米労働省が8月4日に発表した7月雇用統計の主な結果は、(1) 非農業部門雇用者数20.9万人増、(2) 失業率4.3%、(3) 平均時給26.36ドル(前月比0.3%増、前年比2.5%増)という内容であった。
(1) 7月非農業部門雇用者数は市場予想(18.0万人増)を上回る20.9万人増となり、前月の23.1万人増から減速したが、前月分と前々月分が上方修正された事もあって、3ヶ月平均の増加幅は19.5万人へと小幅に加速した。民間部門の幅広い業種で雇用者の増加が確認されており、米雇用市場の堅調さを裏付ける結果となった。
(2) 7月失業率は市場予想どおりに4.3%に低下し、5月に記録した約16年ぶりの低水準に並んだ。また、労働参加率が62.9%に上昇したにも関わらず失業率が低下しており、求職者が増える中で失業者が減少した可能性を示唆す好内容と言えるだろう。
(3) 7月平均時給は26.36ドルとなり、前月の26.27ドルから0.3%増加。前年比では4カ月連続で2.5%増となった。なお、市場予想は前月比が0.3%増、前年比が2.4%増であった。米労働市場では緩やかな賃金上昇が続いている事が確認された。米国のインフレ加速を想起させるほどの強さではなかったが、過度な低インフレ懸念は後退したと見られる。
米7月雇用統計は、全体的に見て良好な結果と言えそうだ。賃金の伸びには若干の物足りなさも残るが、失業率が歴史的な水準に低下し、人手不足感も出始める中にあって、雇用者の増加ペースが高水準を維持したのは心強い動きだろう。今後、賃金に上昇圧力がかかり、それに沿ってインフレも上昇するとの米連邦準備制度理事会(FRB)の見通しに変化はないだろう。市場は、この雇用統計の発表を受けて、ドル高、株高のポジティブな反応を示し、米国債は安全資産としての投資妙味が薄れるとの見方から下落(長期金利上昇)した。なお、コーン米国家経済会議(NEC)委員長は、「トランプノミクス(トランプ大統領の経済政策)が米国民を労働力として呼び戻している」「それはまさに大統領が実行すると表明していた事だ」と述べて、米7月雇用統計の好結果を歓迎した。
執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)
株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya