AMDは米国時間の7月30日、ロサンゼルスで開催中のSIGGRAPH 2017にあわせてプライベートイベント[AMD Capsaicin Siggraph 2017(https://www.eventbrite.ca/e/amd-capsaicin-siggraph-2017-tickets-35520337285)]を開き、ここで正式に最新GPU「Radeon RX Vega」とハイエンドデスクトップ向けCPU「Ryzen Threadripper」を発表した。このCapsaicinイベントの内容はまた改めてレポートするとして、ここで発表されるRadeon RX VegaとRyzen Threadripperのスペックなどを取り急ぎお届けしたい。

64CUの「Radeon RX Vega 64」を8月中に出荷 - プロモーションパッケージも準備

Radeon RX Vegaでは、64CU(Compute Unit)の"Radeon RX Vega 64"と、56CUの"Radeon RX Vega 56"が用意される。Radeon RX Vega 64には液冷バージョン(Liquid Cooled Edition)と、Limited Editionも用意される。ただLimited Editionはスペックそのものはノーマルと同じである。そのスペックをまとめたのがこちら(Photo01)である。Radeon RX Vega 64の2製品はいずれも8月中に出荷開始、一方Radeon RX Vega 56は9月の出荷となっている。

Photo01:スペック一覧。Radeon RX Vega 64は補助電源が8pin×2となっている

さて、Limited Editionとは何か? であるが、これは販売パッケージに関係してくる。今回AMDは、Radeon RX Vegaについてグラフィックスカード単体で発売する以外にRyzen 7 CPU+マザーボード+FreeSync対応ディスプレイ+ゲームをからめたパッケージ販売も予定している

Photo02:Limited EditionとLiquid Cooledはブラシフィニッシュのメタルケースに収められている

ちなみにマザーボードやディスプレイ、ゲームなどは地域によって何を組み合わせるか変わるという話であるが、米国の場合はSamsungのCurved Monitor、GIGABYTEのX370マザーボード、およびWolfenstein II/PREYがパッケージになっており、これをパッケージにしたRadeon PACKという製品を用意した。このRadeon PACKは499ドルないし599ドルであるが、これを購入すると

  • FreeSyncモニターが$200引き
  • CPU+X370マザーボードが$100引き
  • ゲーム2つ(合計$120相当)をプレゼント

という特典がつく形だ。価格はあくまでグラフィックスカードのもので、Radeon PACKを買うとほかの製品も値引きされるという点に注意。つまり100ドルの上乗せで、300ドル相当の割引と120ドル相当のソフトが付属しますというプロモーションパッケージというわけだ。

Photo03:ディスプレイ・CPU・マザーボード・ゲーム・Radeon RX Vegaがあわせて499ドルとか599ドルというわけではない

Photo04:Radeon PACKの詳細。地域ごとにどの製品が対象になるかは変わるらしい。オンラインだけでなく、店頭での購入も可能という話だった

このRadeon PACKに付属するものが、シルバーの外観を持つRadeon RX Vega 64 Limited Editionである。Radeon PACKが不要な場合は単体での購入がもちろん可能だが、この場合は黒の外観のものが空冷だと499ドルとなっている。同様にRadeon RX Vega 56は単体が399ドル、PACK(Red Pack)が499ドルとなる(Photo05)。

Photo05:要するに100ドルの上乗せで、300ドル相当の割引と120ドル相当のソフトが付属しますというプロモーションパッケージである。これをいつまで継続するのかは今のところ不明

Radeon RX Vega 64の競合はGeForce GTX 1080

性能に関しては、99% Min FPSという形でGeForce GTX 980 Ti/GeForce GTX 1080/Radeon Fury X/Radeon RX Vega 64を比較しており(Photo06,07)、Radeon RX Vega 64はGeForce GTX 1070並の価格でGeForce GTX 1080と競合できるとしている。なお数字は示されなかったが、Radeon RX Vega 56はGeForce GTX 1070が競合製品との事だった。

Photo06:それぞれの丸の中の数字が実際のフレームレート。数字そのもので言えばRadeon RX Vega 64はGeForce GTX 1080にはやや及ばない程度であるが、価格性能比で考えると十分に競争力がある、というのが同社のメッセージ。ちなみに解像度は3440×14400pixel

Photo07:こちらは4K(3840×2160pixel)での結果

なお共通スペックとして、いずれもHBM2の8GBのみの構成とのこと。Photo08の左側が実際のVega 10コアであるが、ダイサイズは486平方mmとの事だった。

Photo08:右はRadeon Fury Xのもの。プロセスを微細化した割には、ダイサイズは100平方mm程度しか小さくなっていないのは、なにしろトランジスタ数が大幅に増えた(125億個:Radeon Fury Xは89億個)ためだろう

Ryzen Threadripperは8コア/16スレッド製品も用意

次はRyzen Threadripperである。こちらはまず3製品が用意され、グローバルでは8月10日の発売が予定されている。ハイエンドが16core/32threadの1950Xで999ドル。ミドルレンジが12core/24threadの1920Xで799ドルだが、これに加えて8core/16threadの1900Xも549ドルで提供されることになる(Photo09)。

Photo09:「処理性能はそれほどいらないが、メモリ容量とI/Oがほしい」という向きには、この1900Xが最適な気がする

性能としては、IntelのCore i9-7900Xに対して同一価格(999ドル)での比較(Photo10)と、同一core/thread数の比較(Photo11)が示されているが、いずれも良好な性能を出しているとしている。ちなみに性能比較は示されていないが、Radeon Threadripper 1900XはCore i7-7820Xが競合製品とAMDはみなしている様だ。

Photo10:こちらはコア数が圧倒的に違うこともあって、Ryzen Threadripper 1950Xの圧勝

Photo11:同一コア数で比較しても、割と良いスコアを出していることが分かる

対応するチップセットはX399であり、これを搭載したマザーボードが4メーカーから用意されるという話はCOMPUTEXの時にも事実上紹介されていた形だ。またCPUクーラーは空冷が5製品、水冷が20製品ほどラインナップされることになっている。

Photo12:国内でも各社がX399マザーボードの出荷予定をアナウンスし始めており、まもなく登場する見込みである

Photo13:TDPは最大180Wということで、水冷は横長タイプのものが多い。ヘッドそのものは共通だが、取り付け金具はSR3に対応したものが必要

余談であるが、ThreadRipperはEPYCと同じパッケージにダイを2つ搭載したものであるが、実際には4つダイが搭載されるそうだ。追加の2つはダミーのダイで、これは機械的安定性を保つためと説明されている。どうもEPYCとThreadripperではパッケージが共通化されており、この関係で信号をGNDに落とすような処理を行うダミーのダイが必要になるようだ。

ということで取り急ぎ概略とスペック、価格についてお届けした。もう少し細かい話は改めてご紹介したい。