皆さんはライフプランを作るとき、何歳までの計画を立てる予定でしょうか? あまり意識されないかもしれませんが、これはライフプランの要となる問いだと思います。なぜなら、リタイア後の資金として準備しなければならない金額がそれによって変わってくるからです。
例えば、1カ月にかかる生活費を20万円と仮定します。すると、1年間にかかる生活費は240万円、10年間では2,400万円、15年間では3,600万円という金額になります。つまり、人生を80年として計画を立てる人と、95年として計画を立てる人では、リタイア後の生活費に3,600万円もの差が出ることになります。その内の大部分は公的年金などで補えるとは思いますが、不足分がある場合は、時間とともに家計にじわじわと効いてくることでしょう。
「何歳まで生きるか」を客観的に示す基準はある?
そうはいっても、寿命は人それぞれですし、前もってはわかりませんよね。それに何歳まで生きると思うかは、楽観的な人と悲観的な人とでは変わるでしょうし、その人の価値観によって異なることもあるでしょう。では、参考にできる客観的な基準は存在しないのでしょうか。
そんなことはありません。厚生労働省が毎年公表している「生命表」が参考になります。ちなみに、毎年、新聞やテレビで報道される「日本人の平均寿命が過去最高を更新」といったニュースは、この「生命表」が元ネタとなっています。
平成29年3月に公表された「第22回生命表(完全生命表)※1」によると、日本人の平均寿命は、男性80.75年、女性86.99年でした(※2)。それならば、ライフプランは、男性の場合は81歳、女性の場合は87歳まで考えれば十分かというと、残念ながらそういうわけにはいきません。
完全生命表によると、男性81歳時の生存確率は59.6%、女性87歳時の生存確率は61.8%となっており、半数以上の人はまだ生存していると推定されます(※3)。平均寿命とは0歳時の人の平均余命です。したがって、若くして亡くなってしまう人の推計も含んでおり、既に成人している私たちの余命と比べると低めの年齢となってしまっているのです。
それでは、出生者の半数が亡くなるのはいったい何歳のときなのでしょうか。これも「生命表」の寿命中位数を見ればわかります。平成27年は、男性83.76年、女性89.79年となっています(※4)。これは、平均寿命より3年程度高い年齢ですね。
また、65歳時平均余命を参考にしてもよいと思います。これは65歳まで生存した人の平均余命ですので、結果的に若くして亡くなった人は除かれていることになります。65歳時の平均余命は、男性19.41年、女性24.24年となっており、年齢にすると男性は84.41歳、女性は89.24歳となります(※5)。これも平均寿命より3年程度高い年齢になります。
※1 国勢調査による人口(確定数)と人口動態統計(確定数)による死亡数、出生数を基に5年ごとに作成したもの。第22回は、平成27年の結果。
※2 厚生労働省 第22回生命表(完全生命表)の概況 2ページ
※3 厚生労働省 第22回生命表(完全生命表)の概況 9,11ページ
※4 厚生労働省 第22回生命表(完全生命表)の概況 3ページ
※5 厚生労働省 第22回生命表(完全生命表)の概況 9,11ページ
ライフプランを立てるときは平均寿命+8年で考える
皆さんの中には50%の生存確率では物足りないと思う人や、100歳以上生きる自信がある人もいらっしゃるでしょう。それらも「生命表」を見れば、どれくらいの確率で実現するのかがわかります。
例えば、生存している人の数が40%を下回るのは、男性86歳、女性91歳のときで、30%を下回るのは男性88歳、女性93歳のときです。20%を下回るのは男性91歳、女性95歳のときで、10%を下回るのは男性94歳、女性98歳のときです。生存をしている人の数が1%を下回るのは男性101歳、女性104歳のときです(※6)。現在、100歳人口は急増していますが、統計的にはまだまれといえそうです(※7)。
また、平均寿命の推移を見ますと、最近30年で平均寿命は男女とも約5年間延びていて、現在も過去最高を毎年のように更新しています(※8)。それを考えると、皆さんがリタイアされる年齢に達する頃には、平均寿命は更に延びていることでしょう。よって、今後30年も5年程度は平均寿命が延びると考えておいた方がよいでしょう。
平均寿命が今後5年延びるとして、先に述べたように寿命中位数は平均寿命より3年程度高い年齢です。したがって、個人的見解ではありますが、少なくとも平均寿命+8年のライフプランを立てることをお勧めします。となると、男性は、平成27年の平均寿命約81年+8年で89歳、女性は、平成27年の平均寿命約87年+8年で95歳までのライフプランは最低限必要ではないでしょうか。この年齢を基準にして、更に自分の性格や価値観を考慮して、何歳までのライフプランを作るのか決めてみてはいかがでしょう。
※6 厚生労働省 第22回生命表(完全生命表)の概況 9,11ページ
※7 厚生労働省 百歳高齢者表彰の対象者は3万1,747人(平成28年9月13日発表)
※8 厚生労働省 第22回生命表(完全生命表)の概況 2ページ
執筆者プロフィール : 山田敬幸
一級ファイナンシャルプランニング技能士。会社員時代に、源泉徴収票の読み方がわからなかったことがきっかけでFPの勉強を始める。その後、金融商品や保険の販売を行わない独立系FPとして起業。人生の満足度を高めるためには、お金だけではなく、健康や人とのつながりも大切であるという理念のもと、現役世代の将来に向けた資産形成や生活設計に対する不安の解消に取り組んでいる。