食の激戦区・渋谷。毎日のように新しい飲食店が生まれては消えて印象だが、昭和50年代から営業を続けている名店がある。その店の名は「とりかつ チキン」(東京都渋谷区)。文字通り隠れ家的な場所で、長年渋谷を行き交う人々の空腹を満足させている「組み合わせ自由」な定食から、「とりかつ」「メンチフライ」「ハムかつ」3品を組み合わせた定食(税込800円)をいただいてきた。

「とりかつ チキン」(東京都渋谷区)への入り方は、路上にある看板を見てビルの入口へ

40年以上も営業を続けている昔ながらの名店

同店は、井の頭線「渋谷駅」を出て道玄坂を上り、「渋谷百軒店」の門をくぐってすぐ。左手に看板が出ており、「二階にどうぞ」と書いてある。そばの「都路(みやこじ)ビル」に入って道なりに進むと、すぐに階段があるので上へ。

一瞬「こんな場所に定食屋さんが?」と思ってしまったが、上がって左を見ると「とりかつ CHIKEN」の暖簾がかかった店があった。ネット上では「場所がわかりづらい」という情報もあるのだが、看板を見て進んでいけば正直そんなに迷うこともないはずだ。

ビルに入り、2階に上がって左奥に店がある

中に入ると、見るからに昔から営業している様子の佇まいだ。これは相当長い間営業しているのでは? 店長の関口充さんによると、関口さんの母が昭和52(1977)年からはじめたお店なんだとか。開店するにあたり、とんかつをメインとした飲食店は多いものの、「とりかつ」の店はあまり見かけないということで、とりかつをメインにしたのだという。確かに、今でもあまりとりかつメインの店ってあまり見ないかもしれない。

昭和52(1977)年から続く風格が漂う店内。されど家に帰ったきたようなこの居心地の良さはなんだ!?

店長の関口充さん。シブいけど笑うとカワイイ!

店内を見渡すと、ズラリと並んだフライのメニューに目を奪われる。うわ~、こんなにあるんだ!? 開店当初は、現在に比べるとメニューの数は少なかったものの、段々増えて今に至り、その数は現在10種類以上。店の売りは、このフライの中から自由に組わせて注文できる定食だそうだが、その値段の安さにびっくり。2品で税込650円、3品で税込800円、4品でも税込1,000円という低価格。聞けば、昭和の終わりくらいからこの価格でやっているというから驚きだ。

見よ! このフライの豊富さ

「とりかつ」「メンチフライ」「ハムかつ」の絶品定食に舌鼓

長年この場所で営業しているということもあり、サラリーマンから渋谷に遊びに来た若者、外国人観光客まで、さまざまな人が訪れているとのこと。早速オススメを聞いてみると、「とりかつがおいしいので、3品でも4品でも、その中にとりかつを混ぜて食べてみてほしいですね」と関口さんは話す。

もちろん、「とりかつ」は頼むつもりです! ということで、今回は3品の定食を注文。「とりかつ」「メンチフライ」「ハムかつ」をチョイスして作ってもらった。厨房で「ジュージュー」とリズミカルな音を立てて揚がっていくフライを見ているだけで食欲をそそられる。やっぱりフライっていいなあ。

フライが揚がる音ですでにお腹がグゥ~

たっぷり盛られたキャベツを従えて、左に「ハムかつ」、中央に「とりかつ」、右に「メンチフライ」が並ぶ。堂々たる3つのフライを目の前にすると、一気に食欲がわいてきた。

フライ3品とご飯、みそ汁で税込800円

まずはお店の主役、「とりかつ」からいただきます! 厚みがある鶏肉をひと口噛むと、想像以上に柔らかい。鶏肉は国産のものを1箇所から仕入れており、部位はもも肉を使用。衣は薄目で、肉のジューシーなうま味がダイレクトに伝わってきておいしい! 普段はなんにでも醤油をかけて食べてしまう習性の筆者も、この日ばかりはたっぷりとソースをつけていただいた。その味はまさに昭和の家庭の味。お店の雰囲気も相まってとても懐かしい気持ちになる。

もも肉を使用しているとりかつは柔らかくてジューシー!

「ハムかつ」の衣も薄めで、「とりかつ」とは違ったカリカリとした食感も楽しい。そして鶏のメンチを使っているという「メンチフライ」。これまた絶品だ。ふわふわで柔らかく、口の中に優しく広がる肉汁がたまらない。ご飯、味噌汁、フライ×3種類を順番に食べて行くこの感覚、「定食」っていう文化はなんて素晴らしいのだろうか。揚げ物って、どうしても年齢を重ねると敬遠してしまいがちなのだが、無我夢中で完食してしまった。もちろん、食べ盛りの若い人でも十分満足できるほどボリュームたっぷり。それでいてこの低価格だ。

薄めに切られたハムは衣も薄くて思った以上に満足感あり

サクサクふわふわな「メンチフライ」はオススメ!

価格に関して、店長の関口さんは「気軽に来られる価格を目指しているので、当分上げないでいこうかなと思ってます」と話す。じ~ん。なんというありがたいお言葉。その気持ちがあるからこそ、食の激戦区・渋谷で長年支持されているのだろう。ちなみに、お弁当もやっており、電話で注文すれば10分程度で作ってくれるとのこと。たくさん注文が入ることもあるようだ(大量注文の場合は事前に連絡が必要)。

お弁当もやっているのが嬉しい

食べ終わった瞬間に「今度はどんな組み合わせにしようかな?」と考えてしまうほどフライの種類があるので、渋谷でランチに悩んだときには、ぜひおいしくて懐かしい味の隠れ家に足を運んでみてほしい。

豪快かつ豪華なフライたち。渋谷の若者もこれなら満足するはずだ

●information
とりかつ チキン
住所: 東京都渋谷区道玄坂2-16-1 都路ビル 2階
営業時間: 月~金 11時~15時(L.O)、17時~21時(L.O)
     土・祝日 11:00~20:00(L.O)
定休日: 日曜日