4月初旬、突然課長から「福田さん、海外取材に行ってみたくない?」と言われた。日々ジャンクフードを食べ続け、入社3年目を迎えた筆者にとってこれが初めての海外取材となる。

福田: 「取材で海外ですか!? やったあ! 行きます!!」


課長: 「よかった。取材先がオーストラリアのゴールドコーストで、7月2日に『ゴールドコースト・エアポート・マラソン』があるからそれを取材してほしいんだけど、ゴールドコーストって行ったことある?」


福田: 「行ったことないですけど……。それより、マラソンの取材ってどういうことですか?」


課長: 「うん。福田さんには実際にフルマラソンに出場して、その様子をレポートしてほしいだよね」


福田: 「え!? 私マラソンはやったことないどころか、高校を卒業してからまともに運動していないですけど大丈夫です?」


課長: 「大丈夫大丈夫。実際に走り始めたらランナーズハイで頑張れちゃうもんだから。走ってみないと見えない景色ってあるんだよ。そういうところをレポートしてきてほしいの。それに、初マラソンが海外なんて、ものすごいハッピーじゃない! でもまぁ、本当に無理だったらリタイアするという手もあるからさ」


福田: 「そうですか。それならいいですけど……」


課長: 「まあ、足を痛めないようにランニングシューズは買った方がいいし、ちょっと走る練習はしておいた方がいいかもね」


フルマラソン出場に不安はあるものの、初めての海外出張には胸が躍る。ちなみに、マラソンの経験は高校のマラソン大会で10km走ったくらいで、会社員になってからは、スポーツジムで月1~2回ほど軽く走ってみるくらい。ランニングマシンで5km走れば、もう限界の体だ。

「まあそのうち練習すればいいだろう」という慢心

フルマラソンの取材を言い渡されてからは、なるべく週1でジムに行って走る習慣をつけようとしたが、続いたのは5月中旬まで。「まあ明日いけばいいか」「今日は忙しいからね、しょうがないね」と逃げ道を作り、6月に入ってからはほとんど何もしていない。課長から「準備はどう?」としばしば聞かれていたが、「ああ……、そこそこやってます」と濁していた。この記事で懺悔したい。

ちなみにランニングシューズは、「ちょっと高いなあ。給料が入ってからにしよう」と先延ばしにし、実際に買ったのはフルマラソン出場の1週間前だ。スポーツショップの美人なお姉さんには「えっ、来週ですか!? ま、まあ頑張ってください……」と渋い顔をされた。その顔も美人だった。

そうして6月29日、ろくに準備も練習もせずにゴールドコーストに旅立った。「まあなんとかなるだろう」という気概で乗り込んでいたこの時の私は、恐ろしく楽観的で、間抜けだったと断言できる。

初めての海外出張に胸が躍る。この後に試練が待っていると知らずに

不安の残る出国から、エントリーまで

オーストラリア・ゴールドコースト。南半球なので、季節は冬にさしかかる直前。気温は10~18度で若干肌寒いが、日差しが強いので1枚羽織るくらいでちょうどよかった。うだるような暑さが続く東京からしたら、天国のような環境だ。

日中の気温は16度前後。日差しは強いが乾燥しているので快適だ

マラソン本番まで現地の観光スポットを満喫したのだが、それはまた別の機会に紹介しよう。

オーストラリアを満喫して緩み切ったバカ

参加する「ゴールドコースト・エアポート・マラソン」は、今年で39回目。今回は約2万5,000人が出場し、5km、10km、ハーフマラソン、フルマラソン、ジュニアの部などに分かれている。最も出場者が多いのはハーフマラソンで9,000人強、次にフルマラソンで6,000人弱だという。前日に行われた受付で、自分の名前が印刷されたナンバーカードを渡されると、楽観的だった筆者もさすがに緊張してくる。

大会前日の受付会場の様子

自分の名前が印字されたナンバーカードを見ると、本当に走るんだなあと実感する

この受付会場内では、マラソンには欠かせないランニングバッグや栄養補給食、スポーツドリンクなどの販売も行われていた。ランニングシューズを買ったことに満足していた筆者が、フルマラソンにおいて栄養補給が欠かせないということを知るわけがない。現地のコーディネーターの人に「本当にそんな準備で大丈夫なの!? さすがに無理よ!」と指摘され、栄養食とランニングバッグを購入することになった。マラソンを日々行っている読者にとって、驚くべきことかもしれないが許していただきたい。本当に何も知らなかったのだ。

受付会場内にはさまざまなショップも用意されていた