ペットフード協会の調べによると、猫を飼っている方の平均飼育頭数は1.78頭でした。犬の平均飼育頭数が1.25頭ですので、犬よりも猫の飼い主さんの方が多頭飼育の割合は高いことがわかります。実際、私も現在3匹の猫を飼っていますが、みんなで寝ている姿は可愛さ3倍です。今回は多頭飼育で気をつけるポイントについて解説します。
過剰な頭数は猫にとってストレス
近年の猫は社交的になってきましたが、本来は単独生活を行っていたため、プライベートな空間がないとストレスがかかります。猫が1匹でくつろげる部屋を持たせるため、猫の飼育頭数は「部屋の数-1」が基本と考えられています。例えば3LDKであれば、3頭までです。
一人暮らしの方は1Rや1Kに暮らしている方が多いと思います。その場合は部屋の大きさにもよりますが、特別な事情がない限り2頭までにしましょう。
避妊去勢は必ず行いましょう
猫が過剰に繁殖してしまい、生活が破綻する"多頭飼育崩壊"という言葉を聞いたことはないでしょうか。猫は血縁関係であっても避妊去勢手術をしないと、数年で数十頭まで増えてしまいます。ここまで増えると人も猫も不衛生で、動物愛護法で虐待とみなされるケースもあります。
できるだけ小さい頃から
猫にも相性があるため、どうしてもうまくいかないケースがあります。可能であれば生後半年未満から一緒に暮らすと良いでしょう。特に兄弟や姉妹はうまく行く可能性が高いので、多頭飼育を考えている方は最初から兄弟でもらうと良いでしょう。
成猫になるにつれ、新しい猫を受け入れづらくなります。12歳以上の高齢猫を飼っている場合は、新しい猫が加わったことによるストレスで体調が崩れてしまう心配があるので、健康診断を受け、獣医師に相談してみましょう。
先輩猫に優しく
新しい猫を迎えるときは、先に住んでいた先輩猫がストレスを受けることがほとんどです。猫は匂いでマーキングをするので、ストレスからトイレを布団にしたりするかもしれません。また新しい猫は家族の中でも注目されがちなので、先輩猫ともしっかり遊んであげましょう。
特に最初に猫同士を会わせるときは、新しい猫はケージの中に入れておくと良いでしょう。最初から自由にさせると喧嘩をすることもあり危険です。猫同士が落ち着いてから徐々に対面させましょう。
トイレは複数箇所
猫はトイレに関して、人間以上のこだわりを見せることがしばしばあります。トイレの数は「猫の頭数+1」が理想的だと考えられています。また他の猫の尿が残っているとトイレを我慢してしまうこともあるので、猫が許容できれば尿が下に落ちるシステムトイレを使うと、日中留守にする家庭でもトイレを綺麗に保てるでしょう。
肥満になりがち
猫たちによってフードを食べるスピードが違うと、ある1頭の猫だけが他の猫の残りをたいらげていることがあります。その場合はその猫だけが、どんどん体重が増えていくのですぐにわかるでしょう。
多頭飼育のメリット
猫によっては飼い主さんの依存度が高く、留守番が長いとストレスを感じてしまいますが、同居猫がいることで緩和されます。また猫同士で遊ぶことによって運動不足も少し解消されます。特に子猫のときはエネルギーが有り余っており、良好な関係を築ければ多頭飼育にすることで問題行動が解消することもあります。
人が猫に対して一定のコミュニケーションをとることは精神、健康にプラスに働くことがわかっていますが、猫同士ではどの程度影響するかはわかっていません。しかし1匹で黙っているよりは、友達がいて猫同士でコミュニケーションをとっている方が幸せそうに思えます。
最後に
猫同士が遊んだり相互に毛を舐める(アログルーミング)などは、良い関係が築けているサインで猫も幸せでしょう。しかし、どうにも馬が合わず心身に支障をきたすほどストレスを抱えてしまう猫もいます。可能であれば1週間ほどは相性をみてから、正式に譲り受けるかもう一度判断しましょう。猫からすれば急遽、知らない猫とルームシェアをするもの。多頭飼育を考えている方はできるだけ小さい頃から始め、理想的には兄弟を迎え入れると良いでしょう。
※写真はイメージ
著者プロフィール: 山本宗伸
獣医師。猫の病院 Syu Syu CAT Clinic で副院長を務めた後、マンハッタン猫専門病院で研修を積み帰国。現在は猫専門動物病院 Tokyo Cat Specialistsの院長を務めている。ブログ nekopeidaも毎月更新中。