ファイルメーカーは、iPadとFileMakerをビジネスに導入した最新事例を発表した。食肉加工品の製造および販売を行う信州ハムは、基幹事業であるハム・ソーセージ製造の生産工程を管理するシステムをFileMakerプラットフォームで構築している。
この新システムは内製化により独自開発されたもので、生産工場に配備されたiPadから各工程の詳細なデータがリアルタイムで収集される。蓄積されたデータは自動的に集計、分析されて生産現場の歩留まり管理や原価管理の可視化に貢献しているという。
信州ハムは、20年以上前に導入した旧システムにいくつか問題を抱えていた。システム自体のサポート期間が終了してしまったというのからはじまり、生産品目の変更や事業の成長に合わせた柔軟な改変ができなかったり、紙の日報からデータ入力する事務作業負担が増大したりといったことがあった。加えて、経営判断に必要な重要な情報(生産量、歩留まり、原価管理)を得るのに時間がかかる上、精度も十分でないという状況があったのだが、同社はFileMakerプラットフォームの導入でこれらの問題を一挙に解決したとのことだ。
製品の原材料である生肉の入荷・解凍から製造、包装、箱詰めして出荷という全工程のうち、生肉の段階から包装までをFileMakerベースの生産管理システムで管理。工場内に配備した約50台のiPad AirにはiOSアプリ「FileMaker Go」がインストールされ、外部業者のクラウド上で稼働するFileMaker ServerにWi-Fi経由で接続するという形で運用されている。
工場内では工程ごとにiPadが配置され、作業や計量が済むたびにデータを入力。データは常にリアルタイムでサーバーに送られ一元管理される。生産管理の事務所では70インチの巨大モニターが設置されており、製造の進捗が工程ごとにひと目でわかるようになっている。最新状況の把握はもちろん、遅れなどのトラブルもリアルタイムで対処可能となった。
新システムの設計および開発は、信州ハムのサービス 取締役 情報管理部 部長の土屋光弘氏と、生産管理部 主任の織部航氏があたっている。土屋氏が情報収集のために参加した「FileMakerカンファレンス」で食品メーカーの事例を目にしたことが導入提案のきっかけになったとのことである。
プロトタイプは短期間で作成でき、3カ月後には現場テスト、半年後には仮稼働という運びとなったのが、これも偏に習得が容易なFileMakerのお陰と両氏はコメントしている。また、システム構築を外部委託した場合、非常に高額になるのだが、FileMaker導入により初期投資を抑えられ、製品ごとに段階的に開発を行い、稼働させることができた。また、生産現場を経験した従業員自らがシステムを設計したことも手伝って、現場目線で構築や修正が可能になった模様だ。
ファイルメーカーの公式サイトでは、本件に関する詳細なレポートが掲載されており、全編iPhone 7 Plusで撮影されたビデオも視聴できる。