今年(2017年)で放送開始20年を迎える特撮テレビドラマ『ウルトラマンダイナ』の主要キャストが集結し、現在好評開催中「ウルトラマンフェスティバル2017」内の特別イベント「ウルトラマンダイナ放送20年記念・スーパーGUTS大集結!」で熱いトークを繰り広げた。イベント開始前には、主人公のアスカ・シンを演じたつるの剛士をはじめとする「スーパーGUTS」隊員たちと、ウルトラマンダイナが「ウルトラマンフェスティバル2017」会場内に集まり、マスコミ向けの会見を行った。
1997年に放送開始した『ウルトラマンダイナ』は、1996年放送の『ウルトラマンティガ』の世界観を受け継ぐ続編として製作された作品。『ティガ』は『ウルトラマン80』(1980年)以来、実に16年ぶりにテレビで復活を果たした「日本製」かつ「テレビ連続シリーズ」のウルトラマンであり、かつて『ウルトラマン』(1966年)『ウルトラセブン』(1967年)を作っていた古参スタッフと、それらを観て育った若い世代のスタッフが互いに総力を結集して作り上げた力作として知られている。
「新しい時代のスタンダード『ウルトラマン』を作ろう」という気概で生み出された『ティガ』は、勧善懲悪へのアンチテーゼというべき深みのあるSFドラマを目指したストーリーが多く、青年層からの熱烈な支持を集めた。一方で、番組のメインターゲットである幼い視聴者層にはやや難しかったのではないか、という反省点もあり、『ダイナ』では『ティガ』で試みられた「高みを目指すドラマ性」はそのままに、より娯楽性を追求した「肩の凝らない」エピソードが続出しているのが大きな特徴である。
『ティガ』では製作時から14年後の近未来「2010年」という時代設定で、全世界が戦争や紛争を越えて「世界平和連合(TPC)」を設立し、新たに襲来した未知なる脅威(地球の内外から現れる巨大怪獣や、侵略宇宙人など)から人類を守る特捜チーム「GUTS」の活躍が描かれた。『ダイナ』はそれから7年後。人類の宇宙進出が活発化した時代……ネオフロンティアと呼ばれる夢と希望に満ちた時代が背景となり、未知なる危険に挑んでいく勇気ある者たちというイメージで、新チーム「スーパーGUTS」が設定された。奇しくも今年は『ダイナ』の劇中設定と同じく「2017年」ということで、主演のつるの剛士の呼びかけによって記念イベントが開催される運びとなった。
ウルトラマンダイナに変身するアスカ隊員役・つるの剛士は、今やテレビバラエティ番組に欠かせない人気タレントだが、『ダイナ』当時はフレッシュな新人俳優として演技やアクションをがむしゃらに頑張っていたという。「あれから20年という歳月を実感するような出来事はあるか?」という問いについては「気づいたら、もう子どもが5人もいます」と、この20年の間に結婚をして、5人もの子宝に恵まれたことを挙げた。
さらにつるのは、「今朝、中学二年生になる息子とケンカしちゃったんです。僕が怒って、『出てけ!』と言ったら出ていったんですけど、もう帰ってきたので大丈夫です(笑)」と親子のエピソードを明かしつつ、「ダイナをやっていたころは隊長によく怒られていたのに、今は自分が息子に怒ってるんだなあ」と、感慨深い様子を見せた。
また「20年経っても、みんなが集まるとあのころの空気が甦りますね。りっちゃん(斉藤)もぜんぜん変わっていない。DJをやっているFMラジオの番組だとしっかりしたお姉さんみたいな感じなのに、会うと当時のまんま、フニャフニャなんだよね(笑)」と、青春時代を共に過ごした仲間たちとの再会を心から喜んでいた。
さらに「今、一緒に仕事をしているスタッフさんたちから『昔、ダイナよく観ていました』って言われることが多いんです。みんな僕よりもおっさんみたいなんだけど(笑)、当時ダイナから夢をもらっていた子どもたちが大人になって、こんどは人に夢を与える仕事についているのは素晴らしい。僕たちも、いつ(ウルトラマンの)仕事が来てもいいように、常に襟を正していこうと思います」と、月日は過ぎても心は常にアスカであると、強い口調で宣言した。
実際、つるのは『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』(2008年)、『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(2009年)、『ウルトラマンサーガ』(2012年)といった映画や、ネット配信作品『ウルトラマンオーブ THE ORIGIN SAGA』(2016年)でたびたびアスカを演じ、好評を博している。『ダイナ』最終回で太陽系を闇の侵略から救った後、未知なる世界を今も飛び続けているアスカだけに、宇宙に危機が迫るときにはきっとふたたび我々の前にウルトラマンダイナとなって姿を現してくれるに違いない。
個性豊かなスーパーGUTSを率いる豪放なヒビキ・ゴウスケ隊長を演じた木之元亮は、「20年という意識があまりなくてね。僕にとって、この隊長役ができたってことは宝物ですからね。なんとか体型を保とうと思って、ジムに通っています!」と、当時のヒビキ隊長そのままに、大きな声でこれまでの20年を振り返った。そのハツラツとした姿を見た隊員たちから「隊長がいちばん変わってないですよ」と懐かしそうに声をかけられると「20周年でこうやって集まりましたが、また30年、40年経ってもみんな元気で再会したいね! まあ、相変わらずお酒は飲んでおります」と豪快に笑いながら、仲間との再会を喜んでいた。
スーパーGUTSのエースパイロットで、セクシーな外見に似合わず怒るとすぐパンチが飛び出すユミムラ・リョウ隊員役・斉藤りさは「みんなと一緒に集まるのって久しぶりなんです。会って最初に、当時なかったスマホでLINEを交換しました(笑)。でも隊長だけは相変わらずガラケーだったので、ちょっとホッとしました」と、20年の間で急速に進歩・発展した通信機器によって時代の流れを感じたとコメント。そして撮影当時をふりかえって「20年前はただ楽しくってやっていたんですけれども、今になって余計に大事な作品だと思いますし、周りの方たちのほうが大切に思ってくれているのを実感しています」と、多くのファンに愛されている『ダイナ』に出演したことに喜びを感じていると笑顔で話していた。
銃の腕前はチーム一で、考古学を専門とする知的なカリヤ・コウヘイ隊員を演じた加瀬信行(当時・加瀬尊朗)はこの20年をふりかえって「当時のヒビキ隊長の年齢に、今の自分がなっている」と話し、「でもぜんぜん貫録がないんです(笑)。ヒビキ隊長の口癖だった『バカモーン!』の迫力が出せない」と、キャラの違いを嘆く一幕があったものの、布川たちから「20年経ってもぜんぜん変わらず、若い!」と冷やかされる場面も見られた。また加瀬はこのイベント会場に来る際、いつになく緊張していたのだが「いざ楽屋に着くと、さっきまでの緊張がぜんぜん無くなり、すごいホーム感に変わりました」と、仲間との再会で緊張が一気に吹き飛んだことを明かした。撮影時の苦労話については「第28話のとき、出現した怪獣の名前を叫ぶ場面があったんですが、つるちゃん(つるの)たちと雪山を駆けあがってきた直後、『あれはアウストラロピテクス・ギガンテス!』って言うの(笑)。助監督さんからは『ちゃんと言ってください』って言われて困った」と、難しい怪獣の名前を呼ぶシーンの大変さを、苦笑まじりに語った。
隊長を補佐してチームをひっぱる人格者で、第34話からは正式に副隊長のポジションに任命されたコウダ・トシユキ副隊長を演じた布川敏和は「僕の息子が当時5歳で、もうウルトラマンにドンピシャ、ハマっていた年代だったんです。だから息子とひとつ下の娘を連れてよく撮影所に行きましたし、みんなにかわいがってもらいました。あれから20年が過ぎ、今では息子や娘が僕と同じ芸能界に入ってがんばっています。ダイナがあったからこそ、彼らがこの世界を目指そうとしたんじゃないかな、って思います。僕だけじゃなく、家族の歴史の中にダイナという存在がありますし、今回スーパーGUTSのみんなと再会できてすごくよかった」と、自身の思い出に『ダイナ』が深く刻み込まれていると実感していた。
ウルトラマンシリーズに付き物の「特撮」シーンの思い出として、木之元は「当時は16mmフィルムでの撮影でね、そこにちょこちょことCGが入ってきていたころ。実写映像と特撮、そしてCGが合わさって多少時間がかかったけれども、作品が仕上がるのが楽しみでね。いつも感動しながらやっていたところがあります。仕上がってくるまで、どう映っているかがわからない。映像を観て初めて、こう映っていたのか!!って感動していた」と、フィルム撮影にデジタル映像処理が加わってきた90年代当時の特撮テレビ作品ならではの思い出を述べた。布川もまた「オンエアを観ると、すごいんですよ。僕(コウダ)の持ってる銃から光線が出たり、ガッツイーグルのコクピットに乗って空を飛んでいたり、テレビを観ながらひとつひとつ感動していました。後にビデオやDVDで観返すと、泣きそうになることがあります」と、自身が特撮映像の一部となって画面を作り上げていることに、心を揺さぶられていたとしみじみ話した。
舞台出演の都合で今回のイベントに参加できなかったナカジマ・ツトム隊員役の小野寺丈だが、滞在先の岩手県からテレビ電話による中継参加が実現した。実は、同じ舞台にはミドリカワ・マイ隊員役の山田まりやも出演しており、小野寺が事前に撮っていたという映像メッセージがスクリーンに映し出された。
山田は「みんなお元気ですか~」と、20年前と変わらぬ笑顔であいさつした後「今、私の息子が4歳半なんですが、きのうちょうどウルトラマンフェスティバルに行ってたんですよ! ウルトラマンダイナのDVDボックスを全話観て、どハマりしています(笑)。家には怪獣のソフビ人形が200体、ウルトラマンが100体もゴロゴロしているんです! 今こそ、ウルトラマンのイベントに出て活躍する姿を息子に見せたいので、またみんなで集まる機会を作ってください!」と、幼い息子がウルトラマンの大ファンであり、ダイナも大好きだということを猛烈アピールし、ふたたびキャストトークイベントが開催されることを望んだ。
小野寺はタブレット画面を通じ、そのまま最後まで参加できることに。つるのから「丈さん痩せた?」と声をかけられた小野寺は「あの頃から10kg痩せたんだ」と、20年前と現在とで体型が大きく変わったこと、当時は隊員服がキツくて1人で着脱するのが難しく、いつも誰かに手伝ってもらっていたことなどを明かした。『ダイナ』放送から20年が過ぎたことについては「我が家には男の子が2人いるんですが、彼らが生まれたとき、スーパーGUTSのナカジマ隊員を演じて本当によかったなあ、と改めて思ってます。僕は子どもたちの間ではスターですからね(笑)」と、優しいパパぶりを見せていた。
イベントの途中、グレゴール人がニセウルトラマンダイナに変身して襲いかかる事態が勃発。つるの、いやアスカはリーフラッシャーをかかげて「ダイナ~~~!」と叫び、光に包まれるとウルトラマンダイナに変身。正義と悪、2人のダイナは互角の勝負を繰り広げるが、勝利を収めたのはもちろん本物のダイナだった。ひさびさに変身ポーズをファンの前で披露し、興奮気味のつるのと仲間たちの前に、さらなるスペシャルな出来事が。『ダイナ』本編でアスカが可愛がっていた宇宙の可愛いマスコット珍獣ハネジローの登場である。つるのにとってはまさしく20年ぶりの再会となり「当時のまんまだ!」と感激していた。
この日、イベント客席の最前列には『ダイナ』に携わったスタッフたちも大集結を果たしていた。その中から監督の小中和哉氏、脚本の長谷川圭一氏、助監督の岡秀樹(おかひでき)氏がステージに上がり、各キャストたちと固い握手を交わした。
第1話、第2話、そして最終3部作などを演出し『ダイナ』の作品イメージを決定づけたメイン監督の小中氏は、「20年目にして、キャストがこうしてそろったのを観て、いいチームが作れたなとうれしく思います。亡くなった原田昌樹監督もきっと、喜んでイベントを観てくれていたんじゃないでしょうか」と、木之元も大好きな作品だと惚れ込む感涙必至の名作エピソードである第20話「少年宇宙人」ほか数々の傑作を演出した故・原田昌樹監督(2008年没)へ思いを馳せていた。
『ティガ』でシナリオライターデビューを果たし、『ダイナ』では第1話、最終話をはじめ節目のエピソードを手がけるメインライターとなった長谷川氏は「現在、TVKで『ダイナ』の再放送をやっていて、懐かしいなあと思っていたらこんなイベントまで開催されると知って、うれしい偶然に驚いています。僕がシナリオライターになって初のメインライター作品。今でも大好きなダイナです!」と、今も変わらぬ『ダイナ』への強い愛着を示した。
『ダイナ』では助監督として現場をかけめぐり、2012年の劇場映画『ウルトラマンサーガ』では「おかひでき」名義で監督を務めている岡氏は「こんなにも大勢のファンの方たちが、20年経ってもダイナ愛してるぞ!と集まってくれているのを観て、本当に感激しています。いちスタッフとしてうれしいです。僕にとって『ウルトラマンダイナ』は『終わらない物語』です。ネオフロンティアという言葉そのままの、ずっと終わらない物語になってしまったな、という気がします。ですから、また『ダイナ』の物語を作ってくださいね、円谷プロさん!!」と、果てしなく続いていく物語となった『ウルトラマンダイナ』の新たなるエピソードの製作に大いなる意欲を燃やす場面が見られた。
最後に、木之元がヒビキ隊長そのままのテンションで「諸君、みんなとまた会おう!」と叫び、客席のファンたち全員が親指を立てて「ラジャー!」と応答する『ウルトラマンダイナ』おなじみのシークエンスが再現され、大興奮のままイベントが終了した。
『ウルトラマンダイナ』は現在、「Complete Blu-ray BOX」が45,000円(税別)でバンダイビジュアルより発売中。テレビシリーズ全51話に加え、劇場版『ウルトラマンティガ&ウルトラマンダイナ 光の星の戦士たち』とオリジナルビデオ作品『ウルトラマンダイナ 帰ってきたハネジロー完全版』も収録。特典ディスク(DISC10)には、新規映像を含む豪華映像特典が満載。スタッフインタビューをはじめ充実内容の24Pブックレットも付属している。
秋田英夫
主に特撮ヒーロー作品や怪獣映画を扱う雑誌などで執筆。これまで『宇宙刑事大全』『宇宙刑事年代記』『メタルヒーロー最強戦士列伝』『ウルトラマン画報』『大人のウルトラマンシリーズ大図鑑』『ゴジラの常識』『仮面ライダー昭和最強伝説』『日本特撮技術大全』『東映スーパー戦隊大全』『ゴーグルV・ダイナマン・バイオマン大全』『鈴村健一・神谷浩史の仮面ラジレンジャー大百科』をはじめとする書籍・ムック・雑誌などに、関係者インタビューおよび作品研究記事を多数掲載
(C)円谷プロ (C)1998ウルトラマンティガ&ダイナ製作委員会