箱根の温泉旅館「ホテルおかだ」と「和心亭 豊月」が日本オラクルのカスタマー・サービスを支援するクラウド「Oracle Service Cloud」を導入して、顧客満足度の向上に取り組んでいる。
Oracle Service Cloudは、カスタマーサポートの支援を目的として、ナレッジベース「iKnow」、Webセルフサービス、マルチチャネルの問い合わせの一元管理、インシデント管理、分析レポートなど、カスタマーサービスとサポートサービスのライフサイクルを網羅する機能を提供する。中でも、「iKnow」は、人工知能技術によって、質問の予測や回答検索の最適化を行うという特徴を備える。
それぞれ特徴が異なる温泉旅館「ホテルおかだ」と「和心亭 豊月」だが、Oracle Service Cloudで何を実現しようとしているのだろうか。
チャットボットでは顧客の疑問を解決できない
「ホテルおかだ」は創業63年、取締役営業部長を務める原洋平氏は3代目になる。開業当初は4室だった部屋数が今では122室にまで増えており、温泉の源泉も5本持っているという大規模な旅館だ。
原氏は、WebサイトのFAQサービスを向上することで、SEO効果による集客増加、入電数の削減を目指していると語った。「FAQサービスがよくなることで、顧客が不安を自分で解消して、Webサイトで予約してくれるようになることを狙っています」
FAQサービスの向上にあたり、チャットボットの採用も検討したが、チャットボットでは単語による回答になってしまい、また、顧客も質問が浮かばないのではないかと考えたそうだ。
「そもそも情報は旅館に蓄積しています。そのため、情報をプッシュ形式で見せることで、1つの疑問を別な疑問につなぐことが可能になり、結果として、お客さまは疑問が解消されて安心した状態で宿泊できるようになります」と原氏。
ホテルおかだは、WebサイトにFAQサービスとして「よくあるご質問」を設けているが、カテゴリー別に表示するという工夫を凝らしている。そして、Webサイトに一定の時間滞在していると、「こんなことでお困りではございませんか?」という画面を出し、「よくあるご質問」を表示する仕掛けを施している。
その狙いについて、原氏は「何か知りたいこと、困ったことがあるから、Webサイトを見ているはず。そうしたお客さまをサポートするために、FAQサービスの存在を知らせます」と説明する。
現職に就く前はエンジニアだったキャリアを持つ原氏、人工知能技術を活用しているOracle Service Cloudについて「人工知能はバズワードだから、導入は迷いました」と語る。
しかし、オラクルのデータベースがしっかりしていること、Oracle Service CloudはREST APIを利用できるため柔軟性が高いことなどから、導入を決めたそうだ。
Oracle Service Cloudで思いもしなかった"よくある質問"が明らかに
Oracle Service Cloudの利用は今年5月から始まったが、原氏は「既に効果を感じています」と話す。
例えば、自社のWebサイトからの予約数が10%~15%ほど増加したが、「FAQサービスを活用して、お客さま自身で疑問を解決することで、予約につながったのではないかと見ています」
また、実際に運用してみて、想定していなかった質問も受けたそうだ。原氏はその例として、「売店でパンツを売っていますか」を紹介してくれた。ホテルおかだでは回答を用意しつつ、この質問が検索の上位には表示されないように設定している。
原氏は今後の展開について、これまでは宿泊するまでの疑問解決に注力してきたが、宿泊してからの疑問解決にも取り組んでいきたいと話す。
「やり方はいろいろあると思います。宿泊する前に、現地に到着してからの疑問を見せる方法もあるでしょう。また、旅館の部屋にあるテレビに、時間帯に合わせてデータを表示する方法も考えられます。実際に質問を受けるのですが、午後2時であれば、チェックイン直後なので、1、2時間で行ける観光地を表示すれば、お客さまに喜んでもらえると思います」