実は揚げ物が大好きな沖縄県民。おやつの定番と言えば、衣の分厚い「沖縄風てんぷら」や、沖縄版ドーナツとも言える「サーターアンダギー」、塩焼きが定番の秋の味覚「サンマ」でさえもフライとして食すなど、揚げ物に対する愛は尋常ではない。
そんな揚げ物天国・沖縄県にあって、地元の人々が愛してやまない揚げパンをご存知だろうか? 今回は、テレビや雑誌で引っ張りだこの人気店、「揚げパン工房アントシモ」を紹介したい。
キャッチ―なネーミングも楽しい
自慢の揚げパンは全部で7種類。商品名が少し変わっており、「Aパン・Bパン・Cパン・Gパン・Jパン・Oパン・Tパン」という暗号のようなネーミングが面白い。北海道小豆とお餅が入ったAパンは、小豆の頭文字AをとってAパン、紅芋あんことお餅の入ったBパンは、紅芋の頭文字BをとってBパンといった具合に名付けられている。
お店にお邪魔すると、まずは店頭のショーケースで好みの揚げパンを物色。しかし、目の前にあるパンはどれも白っぽく、思い描いていたきつね色のパンとは何かビジュアルが異なるような……。それもそのはず、実はアントシモではお客からの注文の度に目の前でパンを揚げてくれるのだ。
これも「熱々の状態で食べてほしい」というお店側の心遣い。レジ横のチャーミングなPOPに癒やされつつ、"よんな~よんな~(沖縄の方言でゆっくりゆっくりという意味)"待つことに。今回はせっかくなので、7種の揚げパン全てをオーダーさせていただいた。揚げ時間はきっちり2分。ガラス越しにその様子を眺めるのも楽しい。
揚げ油は動物性のギトギト脂ではなく、不飽和脂肪酸のバランスが良い「日清キャノーラヘルシーライト」をぜいたくに使用。コレステロールゼロの植物油なので、べとつかずカラッと揚げられている。
完成した揚げパンは紙袋に入れて手渡される。外見はどれもよく似ているため、真ん中で切って撮影してみた。色鮮やかな紅芋あんこがたっぷり入っているが、もちろん天然の色合いだ。
紅芋あんこのおいしさはもちろんのこと、Bパン最大の特徴はなんといってもこれ! あんこの中には柔らかなお餅が顔を出してびよーんと伸びる。
生地の食感は外はカリッと、中はふっくらもっちもち。この違いが面白く、中のフィリングの組み合わせも全てパンの味わいに合わせて作られているので、全体のバランスが抜群に良い。
さらに、写真では分かりにくいと思うが、1個1個が想像以上に大きいので、小食の人であればひとつ食べればお腹いっぱいになるボリューム。それにも関わらずついつい手が伸びてしまうのは、サクサクとした衣と生地本来の柔らかさのおかげだろう。筆者も気付けば2個、あっという間に完食してしまった。
7種類全部切って並べてみると色鮮やかな揚げパンの花が咲いた。中心部の上が紅芋を使った前述のBパン、その下が小豆あんこの入ったAパン、そのすぐ右にはオリジナルカレーが入ったCパン。旅行者には圧倒的な人気のBパンだが、地元・うちなーんちゅ人気はAパン(あんこ&餅)やCパン(カレー)に軍配があがるのだとか。
オリジナルボックスは手土産に
ちなみに、6個以上注文すれば、バスの形をしたオリジナルボックスに入れてくれるのもうれしいサービス。キュートなイラストで遊び心をくすぐるでき栄えに、自宅用はもちろん、お土産に利用する県民も多いのだとか。友人とのお茶会や部活動の差し入れなど、幅広い場所で親しまれている。
アントシモの揚げパンは、揚げたてはもちろんおいしいが、揚げてから少し寝かせた30分~1時間程度が最もおいしいという。旅行で訪れた時は、観光の最終日に立ち寄って沖縄土産にするのもオススメ。イートインの他、テイクアウトしてホテルの客室やお気に入りのビーチなどで食べてみるのも良さそうだ。
取材当日もこのオリジナルボックスで持ち帰る人が多く、近所に住む親子や部活動帰りの中高生など、地元の人々の来店が目立っていた。新しく移転した場所は国際通りにも徒歩数分で行ける観光の中心地なのだが、実際に訪れるのは半分以上がうちなーんちゅだという。「また来たよー」、「こっちは何の具材ね? 」などなど、店内では緩やかな島言葉が聞こえてきて何とも微笑ましい。
こんなにもうちなーんちゅに愛されているアントシモだが、何がそんなにうちなーんちゅを魅了しているのだろうか。その秘密を代表取締役・宮城博三(みやぎひろみつ)さんに聞いてみた。