であるが、従来のビジネスホテルにコンセプトを持たせ、宿泊特化ながらクオリティの高いレストランやスパ施設なども併設する宿泊主体のホテル。デザイン性も高い。ツインルームやダブルルームもあるが、シングルルーム中心というケースが多い。スタンダードシングルの客室面積で15平方メートル~25平方メートルが基準となる。

ロボットが対応する「変なホテル」もリミテッドサービスタイプだ

ビジネスホテル
泊まることに特化したいわゆるビジネスホテル。客室面積は9平方メートル~15平方メートル程度ながら機能性や立地など、宿泊滞在に必要なサービスが過不足なく提供されている施設が多い。シングルルームが中心。リニューアルなどなされず旧態依然のままという施設も見られる。

最近話題の「その他のカテゴリー」

上記以外にも、立地や機能など様々な分類が可能であるが、詳細は別の機会に譲りたい。今回はその他のカテゴリーとして、最近話題のカプセルホテルなども含め、馴染み深い業態を例示する。

リゾートホテル
リゾート地にある滞在型のホテル。客室を始め、設備やサービス、料飲施設など施設内でコト足りる充実度。客室面積は様々であるがデラックスホテル以上というケースが多い。基本的にフルサービスタイプだが、最近では宿泊主体でリミテッドサービスをコンセプトにするリゾートホテルも増加している。

リゾートホテルの非日常感に癒やされる

簡易宿所
料金を受領して業として宿泊させるためには、旅館業法の許可が必要だ。旅館業法では、「ホテル」「旅館」「簡易宿所」「下宿」と分類されている。例えば、オーベルジュ(宿泊することもできるレストラン)やペンションも、当然いずれかの区別で旅館業法の許可を受けることになる。本稿はホテルのカテゴリーに着目しているので、上記カテゴリーのホテルについて記している。

一方、ネーミングだけで言えば、カプセルホテルもホテルであるが、分類としては簡易宿所となる。カプセルホテルの他にも、ホステルやゲストハウスといった、客室を様々多人数で共用する施設も簡易宿所に区分される。さらに、民泊をこのカテゴリーの対象とする動きもある。

看板名=運営会社名、とは限らない!?

ホテルの分類を紹介してきたが、併せて運営形態についても見てみたい。実のところ、ホテルを経営している会社がホテルの看板と同じとは限らない。ホテルの所有者と経営、現場の運営が分離されているのはよくあるケース。ホテルを経営形態のパターンで見てみると大きく以下の4つに分かれる。

直営方式
自ら土地・建物を所有し、ホテルの運営も行う。資金力もホテル運営のノウハウも併せ持っているからできる運営方式とも言える。帝国ホテルなどは代表例。

帝国ホテル 東京は直営方式となる

リース方式
ホテル建設を持ちかけ、ホテルオーナーとなった所有者からホテルを長期間借り上げる方式。少ない資金で多くのホテルをチェーン展開することができる。

MC(マネジメント・コントラクト)方式
運営委託方式とも言われる。ホテルの所有者、経営者が運営を専門のホテル運営会社へ委託する方式。運営会社は契約内容に応じ委託料収入を得る。

フランチャイズ方式
単独では宣伝力も限られるので、大手チェーン等に加盟して運営ノウハウの提供を受けるほか、チェーンブランド利用による集客などを図る。

少し専門的な用語も入ってしまったが、様々な面からホテルを知ることで、泊まるホテルはどんなホテルなのだろうか? と興味を持っていただけるきっかけになれば幸いである。

筆者プロフィール: 瀧澤 信秋(たきざわ のぶあき)

ホテル評論家、旅行作家。オールアバウト公式ホテルガイド、ホテル情報専門メディアホテラーズ編集長、日本旅行作家協会正会員。ホテル評論家として宿泊者・利用者の立場から徹底した現場取材によりホテルや旅館を評論し、ホテルや旅に関するエッセイなども多数発表。テレビやラジオへの出演や雑誌などへの寄稿・連載など多数手がけている。2014年は365日365泊、全て異なるホテルを利用するという企画も実践。著書に『365日365ホテル 上』(マガジンハウス)、『ホテルに騙されるな! プロが教える絶対失敗しない選び方』(光文社新書)などがある。

「ホテル評論家 瀧澤信秋 オフィシャルサイト」