ソニー銀行は8月8日、投資型クラウドファンディングのプラットフォーム「Sony Bank GATE」をオープンした。国内銀行が企業の審査からファンドの募集・管理までをワンストップで運営する形態は日本初となる。

ソニー銀行が「Sony Bank GATE」をオープン

資金ニーズと資産運用ニーズを結びつける

クラウドファンディングとは、「新規・成長企業等と資金提供者をインターネット経由で結び付け、多数の資金提供者(=crowd/群衆)から少額ずつ資金を集める仕組み」(内閣府 消費者委員会「クラウドファンディング係る制度整備に関する意見」/2014年2月25日)である。

一般的には金銭・物品のリターンを伴わない「寄附型」、出資額に応じて物品を受け取ることができる「購入型」、そしてSony Bank GATEのように、出資企業の売上高等に応じて分配金を受け取ることができる「投資型」の3つに区別される。

クラウドファンディングの分類

さらに、投資型クラウドファンディングは債権と引き換えに資金を集めて事業に貸し付ける「貸付型」、みなし有価証券の形で出資を募る「ファンド型」、株式の形をとる「株式投資型」に分類される。

Sony Bank GATEはその中の「ファンド型クラウドファンディング」に該当する。投資家が企業(同サービスでは「挑戦企業」と呼ぶ)に出資を行い、その資金を元にプロジェクトを実施。成果により、出資者に分配金が支払われる仕組みとなっている。

Sony Bank GATEの仕組み

投資型クラウドファンディングのプラットフォームは既にいくつか登場しているが、ソニー銀行はネット金融プラットフォームの運営実績とプラットフォーム構築のノウハウ及び堅牢性、そして120万口座を超す口座保有者という強みを武器に、国内銀行として初参入する。

Sony Bank GATEの強み

投資家側は手数料無料で共感するベンチャー企業に少額から投資できる上、ファンドによっては出資特典もあるという。また、企業側は銀行による審査とモニタリングを受けているため、信頼度は比較的高いと言えそうだ。

投資家から見た特徴

ソニー銀行 代表取締役社長 住本雄一郎氏は会見で、「Sony Bank GATEは新しい資産運用の形になる」と述べる。

住本代表取締役社長「Sony Bank GATEは新規事業を始める挑戦企業の資金ニーズと、投資家の資産運用ニーズをネットで結びつける仕組みだ。この仕組みが発展し多くの挑戦企業が増えることで、日本経済の活性化・発展に寄与貢献していきたい。Sony Bank GATEは挑戦企業の顔が見える金融商品として投資をしてもらう。挑戦企業に対する共感や応援、思いが商品に込められた、新しい資産運用になるのではないか」

また、ソニー銀行 執行役員 新規事業企画部長 田中浩司氏は同社とベンチャー支援の関わりについて、同社の歴史に絡めて説明する。

田中執行役員「ソニーという企業は戦後復興ままならない時期に立ち上げられたベンチャー企業だ。ソニー銀行もソニーのベンチャー精神を引き継いだ戦後初めての新規参入行で、チャレンジ・ベンチャーに縁が深いという背景がある。近年、ベンチャー企業の方から新規ビジネスの資金サポートをお願いされることがあった。一方、投資家の方からは『共感できるベンチャー企業に気軽に投資できないか』という話を寄せられることが多くなっており、両者をつなげたかった」

第一号となる挑戦企業トップが語るメリット

投資の対象プロジェクトはBtoCのハードウェアを中心に、エンターテインメント・ヘルスケア・教育・ライフスタイル・ソーシャルと幅広く取り扱う。第一弾案件はリンクジャパンのスマートホームIoTデバイス「eRemote Pro」。既存の家電をスマート家電に変える、国内初の電流センサー搭載スマートリモコンだ。

リンクジャパンのスマートホームIoTデバイス「eRemote Pro」

リンクジャパン 代表取締役 河千泰進一氏はSony Bank GATEを利用するメリットとして「独自性の保持」と「マーケティング効果」などを挙げる。

河千泰代表取締役「ベンチャー企業が資金集めをするときはベンチャーキャピタルを通すことが主流だが、株式の譲渡などが必要になるため会社の独自性が保ちづらい。一方、Sony Bank GATEでは株式譲渡などはなく、独自性を保つことが可能だ。また製品を発表した段階でアピールできるので、プロモーション効果もある。ベンチャー企業には認知拡大にかける費用があまりないため、資金調達と同時にできるという点は大きな魅力だ。さらに、銀行が運営するプラットフォームのため安心感がある。案件ごと・製品ごとに資金調達できるので開発に集中できるというメリットも大きく、ハードウェアベンチャー企業にも使いやすいスキームとなっている」

また河千泰代表取締役は購入型クラウドファンディングで資金集めをした過去を「大成功はしたが、大量生産までの資金調達はできなかった」と振り返る。

通常、購入型クラウドファンディングでは「シード~スタートアップ(β版生産/~数百個)」に当たる初期段階の企業が対象となる。しかし、「投資家がベンチャー企業に共感できても、いきなり生まれたての企業に投資するのはリスクが高い」(ソニー銀行 田中執行役員)ため、大規模な資金調達は難しいというデメリットがある。

Sony Bank GATEでは投資家側のリスクも考慮し、中期のベンチャー企業を中心にファンドを組む。中期とは「アーリー(初期量産/~数千・数万個)」から「ミドル(追加生産)」段階だ。集めた資金は量産費用やバージョンアップ版の開発費用、プロモーションに使うことを想定している。

挑戦企業のステージ

第一号案件の想定利回りは約8%

Sony Bank GATEの目標募集金額は1,000万円~1億円程度、募集期間は30日~60日程度。申込金額はファンドごとに異なり、5万円~10万円程度で設定される。会計期間は1~3年程度で、投資家側の取引に関わる手数料は無料。利用は国内在住かつソニー銀行口座を保有し、投資型クラウドファンディング申込時に満20歳以上の個人が対象となる。

投資家への分配金は予め定められた事業の売上高から一定割合。想定利回りは案件によって異なるが、「リンクジャパンの場合は約8%を想定する。当然リスクはあるが、通常の預金やパッシブ型投資信託よりは高い利回りが予想される」(ソニー銀行)とのこと。ファンドによっては出資特典が付く。

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