HCIベンダーはまったく競合にならない
──ハイパーコンバージドインフラ(HCI)への関心が高まっています。どうお考えですか。
キックスモーラー氏:HCIはオールフラッシュの競合にはなりません。それぞれ異なるユースケースがあるからです。HCIは管理性や効率性を高めるソリューションです。管理性や効率性が望まれるのはどちからと言えばローエンドとなります。一方、オールフラッシュは高いパフォーマンスを求めるハイエンドのニーズです。慌てているのはレガシーなストレージベンダーでしょう。なぜなら、ローエンド市場をHCIに食われ、ハイエンド市場をオールフラッシュに食われているのですから。
──オールフラッシュのHCIなども登場しています。どう使い分ければいいのですか。
キックスモーラー氏:アプリケーションに高いパフォーマンスが求められるケースや、高いカスタマーエクスペリエンスを実現したいといったケース、多くのデータアナリティクスが求められるケースなどでは、われわれのソリューションが適しています。一方、IT部門が扱う領域には、そうではなく、いかに運用コストを下げるかが必要なケースもたくさんあります。HCIが適しているのはそうしたケースです。
──HCIベンダーへの対抗策はありますか。
キックスモーラー氏:まったくないですね。個人的にはミッションクリティカルなアプリケーションやデータドリブン型のアプリケーションに対しては、HCIは正しいアーキテクチャであるとは思えません。例えば、世界最大級のデータセンターを運用するパブリッククラウドベンダーはHCIを自社データセンターに導入していませんよね。
HCIベンダーが起こそうとしてるイノベーションは、ハードウェアとソフトをウェアの融合です。一方、われわれがフォーカスしているのは、ラージスケールのデータアナリティクスやAI、マシンラーニング、高い付加価値を生むデータ活用のあり方などです。競合にはなり得ないのです。
ストレージ自らが故障を予知してトラブルを防ぐ
──今回追加された新機能では「Pure1 Meta」でAIやディープラーニングを活用しているそうですね。
キックスモーラー氏:はい。ストレージインフラによって、顧客のビッグデータやAI、機械学習などの取り組みを支援するとともに、われわれ自身がAIに取り組んで、その成果を顧客にフィードバックしようとしています。まず、ストレージ容量やパフォーマンスに対するニーズを予測するための指標である「Workload DNA」と、実際にワークロードの最適化を行うための「Workload Planner」を提供しました。今後も、さまざまな新機能を提供する予定です。
──どのような仕組みなのか教えて下さい。
キックスモーラー氏:ストレージ装置をADAS(運転支援システム)を備えた自動車と考えればわかりやすいでしょう。走行スピードや走行距離、ブレーキやアクセルを踏むドライバーのクセなどのデータをリアルタイムに収集・分析して、結果をクルマにフィードバックします。これにより、ドライバーは最適なドライビングができるようになります。
──データの収集に抵抗がある企業もいるのではないですか。
キックスモーラー氏:もちろん了承のもとで実行しますが、そもそも運転データに個人の氏名や住所が含まれないように、ストレージから得られるデータには企業の重要情報が含まれるわけではないのです。現在、1兆以上のデータポイントから1日あたり7PB以上のテレメトリデータを収集しています。それによる成果として、これまでに1100件以上のストレージにまつわるトラブルを未然に発見して防ぐことができました。
オールフラッシュにさらなる変革を起こしていく
──日本では今後どう展開していく予定ですか。
田中:現状では「ストレージ単体売り」という販売方法は採用していません。どの分野で、どんな技術が必要とされているかに注目し、その課題を解決する手段としてのソリューションを展開するというアプローチです。
例えば、マシンラーニングに取り組んでいる企業がいれば、それに必要なデータプラットフォームは何か、というところから製品を提案します。そのような意味では、ビジネス課題を解くためのアプローチの1つという位置づけです。
──そうなると、業種も企業規模もさまざまですね。
田中:はい。データはあらゆる業種業界において、ますますクリティカルになってきています。AIや機械学習というと、大規模企業と思われるかもしれませんが、企業規模を問いません。中堅中小でもクラウド環境を使い、それらの取り組みを加速させています。われわれの製品ラインアップは、コアからエッジまでマルチクラウドな環境で活用できますので、幅広いビジネスニーズに応えられます。
──最後にメッセージをいただけますか。
キックスモーラー:これからもオールフラッシュに変革を起こしていきます。ある調査によると、われわれの市場シェアは第7位ですが、フラッシュ自体はストレージ市場の15%に過ぎません。さらなる変革の余地があります。単にデータを格納できればいいというのではなく、データを使って付加価値を生み出すためのパートナーになっていく。それが新しいピュア・ストレージの今後の方向性です。
田中:海外と日本でストレージに対するニーズの違いはありません。日本市場の方向性もまったく同じです。ビジネス課題を解くためのパートナーとして、企業を支援していくつもりです。